第八話「妖夢VS悪霊 ~博麗神社にて~」
半人半霊の剣士、魂魄妖夢は博麗神社の入口にいた。
「やはり、ここからか」
レミリアを紅魔館に帰してすぐの事だった。
この辺りから、邪悪な気を感じ取り、一日半を掛けて博麗神社まで来たのだ。
博麗神社の主である博麗霊夢の生死は分からない。
おかしいのは、邪悪な気の中に、博麗霊夢の気も混じっているということだ。
悪い予感がする。
妖夢は、刀の柄に手を添えたまま賽銭箱の近くまで駆けた。
そこには、紫のオーラを纏う、紅い瞳の霊夢がいた。
だが最近見かける悪霊に憑りつかれた者とは、気が何倍も違う。
「待チワビタゾ、我ガ敵ヨ」
声は霊夢だが、口調はいつもと違い、しかも無表情だ。
「悪霊、お前もここまでだ。
お前を倒しに向かっている奴らが三人いる。
だがその前に、私がお前を倒すッ!」
妖夢は刀、楼観剣を鞘から抜き、霊夢に向けた。
「フフ。笑止。
己ガ分際ヲ弁エヨ。小賢シキ幽霊ヨ。
ソノ程度ノ力デハ、悪ソノモノニ及バヌト知レ」
霊夢の声の中に、別の声が混じっているようにも聞こえる。
次の瞬間、霊夢は両手を広げた。
紫の気が、更に強くなり妖夢を襲う。
「ぐっ・・・・・・。
はァァァァァァッ!!」
次の瞬間、妖夢は光の速さで駆け出していた。
スペルカードによる斬撃技、人符『現世斬』。
霊夢に接近すると同時に、神速の斬撃を何度も繰り出す。
勿論、殺すつもり無く、掠り傷を与えたつもりだが。
霊夢は斬られた瞬間、ヒュンと消えた。
「ソレハ残像ダ」
――――!?
霊夢の声が、後ろから聞こえた。
霊夢は妖夢の真後ろにいる。
それに対応出来ず、霊夢は片手を妖夢に向ける。
何も言わずに放たれた技は。
霊符『夢想封印』。
七色の光を放ち続けるという技だ。
近距離で放たれれば防御不可能な技に、妖夢は賽銭箱まで吹き飛ばされた。
◇◇◇
一時間が経っても、妖夢は霊夢に一太刀を浴びせることすら叶わなかった。
「強いわね・・・・・・。ならッ!」
妖夢のスペルカード技・六道剣「一念無量劫」。
八芒星の形をした斬撃を一瞬にして、自分の周囲に繰り出し。
剣閃から楔弾が一斉射出した。
対する霊夢の使った技は。
「悪霊符『断罪撃』ッ!」
悪霊に憑りつかれている霊夢は、右手を天高く掲げた。
自分に向かって降り注ぐ闇色の光と共に、宙に一つの何かが出現した。
霊夢の身長と同じくらいの、それは。
「あれは、剣・・・・・・?」
大剣だ。
闇色の十字の鍔と、同色の太く長い刀身。
その大剣は今、巨大な闇色の弾丸を作ろうとしていた。
夢想封印にも似た、闇色の弾丸。
闇色の光は、妖夢に向かって降り注ぎ。
それは妖夢を吹き飛ばすのではなく、妖夢の動きを封じた。
「くッ・・・・・・」
霊夢の目が再び、紅く光ったその時。
大剣は、何度も旋回しながら、妖夢の心臓を目掛けて飛んできた。
その剣は、妖夢の体を分断せんとばかりに、大きな穴を穿った。
ほぼ真っ二つに自分の体を斬られたような痛みを感じてから、その剣は消滅し。
妖夢はそのまま、意識を失った。