4-6 四人の超越者
「本当に同じなんだな。」
ここは、帝都の中枢となる “中央区”
眼前に広がる荘厳な建造物を目に、アロンは呟いた。
赤茶色の煉瓦通りと珪藻土で塗り固められた白い建物群を抜ける事、30分。
徐々に赤茶色の煉瓦街道はグラデーションを作り出すように薄くなり、今、アロンが踏みしめる煉瓦は白み掛かった黄色に様変わりしている。
壁は相変わらず白を基調としているが、色鮮やかなステンドグラスや橙色や赤色の洋瓦が使われるなど、西区に比べると高級感に溢れた建物が多くなってきた。
そして、その建物の多くが住宅では無く、様々な施設なのだ。
住宅に比べると遥かに大きい建造物が並んでいる。
医療所、教会、レストラン。
そして、学校。
前世、アロンは一度父に会いに西区までは入ったことがある。
それが初めての帝都訪問であった。
前世と今世含め、生まれて初めて中央区に足を運んだのだ。
しかし、ファントム・イシュバーンでは何度も足を運んだ拠点、帝都。
イベントや様々な要件で、この中央区にも足繁く通った。
その時に見た景色と、今見ている景色。
高級感溢れる建物の並び、足元の美しい煉瓦通り。
その全てが、同じだった。
分かってはいたが、ここまで細部に渡って模倣されていたことに改めてアロンは複雑な思いを吐露した。
だが、そのおかげで迷う事なく目的地まで進める。
今日は休日となる “土の日” であるため、少等から高等まで並ぶ “学院通り” は閑散としていた。
途中、休日の少ない人並みを避けて学校内の自習室で勉学に励もうとする学生と素通りするアロン。
学生たちは黒銀のフルプレートアーマーを纏う姿のアロンを目の当たりにして、口々に “凄い騎士様だ”、“名のある冒険者様かも” と目を輝かせている。
何ともこそばゆい気持ちだ。
「ここか。」
中央区に入り歩くこと10分。
一際大きい建造物の前で立ち止まった。
“イースタリ帝国高等教育学院”
珪藻土と赤煉瓦を組み合わせた建物と同じ作りの校門前。
アロンと同じような鋼の全身鎧で身を包む門番が立っていた。
「学生ではありませんね? 本日は休校ですが、どのようなご用件で?」
黒銀の豪奢な装備だが、フルプレートアーマーにフルフェイスの、怪しいアロン。
しかしどこぞの貴族か著名な冒険者の可能性もあることから、丁寧な言葉遣いで尋ねられた。
「こちらの学生に呼ばれまして。ここで待ち合わせをしているのです。」
両手を上げ敵意は無いこと、そして用件は何かを伝えるアロン。
顔を見合わせる門番たちは、少し不審そうな表情をするが、
「それは失礼しました。」
一応、アロンに謝罪をした。
アロンも会釈をし、門番の邪魔にならない位置で立つ。
傍から見れば、門番が3人もいるように見える。
(……気まずいな。)
時折チラチラとアロンに目線を送る門番たち。
お互い無言であるから、さらに気まずさが増す。
すると。
『ガラガラガラガラ……。』
煉瓦街道を打ち鳴らす車輪音と、二頭の馬の蹄音が響く。
徐々に校門へと近づく、煌びやかな馬車。
「!!」
2人の門番は即座に最敬礼を取る。
赤と黒の光沢ある本体は金で縁取りがされており、ところどころに宝石も散りばめられていた。
何より、ドアの部分に描かれた大きな女神、<国母神>の横顔で表した帝国章。
皇族専用の儀装馬車であった。
馬車は校門前で停まり、御者が甲斐甲斐しくドアを開ける。
すると、中から背の高い茶髪の男性と、その男に手を引かれて優雅に降りる桃色髪の女性、後に続くように赤髪の背の低い少年と、少年よりも少し背の高い黒髪女性が降りてきた。
敬礼したままの門番に労いの言葉を掛けたあと、茶髪の男はアロンへと顔を向ける。
そして。
「アロンさん、ですね?」
にこやかに、語り掛けてきた。
壁に寄りかかり、腕組みをしていたアロンは姿勢を正した。
黒銀のフルフェイス越しに、はっきりと、告げる。
「そうです。初めまして、殿下。」
続けざまに最敬礼を取る。
姿勢を戻すと、茶髪の男――、イースタリ帝国皇帝第一皇子、ジークノートは目を輝かしてアロンを見つめていた。
「その姿……まさしく、ですね。」
アロンは首を動かさず、目線だけで4人の男女を見る。
無理矢理、興奮を抑えているという表情のジークノート。
口元だけ緩めるが、目元が笑っていない桃色髪の御令嬢。
腕組みをして、ギロリと睨む赤髪の少年。
そして、両手を組み、目元を潤ませ惚けるような黒髪女性。
4人が4人、全く違う反応を示している。
思わず首を傾げそうになるアロンであった。
「ジークノート様。立ち話もなんですから、学院に入りましょう?」
令嬢がにこやかに囁く。
はっ、と我に返り、頷くジークノート。
「そ、そうだな、レオナ。すまないが、中に入らせてもらう。学院長の許可は得ているので安心してください。」
ジークノートは、未だ敬礼を取る門番に告げた。
「「はっ!」」 と声を揃え、門を開ける。
「さぁ、アロンさん。こちらへどうぞ。」
ジークノートを先頭に、その斜め後ろを歩く令嬢レオナ。
その後を付けるアロンと、アロンの後ろから着いてくる赤髪少年と黒髪女性。
(さて、どんな罠があるかな。)
決して、警戒を怠らないアロンであった。
◇
高等教育学院最上階、学院長室隣、応接室。
3人掛けのソファが四方に並び、中心には座ると膝上までしかない、低い大理石のテーブル。
入口から一番遠い上座に、ジークノート。
その右隣りには、レオナが座る。
レオナの対面に赤髪少年こと、ジンと、黒髪女性こと、セイルが腰を掛ける。
そしてジークノートとの対面。
アロンは装備もそのままで座るのであった。
「さて、ここには私達しかいません。改めて自己紹介をしましょう。」
にこやかに告げるジークノートは、右手を胸に当てる。
「今の私はイースタリ帝国皇帝ペルトリカの第一子にして皇帝継承権第1位のジークノート・フォン・イースタリと申します。」
さらさらの長い茶髪に、透き通る水色の瞳。
高い背丈に、絶世の美男子。
“皇太子” と呼ぶに相応しい出で立ちだ。
そして、口角を上げて続ける。
「転生前は、帝国陣営 “ワルプルギスの夜” のサブマスをしていましたニーティといいます。」
その言葉に思わず動揺し、ガチャリ、と鎧を打ち鳴らすアロン。
「ニーティ? 貴方は、“神獣師” のニーティなのですか?」
「そうです。」
アロンが驚くのも無理はない。
帝国陣営 “ワルプルギスの夜” は非常に有名なギルドだ。
そのギルドを統べるギルドマスター “大賢者” のマジカマジョル、そして4人のサブギルドマスターは帝国陣営内でも有数の実力者であった。
その一人、神獣師ニーティ。
洗練された美しいアバターは、女性だった。
しかし、目の前のジークノートは、男だ。
“超越者はファントム・イシュバーンの職業とスキルだけでなく、名前、性別までも同じで転生する” という先入観のあったアロンにとって、この自己紹介は最初から度肝を抜かれた。
「あはは。驚きますよね。でも実際、向こうの世界の私は男でしたので。アバターの性別でなく、実際の性別のまま転生となったのでしょうね。いわゆる、ネカマってやつですよ。」
多少、自虐的に伝えるジークノートだが。
「ネカマ……?」
その言葉の意味を、アロンは知らないのであった。
未だフルフェイスを被るためその表情は読み取れないが、
(どういうこと?)
何か、違和感を覚えるレオナであった。
「じゃあ次、レオナ。」
その違和感が何かを考察しようとしたが、隣の空気を読めないお気楽男に邪魔をされて頭に血が上りかけるレオナ。
はぁ、と息を吐き出して自己紹介を始める。
「私は、イースタリ帝国宰相マキャベル公爵の第二女の、レオナ・フォン・マキャベルと申します。よろしくお願いしますわ、アロン様。」
立ち上がり、丁寧な自己紹介と共にカーテシーをする。
少々気の強そうな顔立ち、そして多少派手な出で立ちだが、“麗しい御令嬢” を体現したかのようなレオナ。
そんな彼女が続ける言葉に、アロンはさらに驚愕する。
「転生前は、ジークと同じく “ワルプルギスの夜” でサブマスをやっていました。レイジェルトってアバターはご存知でしょうか?」
「ええええっ!?」
思わず叫んでしまったアロン。
ニーティ以上に、レイジェルトを知っていたからだ。
“神拳” のレイジェルト
見た目は派手なピンクの短髪に、筋肉隆々としたオヤジキャラクターであった。
“寡黙な職人” とまで言われるほど、余計な無駄口を叩かず、高いプレイヤースキルで敵対陣営を悉くなぎ倒していったワイルドな武闘派だった。
攻城戦で何度も前線に繰り出し、共に戦いあった二人。
“イシュバーンに戻り、超越者を倒す” という決意と覚悟を持ち孤独な戦いの中で己の技量を高めていったアロンにとって、レイジェルトの姿勢は少なからずシンパシーを感じたのであった。
“超越者になれば容赦はしない”
誰にも心を開かなかったアロンだが、それでも彼の姿は一種の憧れのような想いもあったのだ。
それがまさか、女性だったとは。
「その様子、ご存知ですのね?」
気の強そうな顔を笑みで崩すレオナ。
ジークノートがアロンと会うことに不信感もあったが、かの有名な【暴虐のアロン】が自分を知っているという事実が、嬉しくないわけがない。
――尤も、あれだけ攻城戦を共に最前線で敵をなぎ倒しまくった仲だ、覚えていないなんて言われたら、それなりにショックでもあったのだ。
「はい。まさか女性だったとは驚きました。」
「ジークとは逆で、現実の私は女だったので。」
にこやかに告げるレオナと驚くアロンの会話に、ジークノートが口を挟む。
「ちなみに彼女は私の婚約者という立場でもあるんだ。」
「おいジーク! 関係無い話はするんじゃねえ!」
二つの意味でさらに驚くアロン。
同じギルドのサブマス同士が転生者、しかも片や皇太子で片や公爵令嬢、それも婚約者同士という事実と、淑やかな令嬢口調が一転荒々しい言葉遣いになったためだ。
――婚約者。
ふと、ファナの様子が気になりラープス村の様子を、ディメンション・ムーブの視覚効果で映す。
どうやら、襲撃などは無く平穏無事だった。
「次はオレッスね。オレは帝都より北側のガンガード町出身のジンだ。ファントム・イシュバーンじゃ “巨木の大鷲” 所属。よろしくッス、アロンさん。」
ジンは手を伸ばし、アロンと握手をする。
「こちらこそよろしく、ジンさん。」
男同士、一見穏やかな握手に見えるが……。
(どういう訳か、ボクの事を憎んでいるな?)
ジンから感じる、暗い感情。
それはアロンに向けてのものだ。
今世、初対面であって恨まれる理由は検討付かない。
あり得るとすると、ファントム・イシュバーンで痛い目に合わせたとか、そういう理由かと推測するアロンであった。
そして、最後。
黒髪女性こと、セイル。
「あ、あ、あ、あのっ! わ、私、セイルって申します! 出身は、にほ……じゃなかった、帝都より南側のライハット市です。その前は、ファントム・イシュバーンでは、“フリーダムキャット” というギルドに所属していました! よろしくお願いします!」
顔を真っ赤に染め上げ、豪快に頭を下げる。
「フリーダムキャット……という事は、“オーディス” をご存知ですね?」
「ええ、もちろんです! うちのギルマスですから!」
“剣神” オーディス
極醒職で数少ない、アロンと同じ剣神。
グランドマスターにまでは辿り着いていなかったが、帝国陣営でたった二人だけの剣神ということで、アロンはレイジェルト同様、強い仲間意識を覚えた。
尤も、【暴虐のアロン】と同じ職業というだけで、アロン不在時は敵対勢力に集中砲火を受けるという憂き目に遭い、散々な思いをしていたなどアロンは知る由も無い。
それに。
「貴女はもしや、“癒しの黒天使” さんですか?」
アロンが告げると、湯立つほど顔を真っ赤に染め上げた。
「な、な、なんでっ、それ、知っているのですかっ!?」
「……風の噂で。」
“父ルーディンが世話になったから”
礼を告げたいが、恐らく彼女の中でルーディンの子 “アロン” と【暴虐のアロン】が同一人物であると繋がっていないため、当面は黙っている予定だ。
「あ、あのっ! 私……改めてアロンさんにお礼を言いたくて。」
“癒しの黒天使” 発言から少し落ち着いたセイルは、改めてアロンを真っすぐ見つめた。
「お礼?」
「はい! 私が未熟だったころ、攻城戦で貴方に助けていただきました! 向こうでもお礼をと告げたのですが……改めて、ありがとうございました!」
立ち上がり頭を下げるセイル。
だが、アロンの頭の中は “?” だ。
攻城戦で助けた。
目の前の頭を下げる女性は、“癒しの黒天使”、父ルーディン曰く “司祭” だ。
つまり、僧侶系。
理解するアロン。
「頭を上げてください。貴女にそこまで感謝されるような事をしておりません。僧侶系を守るのは常識ですので。」
その言葉。
一瞬目を曇らせるセイルだが、
「それでも……私にとってあの時の嬉しさ、誇らしさは今でも覚えているのです。その後、強くなろうって一生懸命頑張れたのも、貴方に助けていただけたからです。ありがとうございました!」
再び頭を下げる。
(……参ったなぁ。)
昨夜、妹ララに言われた言葉を思い出す。
『何となくだけど、セイルって人は良い人っぽいね。』
律儀な姿勢。
常識の範囲で助けたことにも関わらず、その時の想いを胸に高みを目指した彼女。
だが。
(その結果、転生したというのはいただけなかったな。)
“超越者は世界の害虫”
それがアロンの基本的な考えだ。
だが、ある意味自分の所為で超越者になったセイル。
基本的な考えと、自分自身が遠因であることのジレンマが、アロンを大いに悩ませるのであった。
「まぁまぁ、話は尽きないでしょう。」
間を割って話しかけるジークノート。
その目線が、怪しく輝く。
「さぁ、最後は貴方の番です。アロンさん。」
全員の目線がアロンに向けられる。
ふぅ、と溜息を吐き出し、アロンは自己紹介を始める。
「皆さんご存知とは思いますが、」
「待った。」
アロンから見て左側のジンが、制止する。
「その仮面、取ったらどうッスか? 素顔を見せてくれなきゃ、自己紹介にならないっしょ?」
頷くレオナ。
「確かに。私達全員、転生者ではありますが……。今世はそれぞれ立場があります。アロンさん、これでもこの方は、皇太子殿下です。その仮面を外すのは礼儀じゃなくて?」
そう、本来は兵士でも冒険者でも皇族どころか下級貴族の前であれば脱帽が基本であり、この場には、皇太子に公爵令嬢という最上位の家柄の者がいる。
それにも関わらず仮面を被ったままなのは、不敬に当たるのだ。
しかし。
「必要を感じませんね。ボクは貴方たちに素顔をお見せる気はありません。」
明確な拒否。
目を細めるレオナに、あからさまな憤りを発するジン。
「理由を聞いても?」
だが、ジークノートはにこやかに尋ねる。
この場で最も位の高いジークノートが “不敬だ” と言わない限り、騒ぎ立てるのはご法度でもある。
転生者同士の集りだが、“立場” を口にした以上、従うのが礼儀だった。
「理由は、そうですね。正直、貴方たちのような大変お美しい方々に晒して良いような顔細工では無いからです。御眼を汚してしまうのは忍びありませんので、どうかご寛容ください。」
アロンは、自分の素顔は “平凡以下” だと考える。
ラープス村にさえ、イケメンのリーズルに、体格が良くて男前なガレット、真面目でクールなオズロンという美男子が揃っているからだ。
ましてや美男美女揃いの超越者たち。
ファントム・イシュバーンでも最初から最後まで今被っている黒銀のフルフェイスを外したことが無いため、“超越者アロン” という立場で臨む以上、取り外す気は更々無いのだ。
「余計、素顔が見たくなるな。」
睨みながらアロンに告げるレオナ。
ジンも苛立ちながら睨み続けるのであった。
「どうしても、と言うのなら……。」
同時に、アロンの全身から禍々しい殺意が発する。
全員、硬直し、冷たい汗が流れ出す。
「この仮面を奪い取れるなら、どうぞ。」
放たれる殺意とは裏腹に、優しく告げるアロンであった。
「じょ、じょ、じょ……。」
“上等だ!” と叫びたいジンだが、声がうまく出ない。
今まで、生身で感じた事の無いほどの恐ろしい気配に、全身の細胞という細胞が悲鳴を上げているのだ。
「冗談だ! レオナの、冗談だよ!」
慌ててジークノートは制止した。
ガクガク、汗だくで首を縦に振るレオナ。
フッ、とアロンの気配が落ち着いた。
同時に弛緩した空気が流れる。
4人とも、深い息を吐き出し、汗拭う。
「申し訳ありませんが、貴方たちの前に立つ時はこの姿で通させていただきます。」
それは、決してこの4人だけを指す言葉ではない。
“超越者” を前にする時は、常に臨戦態勢で臨むという意思表示だ。
「わかった。構いません。」
了承するジークノート。
「言質は取りましたよ、皇太子殿下。」
アロンの物言いに、ジン、そしてレオナが顔を顰める。
アロンの態度、そして、言葉。
それは、メルティから告げられた通り、転生者に対する敵対行動を取るという証左であった。
「さて、アロンさん。本題に入らせてもらう。」
緊張感の漂う空気の中、ジークノートは “手紙” の件に触れた。
「以前送った手紙の内容となりますが……。まず私達、転生者は対話をしてお互い理解するべきだと考えます。何かの縁があり、こうして転生したのです。その理由も使命も知らぬまま、無作為に生きるのは無駄でしかないと思います。」
全員、黙ってジークノートの言葉に耳を傾ける。
ただ一人、ジンだけが大きく “うん、うん” と頷いている。
「アロンさん、まずは私達と対話をしませんか?」
ジークノートからの提案。
それに対し、アロンは。
「良いですよ。」
了承した。
“転生者に対し、謎の敵対意識がある” とばかり思い込んでいたアロンだが、意外や話が通じる相手であると考え、目を輝かせるジークノートであった。
「良かった! ありがとう。それで、ぜひ! お互いに理解を深め、私達転生者の使命を全うしましょう!」
「使命?」
「ええ、この終わらない戦争を終結させることです。ぜひ、共に手を取り合い、力を合わせましょう!」
拳を作り、笑顔で語る。
対話の先にある、相互理解。
そして、転生者全員が一丸となり、戦争終結という大きな目標に向かって足並みを揃える。
恐らく、困難な道のりであろう。
しかし自分なら。
ここに居る仲間たちなら。
“絶対に、乗り越えられるはず”
その決意を胸に、アロンへ問いかけた。
すると、一つ頷くアロン。
それは了承の意だと、ジークノートは捉えた。
もちろん彼だけじゃない。
“意外!” と驚くレオナと、セイル。
ジンに至っては、ジークノートの素晴らしい考えに同調したなら、次はメルティの前に引きずり出して土下座させてやる、と鼻息を荒くしている。
全員の視線が向けられる中。
アロンは静かに、はっきりと告げた。
「お断りします。」