表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
この男の娘、最強につき  作者: タロイモ
4/5

出会いは唐突につき

 此方は前三つに比べると短い内容となってしまいました。

 ご理解のほど宜しくお願い致します。


 グールジェネラルと出会ったのはあれが最後では無かった。あの後、度重なる〝肉塊〟の襲撃により、リオは数えるのも馬鹿らしい程グールジェネラルを屠ることになったのだ。そのどれもが塵も残さぬくらい切り刻まれており、彼が通った後には何も残らなかった。


 そうして撃退していると、いつの間にかここにきて三時間も経過していた。


 幾ら一瞬でケリがついたとしてもその度に立ち止まり、進化の時を待ち、身体に魔力を流して、という作業を繰り返しているとどうしても時間を食ってしまう。


 しかしながら、そんな面倒な労力のお陰か漸く最深部に到着したリオは、ボスの間と思われる大きな扉の前で佇んでいた。


「でっかいなぁ。何でここだけ天井高くなってんだろ。物理的にどうなの、これ」


 彼の見上げる扉は、巨人でも通るかのように高く横幅もあり、人一人では開けられないくらい大きなものだった。

 この扉の前だけ少し開けており、他の通路より天井が高くなっている。だが、此処に来る前の階層――地下十九階のこの部分は特に段差があったりなどは無く、只々他と同じく薄暗い通路と幾重にも存在する部屋があるのみだった。


(やっぱりダンジョンで正解だったっポイね)


 そう考え息を吐き出したリオは、地下に居りてきた時にも感じた何かが自分を通り抜ける感覚に陥りつつ、目の前の重厚な扉へと両手を宛がった。


「よっこい――――しょ?」


 力を入れ、更には全身を魔力強化して両引きの扉を押す。しかし、帰って来たのは凄まじい重圧などでは無く――普通の扉を押したときと同じ感覚。

 無駄に力を入れていた事になるリオは、その勢いのまま前方へとつんのめってしまい、鈍い音を立てて頭から地面へと突っ込んでしまった。

 凄まじい衝撃に目を回してしまうリオ。頭上には沢山の星が飛んでおり、その姿はグールジェネラルとの連戦時以上のボロボロさである。


 実はあの大きな扉。全て開くものではなく、ほぼ九割が飾りだったのだ。丁度リオが手を着いた場所に同じ見た目の扉が取り付けられていて、普通に開けることが出来るといった仕様だったようだ。

 しかし、そんなもの見ても分からないのはリオも同じであり、現在に至るわけだが。


 そんな間抜けを晒すリオの元に一つの人影が――。


「だ、大丈夫……なの?」


 依然目を回すリオに答える余裕などない。

 心配そうな表情を浮かべた影――女性は、リオの傍でしゃがみ込むとうつ伏せに倒れていた彼を勢いよく引っくり返し、頬をぺちぺちと叩き出した。そのスピードは徐々に速くなっていき。


「……でっ……いでっ……い――いだだだだだッ!」


 意識を取り戻して尚止まることは無かった。


 手の残像が残るほど高速でビンタを繰り返す女性の腕を、リオは決死の想いで掴み取りなんとか難を逃れる事に成功。

 両頬が面白いくらいぱんぱんに腫れあがったリオは、眉根を寄せキッと女性を睨みつけた。その瞳には何の目力も宿っていないが。


「な、なにする――――んだ……」

「ご、ごめんなさいなの」


 しかしその勢いは瞬く間に収束していき、リオの瞳は大きく見開かれることになる。何故なら彼女がこの世のモノとは思えない程整った容姿を――ではなく、零れんばかり胸を白装束から――ではなく、むっちりとした太ももが――でもなく。全身が真っ青に染まっており、肩口まで伸びている髪の毛の先端が――青い炎(・・・)で燃えていたからだ。


 確かに一瞬彼女の優し気な垂れ目に涙黒子、ぷっくりとした唇を見て、リオの心臓が高鳴りはした。しかし、それ以上にリオの脳内を埋め尽くしたのは――。


「イヤァッ!! おば、おばおば、おおおおお化けェ!」


 彼女が〝この世の生物〟だとは思えないという考えだった。


 先程は頬を叩かれて頭に血が上っていたから気が付かなかったが、リオが掴んでいる彼女の腕は霜焼けしてしまいそうな程冷たい。

 更には掴んでいる筈だというのに若干後ろが透けて見えるし、何より頭髪が燃えているというのはこの世界で〝幽霊〟というアンデットとは違った生物を表す代表的なポイントなのだ。


 基本的に怖いものなしのリオであるが、幼い頃修行の一貫と称して〝師匠〟から幽霊屋敷に監禁された事がきっかけでトラウマ(・・・・)となってしまっているのだ。物理的に攻撃が効かないというのは、幼きリオにとっては恐怖以外の何物でもなかった。


「え!? お、お化けなの!? どど、どこ!? どこどこッ!?」


 我を忘れて竦み上がるリオに、何故か一緒に慌て始める女性――否、お化け。


 もう訳が分からないと昇天しそうになるリオだったが、慌てふためく女お化けが泣き叫び、勢いのまま彼を胸元に抱きしめたのをきっかけに、リオの意識が覚醒した。


「あばば――ぷはっ! な、何するんだよ!」

「嫌ッ! お化け! どこ!? お化けッ!」

「いやいや! お化けはアンタ――ぶほッ」


 何とか引き剥がし、彼女と一定の距離を取ったリオだったが、恐慌状態に陥った彼女の力は予想以上に強かった。リオの力など物ともせず、そのまま先程の倍以上の勢いで自身の胸元にリオをプレスする。

 そのあまりの衝撃に鼻が折れたと錯覚してしまったリオは、内心(お化けでも、女の人の胸で眠れるのは……本望なの、か)などと思いつつ、度重なる顔面への衝撃に気を失ったのだった。


   *********


 お化け騒動から一時間と少しが経過した。


 復活したリオが最初に見たのは青い肌――否、白装束をはだけさせあられもない姿を晒すお化けのお姉さんだった。

 その衝撃は十三歳の少年にとって凄まじいものだったらしく、一〇分近く鼻血を流していたのは彼が墓まで持って行こうと決めた秘密である。しかし、そのおかげかリオの中でこの女性に対しての恐怖心が和らいだのは不幸中の幸いと言えるだろう。


 それから鼻血が止まったリオは、目を瞑りながら女性の恰好を整えてやり、先程のお返しとばかりに往復ビンタで目覚めさせたのだった。


 ある程度状況説明が終わった二人は、薄暗い一室――ボスの間で恭しく正座をし、お互いに頭を下げ合っていた。


「いやいや! 此方こそ、住居を勝手に荒らしてしまいすいません……」

「いえいえ! 此方こそ、変な噂を垂れ流しにしていて申し訳ないの……」

「いやいや!」

「いえいえ!」


 幾度となく繰り返した謝罪合戦。その馬鹿らしい光景をお互いが理解したようで、ピタリとやんだ譲り合いコールの後、両者視線を絡めては恥ずかしそうに笑い合った。

 

 その光景やたるや、お見合いでベストパートナーを見つけた初心な男女のようにほんわかとしており、此処がダンジョンであることを忘れてしまいそうになる。


 頭を掻いていたリオは両手を膝元に置き、すりすりと擦っては口を開いた。


「あーっと……でも、あれですよね? 噂に関しては、仕方がないとしか言いようが……」

「まぁ、そうなる、の?」


 可愛らしく首を傾げたお化け女――アカネ・カシワギに思わず赤面してしまったリオは、又しても俯いてしまう。そんな彼を鏡写すように、青白い肌をほんのりと染めたアカネも視線を下に降ろした。


 この謝罪合戦に至る前、二人はお互いの事について話し合っていたのだ。

 リオはこの幽夢の館についての噂を暴きに来たという事を自己紹介と絡め話し、アカネは――。


 最後までお付き合い頂き有難うございます!

 引き続き「この男の娘、最強につき」を宜しくお願い致します!

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ