第4話
ドアノブから手を離し、黒木さんに近づく。
手錠の鍵穴に鍵を差し込み、ガチャガチャとするが一向に開かない。
「…開かない。」
「おやおや、困りましたね。どうしましょう。」
「あなた、本物の鍵の在りかを知っていますね?」
冷静になった頭でそう聞くと、黒木さんは肩をすくめた。
その様子は「勿論知ってる」と言っているようにしか見えなかった。
私が人殺しになる?
それがどうした。
私は…
「私は人殺しになろうがどうでも良いです。あなたに助けてもらったのはありがたかったですが、所詮その程度の関係。私はあなたを監禁する気も、そんな趣味もありません。…これで失礼します。」
今まで沢山の人を救ってきたんだ。
これぐらいで天罰が下るなら、あまりにも不公平だ。
私は黒木さんに言うだけ言うと今度こそ部屋を出た。
ドアの向こうにあった階段を上ると壁があり、それを押すと向こうには見知らぬリビングが広がっていた。
振り返ると壁があったところには絵画が広がっており、回る仕掛けになっていた。
感心しながらもリビングを通り、玄関であろう扉を開ける。
外見は普通の一軒家に比べると少し立派に感じられる家だった。
門を通り、周りを見渡すと意外にも見覚えがあった。
大学を挟んで自宅から真反対にある場所らしく、特に遠い場所でもなかった。
誘拐するならもっと遠くとかにしないのかな、なんて思いながら私は自宅に帰った。