~見つけたっ~
『ろりぽっぷ』を後にした二人は屋台村のフードコートで飲み物を仕入れてイート・イン・スペースに向かった。
ひと際大きなテントの中に簡易テーブルとパイプ椅子が配置されて、そこそこの人だかりが屋台のごはんをつついている。
「あ、皆本君。ちょっとこれ持ってもらってて良い?」
頼光にバックとバスケットとシェイクの紙コップを渡した美幸は、たこ焼き屋の近くのテーブルへと人影に隠れながら近づいて行った。
「さ・あ・や・ちゃん。な~にしてるのかな。」
「ひゃあっ!」
後ろから両肩を鷲掴みにされた紗彩は、南国の鳥のような奇声を上げた。
「せ、先輩! これは違うんですっ、別にどんな感じで手繋いで肩組むのかとかデレデレ顔見て影からほくそえんでやろうとかなんて、そんなこと考えて無いですからっ。」
「紗彩ちゃん、全部しゃべってるわよ。すみません涼子さん、ウチの紗彩がご面倒おかけして。」
美幸は紗彩の頭頂部をわしっと掴んだまま向かいの涼子に頭を下げた。
「面倒だなんて。私も紗彩ちゃんと一緒したかったんだから。誘ってもらって楽しませてもらっているのはこちらの方よ。」
美幸に遅れることしばらく、頼光が荷物を抱えて傍らに立った。
「やあ、紗彩ちゃん。しばらくぶり。」
「あ、皆本さん、助けてください。紗彩、美幸先輩に握りつぶされちゃいますぅ。」
紗彩は頼光の後ろに身をひるがえして、上目づかいに美幸を見つめた。
「紗彩ちゃん。そっとしておいてって言ったわよね、私。」
「や、やだな~。紗彩と涼子さんのデートコースが偶然カブっただけですよぉ。ぐ・う・ぜ・ん。あ、美幸先輩パンク風のコーデも似合うんですね。紗彩そのコーデ初めて見ました。」
「紗彩ちゃん、ごまかせると思ってるの?」
「ご、ごめんなさい。紗彩、気になっちゃって、つい。」
頼光を盾にしながら紗彩は身を屈めた。
頼光はその場をなだめながら腰を下ろし、美幸に隣に座るよう促した。
「まぁ、紗彩ちゃんもこう言ってることだし、ね、美幸ちゃん、今回はこれで収めとこうよ。」
「う、ん。皆本くんがそう言うのなら。」
「で、涼子さん、紗彩ちゃん二人はこれからどうする予定です?」
頼光は自分たちの荷物をテーブルに並べながら二人を見た。
「一息ついたら、紗彩、涼子さんを中央町の丸ビルに案内しようかと思ってるんです。涼子さん、まだ越して来て日が浅いからいろいろ見てもらおうかと。」
「ああ、あそこ。」
「どういう所なの?」
納得顔の頼光の表情を見て涼子は不思議そうに首を傾げた。
「あのですね、雰囲気的には、戦後のバラック商店街が建物の中で営業している感じを想像してもらったら良いです。働いている人には悪いけど、すっごい非日常空間というかタイムスリップ感があるんですよ。」
紗彩は得意顔で涼子を見つめた。
「あら、面白そう。」
「こちらは午後1時から教会での模擬結婚式に新郎新婦役で出る事になったんだ。良かったら見に来る?」
「あ、皆本くん、それ言っちゃ・・・」
慌てて遮ろうとする美幸を圧倒して紗彩は目を輝かせて立ち上がった。
「きゃぁ! 美幸先輩のウエディング・コスが見られるなんて、ぜひぜひ参列しますっ!」
「紗彩ちゃん、周り、みんな食べてるから。びっくりさせちゃうでしょ。」
涼子は紗彩の服の裾を引っ張ってたしなめた。
「コ、コスって・・・」
美幸はパイプ椅子にすとんと腰を戻して、隣の頼光をちらりと見た。




