1-10 自重
東西の街道のやや南側に位置する、ラープス村。
その南側には、巨大な山脈に連なる深い森。
ラープス村に恵みを与えるこの森には、とある言い伝えがある。
“森の最奥には、邪龍が住む”
邪龍は、その名が示す通り災いと邪悪を齎す存在で、かつてはモンスターの大群を率いて神々と人間を相手取り、幾年月もの間、熾烈な戦争を仕掛けたという伝承がある。
だが、美しい “女神” の説得と浄化により、邪龍は改心したのだという。
改心した邪龍は、自らの過ちを悔い、深い森の最奥で神々と人間へ懺悔の言葉を延々と紡ぐ。
その咎が、晴れるまで。
だが、配下にいたモンスター達は、突然心変わりした邪龍に見切りをつけて、世界各地に散った。
その中でも力の弱いモンスターは、邪龍の庇護を望み、森に残った。
残ったモンスターは、森の深くに居る。
滅多に、ラープス村には近づいてこない。
何故なら、邪龍が懺悔する “人間” が怖いからだ。
それでも人里に近づくのは、それが分からぬ脆弱な獣だ。うまく立ち回れば、子供でも対処可能。
だからこそ、ラープス村は “帝国” で最も多くモンスターが生息していると謂われる “邪龍の森” に面していながらも、平和に、安定して営みを続けている。
ただ、時折。
“強い奴” が迷い込む。
その “災害” によって村は傷跡を残すこともあった。
――――
「で。お前は奥底から出てきた奴か。」
淡く白く、仄かに光る短剣を握るアロン。
現在、三歳児である彼にとっては、その短剣は胴体の半分ほどの大きさであり、小さなその手と身体では、大剣を握るように両手で掴むのだ。
その上で、目の前の巨大な赤熊を睨む。
危険度Dクラス、レッドグリズリー。
【ファントム・イシュバーン】の世界では、単独討伐推奨レベル50の “雑魚” だが、ここイシュバーンの世界では “準災害級” に該当する危険なモンスターであった。
『グルッ、グルルゥゥゥ』
アロンの十数メートル先、仁王立ちして真っ赤な瞳を輝かす巨熊は、口元からダラダラと涎を垂れ流しながらも、何かを躊躇するように佇む。
見下す目線の先にいる、人間の子供。
だが、その存在を推し量れないのだ。
両手に握られた、白く輝く剣。
人間の子供が発するとは思えない、殺意。
“いったい、コレは、何だ?”
“肉の柔らかな餌ではないのか?”
--いや、餌だ。
『グワォォォォッ!!』
空に向かって轟く咆哮。
同時に、立ち上がった体躯をズシンと降ろし、四つん這いで小さなアロン目掛け駆け出す。
体長差は、4倍弱。
体重差で言えば、60倍強。
崩落する岩のような突撃を喰らえば、アロンなど簡単に見るも無残に吹き飛ぶであろう。
そしてその速度は、今のアロンのステータスでは、対応しきれない。
回避の数値である “AGI” は、“1” のままだから。
突撃するレッドグリズリーの動きに、まるで硬直したようなアロン。
そんな子供に、容赦なく、勢いのまま右前足を薙ぐ。
一本一本が、アロンの頭ほどの太さのある爪。
それがアロンの身を引き裂いた。
瞬間。
『グギャッ!?』
確かに、引き裂いた。
だが、爪は空を切った。
目の前の子供が、居ない。
「どっち向いているんだ? 熊助。」
その声は、レッドグリズリーの背後から響いた。
反射神経のように振り向く、と。
「じゃあね。」
目の前に突き出される、白く輝く短剣。
それが、レッドグリズリーの額に軽く当たった。
『バオンッ!!!』
それは、大きな風船が破裂するような光景だった。
3メートルはある巨体のレッドグリズリーが、内側から破裂するように、その場から潰えた。
血飛沫も、肉片も、何も残らなかった。
「こ、こうなるんだ、ね……。」
その元凶を生み出したアロンは、突き出した短剣をそのままにして、呆れるように呟いた。
そして、地面に着地する。が。
「あいてっ!!」
まだ三歳のアロン。
現れたのが2メートルほどの空中であったのでそのまま落下したが、その身では受け身が取れなかった。
立ち上がるアロンの服、胴の部分には小さな切り傷のような解れがあった。
そう、レッドグリズリーの攻撃はアロンに当たっていたのだった。
わずか、服の先に。
そのほぼ同時。
僅かに軽く、熊爪に左手の甲を当てた。
そして、アロンは消えた。
【ディメンション・ムーブ】
『近郊に限るが、一度訪れた場所、思い描いた場所へ一瞬で移動できる。また、ギルド戦やモンスター戦の際、最後に攻撃を当てた相手の背後へと瞬時に移動できる。その場合、移動距離の制限は無くなる。連続使用は5回まで。1時間に1回ペースで回復、休眠で全回復する。』
当てた左手の甲こそ、アロンの攻撃であった。
当たり判定を得たと同時に、ディメンション・ムーブでレッドグリズリーの背後へと瞬時に移動したのだ。
アロンの “AGI” は最低の “1”
攻撃を回避する力は、最低という意味だ。
だが、元より備わっている反射神経や判断力は別だ。
それこそ、ステータスの数値には現れない、アロンが【ファントム・イシュバーン】で培ってきたプレイヤースキルの賜物である。
ファントム・イシュバーンで、アロンは前人未到のレベル995到達者であった。
それは極度のやり込みだけでなく、転生者--、超越者を殺すことを主眼に置いた、自らのプレイヤースキルまでも極限に研ぎ澄ました結果によるものだ。
“VRMMO” というゲームの特性。
自らの目と、動作。脳のシナプスが連動する。
そこで得た膨大な技術と経験こそ、アロンを【暴虐】と言わしめた理由の一つである。
その技術と、転生特典で得たディメンション・ムーブを掛け合わせたものこそ、今、レッドグリズリーに見せた技であった。
転生したばかりの、三歳児アロン。
ディメンション・ムーブが開花したのは、つい最近。
天才、という言葉すら生温いアロンの技術によって、すでに自らの “奥義” へと昇華させたのだ。
だがその結果は、アロンの予想を遥かに上回った。
その原因は、【装備換装】の抜け穴で、このイシュバーンに持ち込んだ武具の一つ。
今、アロンの右腕に握られる、短剣だ。
「軽く当てただけで、跡形もなく消し飛ばすなんて。こりゃあ……確かに “存在してはいけない” ものなんだな。」
仄かに白く輝く短剣を眺めて、呟く。
短剣にしては少し長い、刃渡り40センチほどの諸刃。
刃は正面から見ると細い板のような形状で、僅かに透けている。
特徴なのは、鍔と柄。
鍔こそ、この短剣を仄かに照らす部分。
丸みを帯びて拳を守るような形状だが、その鍔を覆うように浮き出る、白い謎の文字。
文字は、この短剣を握ると拳の周囲にも、ゆっくりと巻き付くように浮かび、剣を揮っても剣閃のように付いてくる。
そして、柄。
先端には、杖の先のような紅玉が付けられている。
半透明の剣先。
神々しく輝く鍔。
杖のような紅玉。
銘を、“神杖剣ヴァジュール”
―――
【神杖剣ヴァジュール】
ランク:神話級
形状:短剣
<上昇値>
ATK:18,000
MATK:5,000
DEF:0
MDEF:0
CRI:+20%
<属性>
・メイン:光
・サブ1:聖
・サブ2:雷
<特殊効果>
・自動HP回復 1%/3秒
・使用SP減少 5%
・無効:呪怨、鈍足、封印、誘惑
・半減:闇属性、邪属性
・特攻:闇落ち、死霊系、悪魔系、邪龍の印
<スロット>
・なし
<装備可能職業>
剣神、神皇、神獣主、神騎士、神医
―――
「一瞬で吹き飛んだということは……“特攻” が働いたのか? となると、さっきの奴は、“邪龍の印” を持っていたのかな?」
“特攻” とは、装備した武器の特性で、『表記されている属性、所属、状態の相手に対して1.5倍ダメージ+クリティカル発生確率10%アップ』という効果が自動的に与えられる。
だが。
「こっちの世界でも、“オーバーキル” 判定はある、と。勉強になったなぁ。」
ぼやくアロン。
“オーバーキル” とは、ファントム・イシュバーンのシステムの一つで、モンスターを1撃で倒した時、与えたダメージがそのモンスターの保有HPの5倍以上であった場合、アイテムのドロップ確率が極小になってしまうマイナス効果なのである。
このため、上位者は依頼やクエストの内容などで遥か格下の雑魚モンスターを狩る必要が生じた時、わざわざ弱い装備に変更しなければならない手間もあった。
それでもオーバーキルとなってしまう場合。
最後の手段、課金アイテム “虐殺封印の書” がある。
使用すると、3時間限り、どんなダメージを与えてもオーバーキル判定が働かなくなる、という効果が得られる。
“システムで金を取る”
ファントム・イシュバーンが “えぐい” と言われる理由の一つでもあった。
最も、重課金者や、同じく重課金者とも言えるアロンは、全く気にしていなかった。
アロンは、次元倉庫を発動して、神杖剣ヴァジュールを仕舞う。
再び、辺りは深い闇に覆われた。
アロンは、眠たい目をこする。
「トラブルはあったけど、目的は達成したんだ。帰ろう。」
ディメンション・ムーブで自宅を覗く。
家族たちは、熟睡しているようだ。
ディメンション・ムーブの残数は、2回。
あと30分も経てば回数は1回分増えるが、もう限界だ。
まず、離れの小屋へ移る。
解れてしまったが、大きな布のバッグを折り畳んで仕舞いこむ。
次に、自室へと移るのであった。
◇
(あとは……ゆっくり、進めればいいな。)
温かな毛布に潜るアロン。
目を閉じ、入眠へと向かう。
が。
「……もしかして。」
掠れるような小声で呟く。
目を開き、
(ステータスオープン)
と、心の中で唱える。
(げっ!)
アロンは、その表記に驚かされた。
―――――
名前:アロン(Lv18) New+17
性別:男
職業:剣 神
所属:帝国
反逆数:なし
HP:1,320/1,320(年齢補正中)
SP:620/620(年齢補正中)
STR:1 INT:1
VIT:1 MND:1
DEX:1 AGI:1
■付与可能ポイント:102
■次Lv要経験値:350
ATK:30(年齢補正中)
MATK:30(年齢補正中)
DEF:22(年齢補正中)
MDEF:18(年齢補正中)
CRI:0%(年齢補正中)
【装備品】
右手:なし
左手:なし
頭部:なし
胴体:布の服(上)
両腕:なし
腰背:布の腰巻
両脚:布の服(下)
【職業熟練度】
「剣士」“剣神(GM)”
「剣士」“修羅道(JM)” “剣聖(JM)”
「武闘士」“鬼忍(JM)” “武聖(JM)”
「僧侶」“魔神官(JM)” “聖者(JM)”
「魔法士」“冥導師(JM)” “魔聖(JM)”
「獣使士」“幻魔師(JM)” “聖獣師(JM)”
「戦士」“竜騎士(JM)” “聖騎士(JM)”
「重盾士」“金剛将(JM)” “聖将(JM)”
「薬士」“狂薬師(JM)” “聖医(JM)”
【所持スキル 72/72】(年齢補正中)
【内、使用可能スキル:4/72】
【剣士】
スラッシュ(New)
パリィ(New)
剣士の心得
【剣闘士】
剣闘士の心得(New)
【書物スキル 4/4】
1 永劫の死
2 次元倉庫
3 装備換装
4 ディメンジョン・ムーブ
―――――
(レベルが、一気に18にもなった……。)
当然と言えば当然で、単独討伐推奨レベル50のレッドグリズリーを、単身で倒したからだ。
確証は無いが、得られる経験値はファントム・イシュバーンと同じなのであろう。
それに伴い、爆発的に上昇したHPとSP。
未だ “年齢補正中” という制限が掛かっているが、ファントム・イシュバーンでは、新規プレイヤー、つまりレベル1の状態とほぼ同じ数値となった。
仮初の世界とは言え、ファントム・イシュバーンに入り込んだ時、アバターの姿は成人であった。
それが、そのままこのイシュバーンの世界での一般的な成人を意味するなら、三歳児のアロンは、すでに大人顔負けの生存力とスキル発動力を、その身に宿すこととなった。
レベルが上がることで得られる恩恵。
僅かばかり上昇する、HPとSP。
これは、どちらかと言えばオマケ。
レベルアップの本領。
それは、ステータスに振り分けられる “付与可能ポイント” だ。
一度にレベルが17も上昇したことで、得られた付与ポイントは、何と102にもなった。
アロンは、目が完全に冴えて画面を見続ける。
“どこに振り分けるか”
それが、重要だ。
向こうの世界では、4時間の壁以外の20時間を、全てファントム・イシュバーンに費やした結果、辿り着いた境地がレベル995だ。
だが、現実のイシュバーンではどうだろうか。
そこまで、この肉体を強くすることが出来るのだろうか?
もちろん、そのための準備は怠っていない。
加えて、ある程度自由が利く年齢になればレベリングも可能だ。
それでも、あちらのようなレベル900オーバーという大台は不可能だろう。
絶えずモンスターを狩り、依頼をこなし、ギルド戦で敵対勢力をなぎ倒していた日々で、やっとたどり着いたからだ。
レベル上げの効率化に気付いたのは、1年目。
効率の良いレベル上げを繰り返して、900台に達したのは3年目。
それから95上げるのに、2年掛かった。
900以下と、900を超えてからの壁は厚い。
しかし、上を目指す価値はある。
レベルを上げれば上げるほど、付与ポイントで自由に強くなれるのも、超越者の強み。
ならば、死に物狂いでレベルを極限まで上げる。
転生者の “選別” と “殲滅” というアロンの役目を全うするためにも。
(さて、そうなると “あちらのよう” にはいかないな。)
ファントム・イシュバーンでは、元々アロンは「レベル最大値を目指す」ことを視野に動いていた。
そのため、いずれは全ステータスが最高値になるだろうと思い、僅かに得た情報からステータスは所謂『極振り』をメインとして上げていた。
最初に上げたのは、“VIT”
防御力と生存力が上昇する。
次は、“DEX”
致命的な一撃が上昇する。
VITを最高値である1,000まで上げた頃、ネットワークの存在を知ったのだ。
そこで攻略情報を調べたところ、『ファントム・イシュバーンのステータス上昇で迷ったら、DEXに振ろう!』『最強は、DEX極振り!』とのアドバイスを目にしたからだ。
結果、面白いくらいクリティカルヒットが連発して、狩りにギルド戦に、大いに役立った。
その次は本命、“STR”
攻撃力が上昇する。
その上昇値は、1つ上げるごとに50もATKが上昇して、最大値に達した時は、何も装備しなくてもATKは5万となったのだ。
そして、“オーバーキル” が絶えず発生した。
アロンにとって “虐殺封印の書” が手放せなくなる原因ともなった。
その後は、
“INT”(魔法攻撃力とスキル発動力が上昇)
“AGI”(数値の5%がそのまま回避力となる)
“MHD” (魔法防御力が上昇)
この順に上げていった。
アロンは、悩む。
何故なら……。
(下手に上げると、幼児らしくなくなるよな。)
アロンは現在「目立たない」ことを重点課題として挙げている。
そのため、立派に三歳児を演じる必要があるのだ。
巨大な熊を掠り傷程度で粉砕する力を持っていたとしても。
それ以上に危険な武器を持っていても。。
そこで、選んだ数値。
ステータス画面のある項目に、数値を全振りした。
(まぁ、これならバレないよな?)
悩みに悩んで選んだ、上昇ステータス。
それは、結局はファントム・イシュバーンと同じく、“VIT” であった。
その結果。
『ポン』
例の、軽快な音。
そして、無機質な女の声。
『ステータス “VIT” が100を超えました。よって、一部の “年齢補正中” を解除します。』
「えっ?」
思わず、声を漏らしてしまった。
その結果のステータスが、こちら。
―――――
名前:アロン(Lv18)
性別:男
職業:剣 神
所属:帝国
反逆数:なし
HP:104,200/104,200
SP:620/620(年齢補正中)
STR:1 INT:1
VIT:103 MND:1
DEX:1 AGI:1
■付与可能ポイント:0
■次Lv要経験値:350
ATK:30(年齢補正中)
MATK:30(年齢補正中)
DEF:518
MDEF:18(年齢補正中)
CRI:0%(年齢補正中)
【装備品】
右手:なし
左手:なし
頭部:なし
胴体:布の服(上)
両腕:なし
腰背:布の腰巻
両脚:布の服(下)
【職業熟練度】
「剣士」“剣神(GM)”
「剣士」“修羅道(JM)” “剣聖(JM)”
「武闘士」“鬼忍(JM)” “武聖(JM)”
「僧侶」“魔神官(JM)” “聖者(JM)”
「魔法士」“冥導師(JM)” “魔聖(JM)”
「獣使士」“幻魔師(JM)” “聖獣師(JM)”
「戦士」“竜騎士(JM)” “聖騎士(JM)”
「重盾士」“金剛将(JM)” “聖将(JM)”
「薬士」“狂薬師(JM)” “聖医(JM)”
【所持スキル 72/72】(年齢補正中)
【内、使用可能スキル:4/72】
【剣士】
スラッシュ
パリィ
剣士の心得
【剣闘士】
剣闘士の心得
【書物スキル 4/4】
1 永劫の死
2 次元倉庫
3 装備換装
4 ディメンジョン・ムーブ
―――――
「嘘、だろ??」
開かれたステータスを見て、唖然となる。
HPとDEFの年齢補正が、解除されたのだ。
その数値。
HPが、10万と4千2百。
DEFは、518。
嘘、と呟いたアロンは冷静に考えて、納得した。
ファントム・イシュバーンでの、上昇値。
VITを一つ上げると、HPは、1,000上昇。
DEFは、5上昇。
HPとDEFの差が大きいのは、ある程度低い攻撃力でも、防御力を貫くためだ。
それでも簡単にやられないように、HPが高く盛られている。
初心者の時のアロンは、VITを上げてしばらくは、どんなモンスターの攻撃でも受けるダメージは「1」表示で、しかも爆上げされるHPに、ある種、無敵のような感覚を得た。
それがある程度進むと、今度はダメージを受けるようになり、あっと言う間に大ダメージの連続で無尽蔵にあったかに見えたHPがゴリゴリ削られるという目にあった。
そして、防具の重要性を認識した。
ファントム・イシュバーンでは、5か所に装備できる防具で、DEF、MDEFだけでなく、HPやSPも上昇する。
こうして底上げして、攻略していくものだと知った。
さて、現実のアロン。
あまりに素っ頓狂な数値に、目が回る。
(これって……三歳児の数値じゃないよな?)
当たり前である。
見た目は変わらず、死んでも “デスワープ” が発動するが、簡単に死なない身体となったアロンであった。
そして、下手にポイントを振り分けてしまうと、年齢補正というある意味 “子供らしさ” が損なわれることを知る、夜となった。
(しばらくは……モンスターを倒してもポイント振り分けは自重しよう)
三歳児のアロンの誓い。
だが、ファントム・イシュバーンでの癖だったのか。
後に、この自重は、無かったことになる。