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プロローグ


「ファッファファファファーーーー!!!」


魔王城、そこの玉座の間で高らかな笑い声が響いていた。


「もうすぐだ!もうすぐこの世界は俺様の物!誰もこの俺様に逆らえなくなるぞ!!!」


喜色満悦、そう宣言するこの者こそ、現在世界の8割りをその手中に収め今まさに世界の全てをその手にしようとしている魔王カイゼル・ラファフォードである。


筋骨隆々、2本の角の生えた銀髪が眩しい整った顔を巨悪に歪めカイゼルはこの世の春と上機嫌であった。


「カイゼル様、ここまで本当に長かったですね。」


カイゼルの後ろに控える、薄紫色の長髪が美しい眼鏡を掛けた美女が微かにでていた涙を拭いカイゼルに賛同する。


彼女は魔王カイゼルの副官兼秘書のサキュバスでディアナ・リーメイ、カイゼルが魔王となる前から仕えている古参の部下だ。


「そうだな、ディアナ!ここまで本当に長かった!魔王となる前はいつ死んでもおかしくなかったし、魔王となってからも魔王の座を狙う不届き者や強固に抵抗する人間共、ここまでの道のりは決して平坦ではなかった!しかしあと少し、人類最後の大国アンゼルセンを落とせば人間共ももう我々に抵抗など出来まい。」


「はい!しかもいかに大国アンゼルセンと言えども、もう軍は疲弊し、残された強者もたかがしれている事でしょう。ここまでくれば我々に敗北など有り得ません!」


魔王軍はまさに快勝ムード、カイゼル達のみならずほとんど全ての魔族が自分達の勝利を疑ってはいなかった……。


魔王カイゼルが率いた魔族達は人類の数ある大国、強国を次々と陥落させ、そのほとんどは最早抵抗することはできず魔王カイゼルの支配下に収まっていた。


人類最後の大国と言われているアンゼルセンも多くの土地を支配し力を増大させている魔族にとってもはや一国ではどうしようもなく、とんでもない力の差が生まれていた。


人類の明日は滅びへと進むだけに思えた。




そこへ、1人の伝令の魔族が慌てて入ってきた。


「魔王カイゼル様!至急の伝令です!突然の謁見失礼致します!」


「どうした?そんなに慌てて、今更人間共にたいした反撃など出来まい?それともまた魔貴族どもが自分の利益を求めてなにかしでかしたのか?」


カイゼルはやや眉をひそめながらその伝令に問うた。


「いえ、魔貴族の方々でも人間共の反撃が激しくなったなどではないのですが、とても無視する事のできない情報が入りまして、至急魔王様のお耳に入れるよう指示を受けました!」


「ん〜?人間共の反撃でも魔貴族でもなく、この戦況で俺様の耳に至急入れなければならない情報だと?まぁいい、許す。話してみよ。」


「ハッ!それがアンゼルセンに潜り込んでいた密偵の報告によりますと、奴ら古代の秘術を持ちいて、我らを殲滅する力を持った異世界の勇者を召喚したようなのです。」


「なに〜?異世界の勇者だと?いったいそれはどのような存在だ?」


「申し訳ありません!詳しくはまだ情報が集まっておらず、しかし、その異世界の勇者を召喚した人間共の様子の報告を受けた四天王のカブラ様が、一様警戒をしておいた方がよろしいと至急魔王様に連絡するように仰せ使いました。」


「ふむ、カブラの奴がそう判断したか。ならばその異世界の勇者を召喚した人間共の士気はそれだけで相当高くなっているという事だな。ディアナよ、お前はその異世界の勇者とやらについてなにか知っているか?」


一通り伝令の情報を聞いたカイゼルは隣りの頼れる副官に問うた。


「申し訳ありませんカイゼル様、私もその異世界の勇者とやらの事は詳しくは知りません。しかし、昔読んだ古い文献で【勇者】と呼ばれる者の事を少し見た記憶がございます。少しお時間を頂いてもよろしいでしょうか?」


「ふむ、よかろう、調べてこいディアナ。どうやら我ら魔族の側にはその異世界の勇者とやらの事を詳しく知るものは現在いなさそうだ、博識なお前やカブラが詳しく知らないのであれば念の為調べておくに越したことはなかろう。」


「ハッ、では少々席を外させて頂きます。心当たりはありますので明日にでも少しばかりは情報が集まるかと、それと、カブラ様とは別口で私の配下にも詳しい情報を探らせてもよろしいでしょうか?」


「許可する、カブラの奴もそれくらいで文句を言うようなら中途半端な情報を寄越しては着まい、全力を持ってその異世界の勇者の情報を集めよ。」


「かしこましました。それではさっそく情報を集めて参ります。」


そういってディアナは玉座の間を伝令と共に出ていった。


残されたカイゼルは1人思考に暮れる……。


[カブラの奴があやふやな情報をわざわさ寄越したという事は、この戦況でも盛り返せる戦力かもしれぬと言う事か?やっと世界が俺様の物になりそうな状況でこの流れ、何事もなければ良いが……。]


未知なる人類の脅威、その可能性に魔王カイゼルは少しばかり不安になるのであった……。



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