下
「「かんぱーい!!」」
その掛け声と共に、一斉にグラスをぶつけた。
僕達二人は焼肉屋にいる。店内は薄暗い照明が照らされて、 沢山の客がグリルの上に踊る肉に夢中になっている。
ビールを一気に飲んだ先輩が口を開いた。
「いやー、 まさかの結末になったなぁ! こんなことなんてあんまりないぞ! 」
「僕もビックリしてます! これは奇跡ですよね!」
話を数時間前に戻そう。
―――。
ターフビジョンに踊る、 「審」と言う文字を二人でぽかんと見ていた。
「先輩! 審ってなんですか?!」
「 審議だな。 何か不具合が合ったときに主催者がパトロールカメラとか確認する。 …… 多分、 1位がどちらなのかを判定してると思うよ。」
先輩の言葉を聞いていたら、アナウンスが流れた。
【お知らせ致します。第11レースは、審議を行います。 3番のリュウセイヒカリ号と12番のサナエキタル号の決勝線通過について審議中です。なお、上位に入線した馬が審議の対象ですので、お持ちの投票券は、確定までお捨てにならないようご注意下さい。】
ターフビジョンにも【お持ちの投票券はー】と、写し出されていた。
「うーん…… どうなるんだろうな…… こんなことって珍しい。 こうなると結構時間かかるぞ。」
「ですよね。一着がどちらになるか…… 」
それから、僕達は馬券を握りしめて待ち焦がれた。
20分ぐらい待っただろうか?
再びアナウンスが鳴った。
【お待たせ致しました。第11レースの審議についてお知らせ致します。3番のリュウセイヒカリ号と12番のサナエキタル号の決勝線を入線についての審議でしたが、 写真判定とタイム計測の参考の結果
……】
僕らは食い入る様にアナウンスに耳を集中した。
【 …… 二頭の同時の1着と判定します。】
アナウンスの終わりと共に競馬場はどよめいた。 まさかの二頭同時1着!
ターフビジョンに赤地に【確】と出た。僕らは舞い上がりながら、 払い戻し器に足を向けるのだった。
先輩の払戻金は一番人気だったので、それほど倍率は高くは付かなかったが、 僕の方は結構な額になった。 10番人気が1着は相当なものだった。 先輩は興奮しながら、 「お前の奢りで飯でも食いに行こうぜ! そうだな、焼肉と酒飲みたいな! 」と、言われたので、一旦、 自宅に車を置いて、この焼肉屋に来たのである。
―――。
「本当に珍しいぞこんなことってさ! 今日はサナエに振り回される一日だったなぁ!」
先輩は顔を赤くしながら、 ビールと焼肉を頬張った。
「初めての競馬がこんなことになるなんてビックリしてます! さぁ、じゃんじゃん食べてくださいね。サナエキタルと早苗さんに感謝ですよ!ははっ!」
僕は鉄板に肉を敷き詰めていく。 嬉しくて嬉しくて、 注文もばんばんしていった。
先輩の言うとおりに今日の競馬は【サナエ】に振り回される日であった。
逃げるリュウセイヒカリをサナエキタルが追いかける。
逃げた先輩に早苗が追ってくる。
僕は心の中で笑ってしまった。
肉を敷き詰めた鉄板から先輩を見たら、 神妙な顔つきになっていた。 何かしたのか? 食べていた肉が生焼けだったのか?
気になって声をかけた。
「先輩どうかしたんですか?」
「いやな、 肉食ってるじゃん俺達さ。 牛肉とか豚肉とかさ ……」
「? 」
何が言いたいのだろうか? 僕は再度尋ねた。
「本当にどうしたんですか?」
「シーフェスタって言う競走馬が昔いたんだよ …… その馬の事を思い出したら …… ちょっとな。」
シーフェスタ
僕はおもむろにスマホで 【シーフェスタ 競走馬】と、調べ始めた。
ここまで作品を読んで頂きありがとうございます。 【競馬狂騒曲】はここで終わりにしたいと思います!
…… 歯切れの悪い終わりかたですかね?(笑) 実は、評判が良かったら、つづきを書きたいと思っています! 物語のつづきのキーワードは「シーフェスタ」と言う馬です。 この馬のモデルは「ハマノパレード」という実際した可哀想な馬です。つづくのかな?