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朝から彼は今まで狩った肉を全部焼いたり燻製にしてしまう作業をしていた。少年を生きたまま持っていくことをきめてしまった以上、おそらくこれに食べさせなければ後からぶつくさ文句を言われそうな気がした。
それと、そろそろこの小屋から出なければならない気がした。
少年はそのまま縄で縛っておいて、しかし目を離したすきに逃げるかもしれないので今度は外の柱に括り付けて作業をした。小便がしたいとか糞をしたいとか言い出せば彼自身の手首と少年の手首を長いロープで縛ってつないだ。この間に少年が逃げだすのではないかとも思ったが、不思議なことに少年は戻ってくるのだった。彼はかしこいヒトのこどもだなと思った。
あらかた肉を加工すると、まだ水分が抜けきっていないものだけひもでかたい竿状の枝に括り付けた。しっかりと乾燥しているものはまた新しいビニール袋を取り出しその中に入れ、いくつかを食事にして少年と分け与えて食べた。いちいち少年がヒト肉かどうかを聞いてくるので、そのたびに少年に言い聞かせて、ちゃんと調べてヒト肉を渡さないようにした。もし渡してしまえばおそらく怒鳴って暴れるだろう。
作業が終わった後荷物をまとめ始めた。ランプや布、毛皮、調味料など生活に必要なものと、壊れた携帯や衣服など狩りに必要なものの大きく二つに分けてそれぞれ新しいビニール袋に詰め込み、一つを少年に持たせることにした。少年が不満を言うので、重いほうの生活品袋は自分で持ち、衣服のほうが軽かったので少年にそちらを持たせた。
昼には整理が終わって小屋もきれいに片付いた。彼は少年を連れて沢まで行って水を飲むと、そのまま民家があるほうとは逆の方向に向かっていった。
「どこまでいくんだよ」
「ごはんがおいしく食べられて、水が飲めて、寝られるところ」
「そんなのどこにあるんだよ」
「知らないよ、これからさがす」
彼はフードを深くかぶって体の皮膚をすっかり覆って、少年を引っ張りながら山の奥深くへと歩いて行った。たぶんもっと南のほうに行けばこれからは少しは暖かいかもしれない。少年の事は旅をしながら考えていけばよいだろう。
彼は背伸びをして大きく息を吸い込むと、どんどん山を登っていった。少年はぶつくさ文句を言いながら、彼のあとについていった。