第七話「緑ローブとの死闘 そして正体」
永遠亭で治療を終え、旅を再開した私達。
次の目的地である香霖堂に向かって、現在歩いている。
魔理沙曰く、そこで緑ローブの女性が待っているという。
それにしても、緑の木刀とクールな顔立ちってあいつくらいしかいない気がするんだが・・・・・・。
多分ヒロと私以外にも幻想入りした奴がいるのだろう。
大体正体分かるけど。
まあ、奴にあったら知らなかったフリでもしてやろう、などとブラックな事を考えている内に。
建物が見えてきた。
瓦屋根の目立つ和風の一軒家。入口はドアで、窓は障子というおかしな組み合わせ。
桜の木が一本生えているらしい。
魔理沙の情報では、ここは幻想郷で唯一外の世界のモノが売られているそうだ。
そして、建物に近付こうとしたその時だ。
「待ち侘びたぞ。異世界の銃士」
まるで死神のように、何もない空間から緑ローブは突然現れた。
腰の柄から木刀を抜いたその時、強い風が私に向かって放たれる。
スペルカード技ではない。
スペルカードは一部の技を除いて、吹き飛ばされる以外の効果を持たない。
だが今の風は明らかに、顔に傷を作り、服の一部を裂いた。
スペルカード使用状態にしたエアガンの銃口を向け、口を開く。
「随分派手な挨拶だな、お前」
「ふっ。この程度で怖気づいたか?」
いやお前らがよくやってることだから今更驚かねえよ?
多分彼女は正体を隠したがっていることだろうから、私は取り敢えず大嘘を吐いておく。
「ああ、ちょっとな。その風の刃、本気の奴が来たら死ぬかもな」
まあ死なないけど。
「ふっ、ただの人間にしては理解が早いな。
その通りだ。吾の手に掛かれば、貴様ら三人を物言わぬ肉塊にするなど容易いことだ」
「は、はぁ・・・・・・」
そして緑ローブは、木刀を三度振ってから言う。
「吾、この幻想郷に焦土の世を欲する也。鳴かぬなら、滅してやろう、杜鵑」
某実在していた第六天魔王よりひでえな。
「そう簡単に死んでたまるかよ。私は元の世界に帰らなきゃいけねえんだ。
悪いが、倒させてもらうッ!」
私は言い終わると同時、引き金を引く。
霊符『銃弾之星』。
銀色に輝く星の弾丸が、一直線に緑ローブへと飛んでいく。
勿論銃弾之星の飛ぶ速さは実弾銃と同じレベル。高い反応速度を持つ者にしか、回避も対策も無意味。
だが緑ローブは。
木刀と真剣の二刀流で、それを容易く捌いた。
「やるな」
こんな動きが出来るなら、多分あいつしかいない。
あいつは淀子姉さんよりは強くないが、私よりは確実に強い。
故に、弾丸すらも切り裂ける。
「つーかやっぱり、改めて思うわ。
私の周りの連中、組めば世界滅ぼせる気がするわ」
などと呑気な事を言いながら、三度引き金を引く。
星の弾丸を容易く切る緑ローブ。
死神の如く、素早い動きだ。
「緑ローブ! 私もリベンジさせてもらうぜッ!
行くぜ、マスタースパークッ!」
七色に輝く雷が、魔理沙の両手から放たれる。
緑ローブはそれも斬り、私目掛けて飛び掛かった。
「初ッ!」
その攻撃を、ヒロがスペルカード用の刀で受け止める。
「『弾銘斬波』ッ!」
ヒロのスペルカード技。
ヒロの持つ刀から、刃の形をした光が一直線に放たれた。
「ぬゥッ!」
ヒロの放った光刃は緑ローブの一振りによってかき消されたが、彼女の被っていたフードが風で捲れた。
フードに隠されていた顔は。
緑掛った黒い長髪。普段は緑の、紅い鋭い瞳の整った中性的な顔。
これで確定だ。
「やっぱりお前か、江代」
「貧乳の銃士・・・・・・。よくぞ我が正体を見破ったな」
「待ってろよ江代。今目を覚まさせてやる」
私は銃口を江代に向ける。
一方江代は、木刀を鞘に収納し、真剣の方の柄に手を掛けた。
確かに江代は、私以上に強い。
だが。
姉が負けるわけには、いかねえよ。
「うおおおおおおおおッ!」
凄い雄叫びの後、江代は刀を抜いた。
私を殺すつもりの、全力の抜刀。
剣に当たっても、江代にダメージは入らない。
顔に当てて吹き飛ばすしかないッ!
「はァッ!」
銃口から、星の弾丸が放たれる。
抜刀術に集中している江代は、それに気付くことが出来ない。
故に今なら、当てられる。
星の弾丸は、江代の顔面衝突と同時。
破裂し、江代を吹き飛ばした。
◇◇◇
少し時間が経ち、江代は起き上がった。
「わ、我は何を・・・・・・。何故このような身なりを・・・・・・?」
緑のローブのローブを脱ぎ捨て、いつもの服装に戻ると、私を見るや否や。
「貧乳の銃士、貴様ここにいたのかッ!
赤の姫も、我らの創造主たる父母も心配しておったぞ」
「お、おう・・・・・・」
「吾も貴様を探していたのだが、その途中穴に落ちてしまったのだ。
気付けば幻想郷にいて、吾は何者かに操られてしまった」
江代は真剣を捨ててそう言う。
「ま、今回は許すわ。江代、一緒に博麗神社に行こうぜ。
そして帰ろう、家に」
「言われなくともそのつもりだ。貧乳の銃士」
「名前で呼べ。名前で」
さてこれから四人で再び博麗神社に向かおうとしたが。
ヒロが言う。
「なあ、初」
「なんだ、ヒロ」
少し俯いてから、ヒロは言う。
「俺は思ったんだ。ここで色んな出会いをして、色んな興味深い事を沢山経験した。
だから、俺はもう少しここで生きようと思う。
孰れは帰るけど、今すぐにではない。
だから、一旦ここでお別れだ」
ヒロは意思に満ちた目をしていた。
私はそれに対して、
「そうか・・・・・・。分かったぜ、ヒロ。
また会おう」
「ああ。まずは無縁塚に行こうと思う。
じゃあな、初。またゲームしよう」
こうして、ヒロと別れ。
私達は魔理沙と江代の三人で、香霖堂に入店した。