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第1話
暗い夜道を早足で歩く。
苦しい、胸が苦しい、息ができない。
迫る恐怖を払いのけるように私は歩いた。
走れはしない。
ただ黙々と早足で歩いた。
誰もいない道で助けを求めることすらもできない。
もし仮に人がいたとしても声が出せないから助けを求めることができないけど。
ヒュウヒュウと鳴る喉を撫でながらブロック塀に手を這わせ、歩く。
角を曲がろうとしたところでグラリと眩暈がした。
しかし地面の衝撃はなく、代わりに人の感触があった。
「おっと……大丈夫ですか?」
目を細め、無理矢理ピントを合わせようとするがうまく合わない。
だが、男性であることは分かった。
男性の声も遠退いていき、全身から力が抜けていく。
そのまま私の意識は途切れた。
「………ふぅ、気絶させる手間が省けた。いやー、良かった良かった。出来れば怪我させたくなかったからね。…さて、これからよろしくね____青木 永華ちゃん。」
青木永華と呼ばれた女性は不敵に笑った男性に軽々と抱き上げられ、帰路とは逆方向に連れていかれた。