2-4 本性
ライトニングディアの一件から時は経ち、アロンは、11歳となった。
季節は、秋。
8歳の実地訓練でのトラブル以降、問題らしい問題は発生せず、落ち着いた学校生活を送ってきたアロンであった。
変わった事があるとすれば。
「ファナちゃん。おはよう!」
「おはよう、ララちゃん!」
毎日、同じ場所。
ファナの自宅すぐ近くの路地で合流するアロン、ララの兄妹と、ファナ。
すぐさまアロンの腕を組むファナであるが。
「本当、ファナちゃんはお兄ちゃん大好きだよね。」
「当たり前でしょー。私はアロンのお嫁さんなんだから。」
呆れる妹のララに、笑顔で告げるファナ。
実は、成長につれてララは兄離れが進んだ。
7歳ころまでは相変わらずであったが、アロンやファナ同様にクラスメイト達に揶揄われたことで、しかもその “意中の相手” が肉親であることに一種の羞恥心を覚え、兄との関係を見直したのだ。
ある意味、成長に伴う順当な心の変化。
それが嬉しくも、悲しくもあるアロンであった。
しかし、ファナは相変わらずであった。
その一途な想いは、筋金入りというよりも、もはや病的。
もちろん、彼女の心も順当に成長している。
仮に、あのまま変わらずクラスメイト達に揶揄われる日々であれば、多少なり自重するようになったのであろう。
だが、自重するどころか、エスカレートしていったファナ。
それには二つの理由があった。
一つは。
「おはようございます! 師匠!」
「お、おはよう、リーズル。だから、師匠はやめてってば!」
学校に着くや否や、背筋を伸ばして挨拶をするのは、リーズルであった。
金髪に青い瞳が輝くまさに将来有望の美男子。
11歳になりその端正な顔立ちはますます女子を虜にするのだが、その笑顔はアロンに向けられる。
しかも、“師匠” 呼ばわり。
リーズルは、3年前の一件以来、アロンを “師匠” と慕うようになった。
その前まではアロンも、伴うファナごと揶揄い何かと突っかかっていたのだが、3年前の実地訓練での出来事から、自分を救い出してくれたアロンを心底尊敬するようになった。
未だ誰にも告げていない事実。
自分たちよりも遥かに巨大な、角に電撃を迸らせる鹿の化け物を、文字通り一瞬で倒したのがアロンだからだ。
その後のやり取り。アロンの貫禄。
それは、憧れて止まない “勇者” と呼ばれる最高位の冒険者と遜色ないものであった。
以来リーズルは、人目もはばからずアロンを師匠として慕う日々なのである。
ただ、アロン自身はリーズルに対して師匠らしい事は一切していない。
単に、勝手に舎弟を名乗られているだけなのである。
揶揄われることも、他者に対して大柄な態度を取ることが無くなったので良い影響だと、クラスメイトや教員たちも喜んだ。
だが、ファナだけは警戒心を強める。
それは、リーズルが “男子” にも関わらず異常なほどアロンに心酔しているからだ!
“ララちゃんが妹としての自覚が出てきたからライバルが居なくなったと思ったのに、リーズル君まで!”
ライバルが男子とは、何の冗談か。
そして、それだけでは無かった。
「おはよう、アロン君。」
「あ、ああ、おはよう。メルティ……。」
教室でアロンを見かけると同時に、左腕へ絡む少女。
その表情は11歳の少女とは思えぬほど妖艶。
灰色のウェーブがかった髪は腰まで長くなり、緩く、ふわりと纏まって艶やかになびかせる。
大きな釣り目のエメラルドの瞳は、まるで猫のような可憐さと奔放さを醸し出していた。
今や、学校一番のアイドルとなったメルティであった。
「ちょっとメルティちゃん! また勝手にアロンの腕に絡んで!」
「ええー、いいじゃない。片方空いていたし。ね、アロン君?」
アロンを挟んで言い合う二人。
むしろ、一方的にファナが憤っているだけだ。
メルティは “大人の余裕” を見せるのであった。
3年前の一件で変わったのは、リーズルだけではない。
その時に同じチームを組んでいたメルティも、何かとアロンに絡んでくるようになった。
具体的に言えば、ファナやララのような、ボディタッチ含む過度な接触だ。
さらに加えて、日に日に可愛く、美しくなっていくメルティ。
元々の可憐さもあり、同年代の男子から密かな人気を集めていたのだが、今や低学年だけでなく高学年の男子からも絶大な人気を集める。
それでも立ち位置とすると、相変わらず一歩引いては周囲を良く観察して、何かあれば男子だけでなく、女子にもきめ細やかな気配りを施し、周囲をフォローするといった今や女子の中心人物にもなってきた。
そんなメルティが、“女” の顔をするのはアロンだけだ。
公言はしていないが、誰がどう見ても、“メルティもアロンが好き” だと分かる行動が多い。
それが面白くないのが、ファナ。
アロンに絡むメルティに、怒りや嫉妬心を隠さずぶつける。
すると、どうなったか。
「またファナちゃんが、メルティちゃんに絡んでいる。」
「何か、嫌だよね。アロン君が可哀想。」
女子たちから、顰蹙を買うようになってきてしまった。
小さい頃からアロン一筋で、アロンへの気持ちを隠さず言動で表してきたファナだが、メルティ参戦によって、その行動が若干醜く映ってしまうのであった。
男子の人気は、メルティが一番高い。
もちろんファナも男子の間で人気が高いが、彼女は “アロン馬鹿” なので、そういう対象には見えず、むしろ、過剰なまでにアロンに執着する姿に、苛立ちも覚える者も表れ始めた。
女子からも、ファナに比べて、周囲も平等に、誰にも優しくちゃんと周りを見ては細やかな気配りが出来ているメルティに軍配が上がる。
徐々に、ファナが孤立し始めていたのだ。
(何か、おかしい。)
その異変を察しているアロン。
そもそも、ファナは確かに前世でも “アロン、アロン” であった。
だが、ここまで固執している感じは無かった。
そして、クラスだけでなく学校での人気者は、ファナだった。
可憐な容姿に、誰にでも気さく。
友達想いで、悪戯や意地悪をする男子にも果敢に立ち向かい、女子たちのまとめ役であったのがファナだったはずである。
むしろ、メルティの変化が異様であった。
前世では殆ど絡みが無く、記憶の薄い少女。
思い出せば思い出すほど、大人しく、周囲に溶け込むような印象に残らない少女であったはずだ。
それが、今や学校一の美少女となり、男子だけでなく女子の心までも掴むような中心人物となった。
その可憐さや、あどけなさは精神が大人なアロンでも時折ドキリとすることもしばしばだ。
そして、その時に心をささくれ立たせるファナ。
メルティに対する、嫉妬の言葉の数々。
周囲に、醜く映る。
結果、仲良かった女子たちが離れ始めた。
未だそれは表面化してはいないが、いつ、何かのきっかけで決壊してしまえば修復は難しくなる。
下手をすると、全ての女子を敵に回すことになる。
そのことに、まるで気付いていないファナであった。
◇
「ねぇ、ファナ。メルティの事なんだけど……。」
「何!?」
帰り道。
怒りを露わにするファナを前にして、同じく一緒に帰路へつくララも引き気味だ。
相変わらずアロンの腕にしがみ付くファナにとって “メルティ” はほぼ禁句であった。
だが、ここではっきりと告げておかねば、ファナの未来に暗い影を落とすことになりかねない。
「……ララ、ごめん。先に帰ってもらえないか? 少し、ファナと話がある。」
「えっ……? うーん、わかった。」
少し寂しそうに表情を曇らせるが、アロンが、
「帰ったら、一緒に宿題やろう。その後、遊ぼうね。」
と告げると、パァ、と笑みを浮かべて
「うん! 待っているね、お兄ちゃん!」
嬉しそうに、走って自宅へ向かった。
多少兄離れが出来ていたとしても、やはり夢は “お兄ちゃんのお嫁さん” であり、アロンが大好きなララなのだ。
「……話って?」
「逆方向になるけど、これからナユの花畑へ行こう。」
「……えっ!?」
驚き、顔を青ざめるファナ。
ナユの花畑へは、学校の生徒だけで勝手に行って良い場所でなかった。
授業の実地訓練ならともかく、子供たちだけで遊びに行って良い場所ではない。何故なら、手前とは言え “邪龍の森” の一部、脆弱なモンスターならともかく、万が一、屈強な者が紛れ込んできたら、子どもなど格好の餌食だ。
そして、子どもの味を覚えたモンスターは、確実に村へ襲撃してくる。
かつての、フレムイーターのように。
それを、耳だこで教え込まれたファナ。
当然、それを告げたアロンも同じであるはずだ。
そんなアロンが、禁を破ってファナを誘う。
「……アロンが、そう言うなら。」
小さく頷き、了承する。
アロンは腕にしがみ付くファナを少し離し、その手を握った。
「大丈夫。何があっても、ボクがファナを守る。絶対に、守る。」
優しい、アロンの微笑み。
思わず赤面してしまうが、その視線を外せず、ポーッと見つめるファナであった。
「さ、さぁ、行こう。」
アロンも少し照れながら、ファナの手を引き、大人に見つからないようにファナを連れ立ってナユの花畑へ向かうのであった。
◇
「良かった、誰も来ていないみたいだね。」
黄色い花を咲き誇らせるナユの花。
もうすぐ冬の訪れ、村の大人がナユの花から摂れる油分を求めて摘み取りに来てもおかしくは無いのだが、運良く誰も居なかった。
「は、話って、なぁにアロン?」
少女の心臓は、破裂しそうな程、鼓動が高鳴る。
誰も居ない、一面黄色の花畑に、二人きり。
11歳。
でも、男子のそれとは違い、未熟ながら心は大人ぶる頃。
男子が憧れるように、女子も憧れることがある。
“素敵な勇者様に、見染められる”
屈強な帝国兵や、冒険者。
名のある勇者のサクセスストーリーを憧れる男子のように、その勇者と恋をして、大恋愛の末に一緒になることは帝国生まれの女子の憧れなのだ。
そのモデルは、帝国の出世頭。
“大勇者” ハイデン。
現在、イースタリ帝国の8人の将軍、“輝天八将” を統べる “大帝将” となった、ハイデン・フォン・アルマディート侯爵、その人である。
男児も、女児も、憧れる英雄だ。
しかし、ファナにとっての “勇者様” はアロンだ。
幼い頃からずっと一緒だった最愛の人。
優しく、そして幼い自分に比べてずっと大人びていて、兄弟の居ないファナにとって兄のような存在でもある憧れの人。
アロンは隠しているつもりだが、ファナは知っている。
――本当は、とても “強い” ことを。
実地訓練だけでなく、クラスメイト同士による実技訓練もある。
一番は力自慢のガレットだけど、アロンは何故かいつも “わざと” 負けているようだった。
そして、ガレットを褒めたたえるアロン。
周囲には “情けない” と映るのかもしれない。
だけど、ファナだけは分かっていた。
アロンは、本当は凄く強くて、ガレット何かでは相手にならないことを。
それが確信である判断したのは、ある日アロンが負けた時に、弟子を公言するリーズルが “ふふ、ガレットの奴はしゃいじゃって。師匠の本当の実力も知らないで。” と一人、静かに笑っていた。
ファナだけでなく、リーズルも知っていた。
確信した。
アロンは、やはり “勇者様” だ。
リーズルがあの一件以来、異様なほどアロンを慕うのは、現れた “でっかい鹿のお化け” から逃げたのではなく、本当は、アロンが退治したのではないか?
何か理由があって二人は隠しているが、恐らくそれが真実だ。
――だから、メルティも、きっとアロンが好きになった。
それに気づいたのが自分だけで無いことに暗い気持ちにもなったが、それでもファナは、アロンだけを見続ける。
そんなアロンも、真っ直ぐファナを見つめる。
サラサラと、冷たい微風が頬と足元の花を撫でた。
風の音だけ響く、静寂。
アロンは、ゆっくりと、告げた。
「ファナ。ボクは、ファナが好きだ。」
飲み込む、息。
アロンは、続ける。
「ボクは、誰よりもファナが好きだ。」
子どものおままごとや、単なる “好き” とは異なる、“好き。”
それは、愛の告白であった。
心臓が張り裂けそうになり、呼吸の仕方も忘れるほど、息を飲み込んだ。
顔は、耳まで真っ赤になり、全身が燃えるように熱い。
静寂の中の風の音が、もはや耳に入らない。
聞こえるのは、自分の心臓の音だけだ。
「わ……、わたっ、わたしっ。」
言葉が、出ない。
代わりに、涙が溢れる。
アロンはファナの両手を取り、笑顔だが、真剣に、見つめる。
風がひゅ、と吹き、ファナの長い髪がアロンの肩に触れた。
「好きだよ。ボクは、ずっと、何があっても、ファナを守る。」
ファナにとっては、愛の告白。
――アロンにとっては、決意の表れだ。
季節は秋。
前世通りなら、今から6年後に凶悪な超越者が3人、この村を蹂躙しにやってくる。
死にゆくアロンの目の前で凌辱されたのは、この目の前の、可憐な少女。
アロンにとって最愛の婚約者である、ファナ。
来年には、適正職業を見定める儀式がある。
その5年後に、奴等がやってくる。
あと6年。
その間に、アロンは “強くなる” と改めて覚悟を決めた。
偽りの世界、ファントム・イシュバーン。
そこで【暴虐のアロン】と呼ばれ、恐れられた自分。
どこまで近づけるか分からない。
だが、この少女を守るためなら、敵となる者は全て “殲滅” する。
再び【暴虐】と呼ばれようとも。
目の前で顔を真っ赤にして、涙を零す少女の笑顔を守る。
そのために、アロンはこの世界に舞い戻ったのだから。
「……アロン。」
ファナは、涙を流したままアロンに抱き着いた。
そして、
「うわああああああああああああんっ!」
大声で、泣きじゃくる。
アロンは、前世と同じようにファナのさらさらの茶色の髪をゆっくりと撫でる。
すると、花のような甘い香りがアロンの鼻腔をくすぐった。
アロンもファナの身体を寄せて、強く抱きしめる。
「ずっと、ファナ守る。……何があっても。」
「うん……。私も、アロンが好き。大好き。」
ファナはゆっくりとアロンから身体を離し、涙で濡れた顔のまま、笑顔を浮かべた。
「私のこと、“お嫁さん” にしてください。」
ずっと、幼い頃から聞かされてきたファナの想い。
静かにアロンは頷き、答えた。
「もちろんだよ。結婚しようね、ファナ。」
“未来が変わる”
それがどういう意味を持ち、何を齎すかアロンには分からない。
ただ、未来が変わっても。
失った未来を取り戻しても。
アロンがやるべき事は、変わらない。
最愛のファナを守る。
最愛の家族を守る。
最愛の村を守る。
“だから、殺す”
敵となる者を。
イシュバーンを蹂躙する害 虫を。
静かに結ばれたアロンとファナ。
本来なら、5年後の未来の出来事だ。
だが、アロンがこの場でファナに気持ちを告げたのにも理由があった。
(本来、クラス、いや学校の人気者はファナであったはず。それが狂ったのは、間違いなくボクの所為だ。そして……。)
原因はアロン。
だが、そのアロンの行動によって変化した、何か。
その根本たるもの。
(……前世と確実に違う事。例えボクが未来を変えても、本来なら変わるはずが無いこと。)
それは “人の基本的な性格” だ。
直接助けたリーズルは、それだけ彼にとって衝撃が大きかった出来事であったので理解が出来る。
だが、他のクラスメイトは違う。
いくらアロンがクラスの中心人物となり、周囲との調和に気を使っていたとしても、クラスの面々は前世と変わらず、その性格も前世のままだった。
つまり、直接的な影響を与えない状態で性格が違うのは、前世の記憶を持ったまま転生したアロン本人だけのはずだ。
しかし。
アロンの行動が、“切っ掛け” になるとしたら、それは何か?
例えば、前世の記憶を持ったまま転生したアロンは、生まれたばかりの赤子から幼児、そして今の少年期を過ごす中で、特に気を使っているのが、前世の記憶を持っていること、そしてこの世界に持ち込んだファントム・イシュバーンのスキルや力量、システムのスキルなどが明らかにならないようにすることだ。
それは、アロン自身が御使いに言われた “選別” と “殲滅” の役目以上に、アロン自身が元々 “イシュバーンの生まれ” だからだ。
世界の理を崩すような、常識外の行動を起こすことは、以ての外。
では、アロン以外の超越者はどうだろうか?
彼らは、ファントム・イシュバーンの “外の世界” の記憶を持っている。
しかも、VRMMO【ファントム・イシュバーン】は、その世界の娯楽であり、実際に遊戯に没頭しているのは、実在する、そちらの世界の人間だ。
そんな人間が、アロン同様に赤子からやり直したら?
しかも、全く異なる異世界イシュバーンとなると?
脆弱な、赤子に幼児。
さらにファントム・イシュバーンで得たスキルやステータスは、“年齢補正中” として制限が掛かり、他の子どもと同じく弱々しい存在からやり直しているのだ。
そして、ファントム・イシュバーンの本来の世界とは違い、文明や科学のレベルがけた違いに遅れる世界だ。
加えて、三大国が太古から争う、戦争の絶えない血みどろの世界。
そんな世界に置かれ、存分に揮えない力。
いくら “不死” のシステムが働いているとは言え、迂闊な行動など出来るはずがない。
結果、アロン同様に “力を隠す” のが結論になるはずだ。
制限となる “年齢補正中” も、12歳になれば、全て解除される。
超越者として力を揮うなら、それからでも遅くは無い。
だから、ひた隠すはず。
しかし、曝け出すとすると、どういう状況だ?
考えられるのは、“迂闊な行動を取ってしまった”
――もしくは、同じ超越者に会った、それか超越者らしき存在を感じたからではないか?
超越者は、前世の記憶を持つ。
その記憶は、ファントム・イシュバーンが存在する別世界のもの。
超越者は、同じ世界からやってきた転生者を見つければ、恐らく “同郷意識” が芽生えるだろう。
それまでひた隠ししていた “それ” を暴き出し、記憶を持ちながら、絶大なスキルを “年齢補正中” という厄介な機能に封じられ、赤子からやり直してきたという、苦労を分かち合いたいのであろう。
つまり、“本性” を曝け出すのだ。
――そう。
彼女は、“本性” を現したのだ。
この3年間。
彼女の変化を見れば、納得だ。
そして、あの日に呟いた、あの言葉。
『ライトニングディアなわけ、ないか。』
あの時に宿った、小さな疑念。
それが、確信に変わった。
あの日から、アロンに固執するようになった彼女。
見る見る変貌し、周囲から人気を集めて、ファナを徐々に孤立させるよう追い詰め、外堀を埋めるようにアロンを手中に収めようとするような手腕。
11歳の少女らしからぬ、全ての行動。
「……間違いない。」
ファナを自宅へ送り返したアロンは、静かに、呟いた。
(メルティは、転生者だ。)
後に続く言葉は、声には出さなかった。
代わりに溢れるものは、
――――殺意だった。