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2話 彼女と彼女と僕

「ん、ここは……?」

「リンちゃん、起きた?」

「ふぁっ!?」


 起きたら目の前に美女がいた。


 黒くて艶のある長い髪、眉毛の辺りで切りそろえられた前髪、目は若干垂れ目で優しそうな印象がある。

 それに体型はまさに世の男達の理想を体現しているかのようだ。

 つまり出る所は出て、引っ込むところは引っ込んで、といった感じだな。


「ふむ、なるほど。夢か」


 夢なら遠慮は要らないな。思う存分その大きな胸を……と思った所で思いとどまった。

 これはあれか、神ちゃんの言っていたとんでもない美女の一人か?

 それならPLATONICにいかなくてはいけない。


「どうしたの?」


 目の前で小首を傾げながら心配そうに見つめてくる彼女は……。


「大丈夫だよ、アイリ」


 どうした事か、俺はこの世界にきて間もないというのにこの世界の事が分かる。

 いや、それどころか俺が過ごしていないはずの歴史が記憶の中にある。


 そう、アイリは幼馴染だ。

 小さい時からいつも一緒に居た。

 一緒に野山を駆け上がり、一緒に湖を泳ぎ回り……うわ、お互いに裸だったんだな。

 それに……一緒に村を飛び出した。


「そっか、俺は木を集めている所で気を失ったんだっけ」

「思い出したの? 良かったぁ」


 心底安心したといった感じでホッとするアイリがたまらなく愛おしい。

 これは幼い頃からの記憶が一気に流れ込んだからか?


「森で気を失ってた所をミュウちゃんが見つけて運んでくれたんだよ? もう、無理しちゃダメじゃない!」


 めっ、といってアイリが俺の額を人差し指でつんと押す。

 これはPLATNICの範疇だよな?さすがに接触が禁止じゃおちおち近づけないし。


「あれ、ミュウは?」

「リンちゃんが残してきた木を拾いに行ってるよ。後でお礼言ってよ?」

「お、おう。そりゃもちろん」


 ミュウは元冒険者だった。

 魔物の不意打ちを受けて、傷ついていた所を俺が助けたのが馴れ初めだ。

 それから俺の事を運命の人だと思ったらしく、ずっとついてくるようになった。


「お、リンは起きたのか」


 丁度ミュウの事を考えていたら本人が登場だ。

 こういう事ってよくあるよな。

 ミュウは木を運んで一仕事したからか額に少々汗をかいている。

 金髪のショートカットで、サバサバしたミュウはまさに元気そのものという印象だ。

 胸の方はないけれどそれはそれで……分かるよな?


「お? なんか変な事考えてなかったか?」

「いやいや、滅相もない」

「ふーん、ならいいけどさ」


 ミュウはこんな感じでさっぱりとした性格をしていた。

 だからこそなんで俺に執着しているのか自分でも分からない。


「あっ……」


 気付いたらベッドに倒れ込んでしまった。

 過去十何年分の記憶が一気に流れ込んだからか脳がオーバーヒート気味のようだ。


「あれ、リンちゃんってばまだ調子悪いんじゃないの?」

「そうだそうだ、後はオ……私達に任せて休んでおけよ」


 アイリは心から心配そうな顔をしている。

 ミュウは……俺って言い掛けなかったか?俺としてはそれでもいいと思っているけど最近は私、と自然に言えるように努力をしているらしい。


「あ、ダメだ……体に力が入らないや」

「いいよ、ミュウちゃんの言う通り、あとは私達がやっておくから」

「そういう事、リンよりオ……私の方が力持ちなんだから安心しておけばいいぜ」


 そういって二人は各々の仕事に戻っていった。


 仕事、といっても賃金を貰えるようなものではない。

 俺とリン、そしてミュウで街からちょっと外れた森の中で開拓をしているんだ。

 まぁ俺が甲斐性なしだったみたいで三人で住めるような大きい家は郊外も郊外、街から外れまくった森の中しかなかったって理由みたいだけど。


 それでも三人仲良く暮らしていた。


 木を切って、乾燥させて薪にして。

 食事は森の恵みである山菜、きのこ類、それに果実を頂く。

 たまに鳥や猪なんかが出た日はミュウが軽く仕留めてその日のご馳走になる。

 近くには川もあるし、立地と防犯さえ気にしなければそれなりに良い物件かもな。


 確かパンの材料を街の奥さんに分けてもらったから今日はサンドイッチを持って川の近くで食べようっていう話をしていたような……。


「うん、確かにそういう話してたけどリンちゃんが元気になってからにしよ?」

「そうだぜ、みんなで楽しくがわ……我が家(・・・)のルールだろ」


 どうやらミュウはまだ自分達の家というのを意識するのがちょっと恥ずかしいらしい。

 俺とアイリはずっと一緒だったからなんていうか良くも悪くも"家族感"があるんだよなぁ。


「お言葉に甘えて今日はゆっくりさせてもらうよ。ピクニックは明日……行こうな」


「ピクニックじゃなくて畑の……ってもう寝ちゃった」

「はは、リンらしいじゃねーか。オレ達は明日に備えて明日の分の仕事も終わらせちゃおうぜ」


 まだギリギリ聞こえてるよ……やっぱり俺がいない所では自分の事をオレっていってるのか。

 そりゃ直らないわけだ。でもそのままが一番良いと思うけどな。

 ああ、ダメだ……もう我慢できそうにない。


 おやすみなさい。

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