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某探検家の記し

初めての執筆ですので拙い文章も多いかと思いますが、是非読んで見てください。

私は探検家プロア。これまで数多のダンジョンの攻略、広大な未開の地の開拓など国の発展に貢献してきた。巷では探検王なんて呼び名が浸透しているがそんなものは与り知るところではない。


私が以降の文を書き記すに至った理由は、これらの偉大なる功績を後世に残し伝えていくためではない。私の偉業はきっと国が詳しくまとめてくれるであろう。


今回の調査で判明したことを記録に残すため、それが理由である。


私が伝えたいことは簡潔に話すと4点。


1点目は、惑星ソピアには我々の住む大陸の他にも島や国が存在するということだ。これは約3ヶ月の航海によって明らかになった事実であるが、伝えたいことの2点目がこの航海期間の長さに起因している。


その2点目とは、空気中の魔素の含有率は元々は一律であり、地域ごとに住む生物や魔道具等非生物の魔素の消費量によって変化するというものである。よって航海中魔素によって変質した魚類含め水生生物の脅威度は陸上生物の比ではなかったため、予定よりも航海期間が延びてしまった次第である。


そして3点目。渡航先の大陸で廃墟、廃村を多数発見した。文明が滅んでおり、生存者は一人としていなかった。また前述したように、魔素濃度が極めて高く、到底人間が住める土地ではなかった。その濃度の高さはレベル7の私ですら息苦しさを感じるほどである。


最後に4点目。これが今回の調査で最も注意すべき報告である。

人型の魔物に遭遇した。筋骨隆々の2メートル程度の黒みがかった男であった。その魔物は多くの魔物を従えており、多少の個体差はあれど、全て人型で紫色のヘドロのようなもので身体が構築されていた。


結果から言うと、私はその魔物に敗れ一時撤退した。体感では紫色の魔物でさえランク4はあるように感じた。いや、あの異常とも言える肉体破損の再生力を鑑みればランク5にも引けを取らない。

そして何より黒色の魔物。奴のランクをつけるとすれば7は堅いだろう。


大陸の開拓に手こずる程度のレベルの人間、及び現文明の魔道具を装備した雑兵では到底太刀打ちできるものではないが早急に対策を立て、黒色の魔物を討伐すべきである。


読んでいる者は、早急にこの書を国に届け、全国民に公開するべし。


尚、私は当分帰国することは不可能であるため、国は私を戦力に勘定せず行動されたし。










追伸:ここから先の文は私と同じ「憤怒」もしくは他の大罪名の称号を持つ者しか読めないよう隠蔽魔法をかけている。その称号を持つが故に人生を狂わせられられたと称号を恨む者も中にいるかもしれない。確かに良くも悪くも普通の人生を送ることは難しい、いや不可能であろう。


しかしそんな君たちにしか奴は倒せないと私は思っている。国のためにとは言わない。自分のためでも誰かのためでも構わない。どうか奴の討伐に助力してほしい。


最後に、この書は私のスキル「魔道具作成」により魔導書として使用できるようになっている。知っているとは思うが、魔導書について端的に説明すると、体内の魔石を経由した魔素、すなわち魔力を増幅させる媒体である。


魔導書は一長一短であるが、私は戦闘が複雑化しない、レベルが低いうちは魔導書の使用を推奨する。魔導書による強化率はレベルに依存しないため、片手が塞がるデメリットを十分に補えるほどの火力を生み出せるからだ。


この魔導書の強化率は属性関係なく一律2.0倍。そして私の「原初オリジナル」を含め、多くの魔法を残した。君たちならこの力に溺れる事なく使いこなすことができるだろう。ぜひ役立ててくれ。










追伸:「憤怒」の持ち主、私の後継者よ。お前にのみ後述を残す。


私がかの魔物と一戦交えていた際、奴の左腕を切り飛ばしたと同時に、奴の右腕が私の左脇腹を抉った。相手との実力が伯仲している戦いにおいて、相手の四肢の一つを奪うというのは雌雄を決するのに等しい。よって私は有利トレードと考えていたのだ。


しかし今になって考えるといかに短絡的思考だったのかを悔やむに悔やみきれない。奴の右腕が左脇腹を抉った時、奴の腕に付着していた奴の血液と思われるものが体内に侵入したのだ。


異物が身体中を這いずり回るような感覚に襲われながら奴と戦うことを、その瞬間から強制された。


私はその時初めて命の危険を感じ、敵を恐れた。


今の状態で敵と戦うには甚だ無謀であると即座に判断し奴から視線を外して逃亡体制に入った刹那、身体中を今までに感じたことのない倦怠感が襲った。


訝しく感じ、急ぎステータスを確認するとそこには見慣れたステータス一覧から私の代名詞とも言える称号「憤怒」がなくなっていた。


消失したトリガーが何だったのかは定かでない。しかし「憤怒」を失い弱体化したという事実だけは、自らのステータスが証明していた。


そうして私は命辛々、とある未開のダンジョンに逃げ込んだのだが、魔力の欠如により集中が削がれていたのかもしれない。入り口近くにあった転移罠を踏んでしまい、あえなく見知らぬ巨大迷宮に飛ばされてしまった。


迷宮は破壊不可能なようで、もう何十日も彷徨い続けている。携帯食料も底をつき、私は間も無く餓死するだろう。


しかしこのことは僥倖であったと言えよう。転移罠を踏めなければ、奴から逃げ切ることも叶わず屍と化していたであろうからだ。


君がこれを読む頃私はこの世にいないかもしれないが、私が亡くなったことは他言無用で頼む。私の死によって国に余計なプレッシャーを与えたくないからだ。



そして最期に私から伝えたいことが一つ



「憤怒」の持ち主よ。決して折れることのない信念を持て。



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