表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
11/26

秘策(?)

毎日投稿厳しいですなあ

野次馬からどよめきが起こる。

そのどよめきの中心には男が二人。

一人は地に伏し、一人は頬から血を流しながら、横たわる男を見下ろしていた。


〜〜遡ること5分前〜〜


左手を構えたロオスの変化にサモンが気づく。


(これは......第一階梯の魔法? 一体何のために)


ロオスが先手を打つ。第一階梯の火魔法である。


(かなり警戒してるね。じゃあ作戦通り頼むよ)


(んな何回も言わなくたって分かってるよ! おらっ!)


火球はまっすぐにサモンに向かって飛んで行く。が、


(遅い。生成速度、射出速度、威力、全てにおいて普通。何が狙いだ。俺の実力を測るため? こんなもので測れると思っているのか?)


サモンは飛んでくる火球を剣の腹でいなし、容易く軌道を逸らした。


(だが何か仕掛けがあるかもしれん。剣で正面から受けるのは危険か)


(なんか腰に危ねぇもん差してやがると思ったが、やっぱり使うのかよ......あれ俺には使ってこねぇよな?)


(多分ね)


(おーこえぇ。にしても来ねぇな)


(そうだね、けどこっちは来るまで撃ち続けるだけさ)


再び第一階梯の火魔法を撃つ準備を始めるロオス。


(ちっ! まるで考えがわからん。なぜ第一階梯の魔法ばかりなんだ。魔法のお手本の披露でもしてるつもりか? 型通りの魔法ばかり使いやがって。勝つ気がないのか?)


「もうそれはいい、他のを見せてみろ」


火球を真っ二つに切り捨て、サモンは言った。


しかし変わらず第一階梯の火魔法を撃つ構えを見せるロオス。


(舐めやがって)


痺れを切らしたサモンはロオスに向けて駆け出した。


((きたっ!!))


ロオスは即座に前方を向きながら、後方へ駆けると同時に左手で防御魔法の術式を組み始めた。


(防御魔法? なぜこのタイミングで......ここまで接近して再び距離を取るのは得策ではないな。発動前に潰してやる!)


脚力強化ブースト!」


叫び声と共にサモンはその場から姿を消した。何の武の心得もないものが見ればそう錯覚するほどの速度でロオスに肉薄し、剣を素早く手放し拳を構えた。


(当たる!)


そう確信し、速度を殺して踏み込み、大振りのパンチを繰り出そうとしたのも無理はない。仮にこの距離から魔法を当たられたとしても、拳が当たるまでの僅かな時間で撃つことができる魔法は、術式の構築を省略しなければ不可能で、正しい術式を組まない魔法の威力など、普段から鍛錬を積んでいるサモンにとっては高が知れている。


(この横スマは、読み通りなんだよなぁ)


サモンはロオスが後ろ手に隠していた杖を見て目を見開いた。


(術式!? いつから!? クソッ! それなりの術者とは聞いていたがまさか同時に術式を組めるとは! 不可解な火魔法の意図に意識を向け過ぎて杖の存在が頭から抜け落ちていた! 戦いが始まる前は腰に差していたのに、いつ後ろに回した! 杖を背に持ち、術式がギリギリまで俺に見えないようにしてやがったのか!)


ロオスが準備していたのは風魔法である。


〜〜〜〜〜〜〜


(いいか、サモン君は慎重な男だ。迂闊には近寄ってこないかも知れない。まず相手に近づかせるための策を講じなければいけない)


(それなら勝負が始まってすぐに防御魔法の術式を見せてやればいい。相手だって物理障壁張られんのは嫌だろうから近づいて阻止してくるだろ)


(そうだね。けど近づかれたら近づかれたで、十分な障壁を張れずにこちらがやられてしまう。相手に近づかれる前に十分な時間を稼がなきゃならない)


(なるほどな)


(それと、できれば相手には最速で向かってきて欲しいから、その辺も上手く噛み合う策があれば良いんだけど......)


(相手はこっちのことを警戒してるはずだ。時間を稼ぐならその警戒を強めるような不可解な行動をとればいい)


(普通やらないようなことか......それなら適当に火魔法とか撃ってればいいんじゃない?ちょうど訓練場で練習したし)


(おい、随分適当じゃねぇか? まあ理に適ちゃいるが)


(ま、本番でそこは臨機応変に対応してよ)


(は? 無茶苦茶だなお前。まあいいや。それよりいい案があるんだが、魔法って手の平からじゃなくて地面から魔法を出したりできるのか?)


(できなくはないけど地面は魔力の伝導率が悪いからオススメはしないね。しかも術式を組んでいる最中に術式の構築が地面に浮かび上がるから奇襲としては使えないよ、よっぽど大規模な魔法なら話は別だけど)


(なるほど。けど自分の身体から離れていても魔法は使えるんだな?)


(まあ、多少はね)


(なら問題ない。お前、その魔力の伝導率ってやつが良い物何か持ってるか?)


(そうだなぁ、まあ、なくはないけど、大切にしてよ。僕の杖、結構思い入れがあるからさ)


〜〜〜〜〜〜〜


サモンは一瞬身体を強張らせ、距離を取ることも考えたが、勢いを殺し切った直後の身体は言うことを聞かない。これは前衛組の講義でも再三言われていることで、全力で走っている状態から急停止する訓練すらさせられていた。まして今は脚力強化の魔法をかけた全力の踏み込み。到底退く事などできなかった。がしかし、思いの外サモンは冷静だった。


(ならばその風魔法ごと打ち抜けば良い事! むしろ回避行動を取られないことはこちらに好都合!)


しかしそんなサモンの読みは外れることとなる。


(切り札、発動!)


定点送風フィックスウィンド!」


そう叫びながらロオスは杖を思い切り地面に刺し、左へ体をずらした。


(ちょっと! 僕の杖大切にしてって言ったよね!?)


直後ロオスに向けて強風が吹き荒れた。ロオスは風を利用しサモンの右ストレートを回避する事に成功する。


(なんてスピードだ。だが逃がさん!)


サモンは追撃の体制に入ろうとしたその時、未だに目の前で風が吹いている事に気がついた、気がついてしまった。


(あまり強い風だと奴もダメージを受けてしまう。よって発動までに風魔法に費やした魔力の全てを威力に注ぐわけにはいかず、持続時間に回さざるを得なかった、と言うことか。勝機!)


脚力強化ブーストっ!」


風の中に身を投じ、先程よりさらに早い速度でロオスへ迫る。


それを風に煽られながら見ていたロオスはニヤリと笑った。


魔法を発動させる前に技名を叫んでいるのは、イメージを明確化させるためにしています。魔法は術式を組む能力と、その構築した術式をイメージどうりに発動させる想像力の二つがなければ発動できない、もしくは発動させても通常より低い効果しか発揮できません。よってその自分の使いたい魔法のイメージをしやすい名前を自分自身で命名しています。しかし、身体強化系の魔法は属性魔法とは違ってオリジナリティを出せる訳ではないので、「ブースト」と言って発動させるのが一般的になっています。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ