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競馬狂騒曲  作者: 真北哲也
不屈の固まり、諦めない気持ち
7/12

キングスハロー 中

キングスハローの父馬は80年代欧州最強の声も高いダークインディアン、母馬がカンザスオークスなど米国のG1を9勝した名牝ハローアゲインという世界的な良血馬であり、相当の期待馬であった。


父馬のダークインディアンは八重桜賞 (G1)を優勝するトップマーチなどを出していたので、自然とこのキングスハローに注目と期待が高まっていた。 キングスハローはとても力強い栗毛を身に纏っており、見た目もとても美しかった。 競馬関係者は口を揃えて「日本最強の馬が誕生!!」と言った。


デビュー戦の3歳新馬戦を軽く勝利を収め、 続く500万円以下のレースも勝利!その勢いに乗ってゴールデンS (G3)に出場。 結果は二着馬から五馬身を着けての圧勝であった。 デビューから3戦3勝! 「今年は無敗のダービー馬が出るぞ」と、ここでも競馬関係者は高らかに唄った。


そして、クラシック三冠の最初の登竜門である五月賞 (G1)に出場。 一番人気を獲得しての出走であった。 だが、ここでキングスハローは三番人気のハイパーデーに追い抜かれてしまいの二着。 ここで連勝記録はストップして初の黒星。


…… ここから良血馬のキングスハローの運命は徐々に狂い始める……


五月賞では惜しくも敗れてしまったが、続く全日本ダービー (G1)に出場。人気は前回の五月賞での惜しい着順であったので、ここも一番人気を集めた。 だが、 まさかの七番人気のカスタムフリクションの物凄い大逃げにキングスハローは着いていけず、16頭中の16着で大惨敗。続く、三冠クラシックレースの最終戦である、 大菊賞 (G1)に参戦。 競馬ファンからは 「五月賞、 大日本ダービーは逃したが、 この最終レースはきっと勝ってくれる!」と、信じられての一番人気の支持を獲得した。レースは当馬キングスハローはジェリーパールを先に逃げさせての二番手先行から幕を開けた。 陣営は「先行からでスタートします!」と宣言しており、その予告通りに二番手をキープしての走りであった。向こう正面のストレートも難癖を着けることもなく、二番手だったが、するすると降着をしていった。 見ていた観客達も呆然としていた。 あれ、おかしいぞ? 気がつくと、 逃げ先行のジェリーパールがまんまと逃げきり優勝。 キングスハローは一番下13着の惨敗であった。


この2つの重賞 (G1)を逃してしまい、キングスハローの人気は一気に下がっていってしまった。 良血馬なのになんで勝利を掴めない …… 期待して損した… と。


そして、キングスハロー陣営も同じよう悩みに頭を抱えた。何故勝てない。 調教や作戦は完璧だったはずなのに ……


その後にキングスハローは、毎月新聞杯、 天王賞(秋)、 マイルトップシップなどの重賞レースに参加するが、 全てが三着にも満たない結果に (上から四着、六着、七着) その後の重賞レースも良い結果を残せる事は出来なかった。


もう、過去の栄光と名声は何処へやら …… キングスハローは競馬ファンからも見捨てられる競走馬になっていった。だが、 その諦めの悪い馬に何となく声援もあることは事実であった。


古馬になって、参戦したのはスプリントステークス(G1)である。 距離は1200mの短距離走である。 キングスハローの体型は、胴回りが、どっしりとしていたので、 中距離(マイル)向き。 それなのに短距離(スプリント)に挑戦してきたのである。 競馬ファンは「またG1に出ているよ、キングスハローのやつ」 「短距離走を走れるのかよ? もうG1は無理だ!取れない」と、酷評を送った。 キングスハロー陣営は、なんとかG1を取らせたい!と、形振り構わずこの短距離走を選んできたのだ。 (ちなみに人気は六番人気だった。)


そして、運命の決まるスプリトステークスがスタートした。 キングスハローは、前回の様な「先行のスタート」を封印して落ち着いたスタートを切った。短距離走なので、一気に逃げる馬などがいたが、キングスハローは不気味に先頭から四番目の位置で、ずっと最終コーナーまでをそのペースで終えた。 そして、最終直線に突入した。 ここまで、見ていた競馬ファンは「ここあたりでスピード落ちて下がる! キングスハローは。」 「ここまで良いんだよなぁ。 馬券買ってなくて良かったわ」など、敗色を極めていた。


だが、キングスハローは今までとは違った!!


内側に綺麗に並んでいたが、 キングスハローは外側に飛び出して、 前の三頭をごぼう抜きを演じた! その時の末脚は父馬であるダークインディアンを思わせる驚異的なスピードであった。キングスハローは勿論、1着でゴールしたのである。一瞬の出来事にその競馬場に静けさが出た。そして、歓喜の声が何十倍にもなって沸き上がった。


「やった!キングスハロー! 悲願のG1制覇だ! 」


「お前こそが欧州最強のダークインディアンを父に持ち、 米国で伝説を持つハローアゲインを母に持つサラブレットだ!」


さっきまでの酷評は何処えやら ……


キングスハローを担当していた調教師も 悲願のG1制覇に感極まって、その場で号泣をしたと言う。


それを感じたのだろうか? 競馬場の観客は 「キングスハロー! キングスハロー!」と何度も歓喜(コール)を送ったのであった ……

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