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競馬狂騒曲  作者: 真北哲也
早苗とサナエキタル
2/12


【12番のサナエキタルは出遅れましたが、 他の馬は上手くスタート出来た模様です】


アナウンサーの声を聞きながら、 今、 先輩が言った問題発言に僕は驚いてしまった。


「先輩! それって、 本当ですか?! 早苗(さなえ)さんと仲良かったじゃないですか!」


「 まぁ、ちょっと喧嘩してしまってな。 いつもなら直ぐに仲直り出来たんだけど、 今回の喧嘩はそうとう早苗(さなえ)が怒ってしまって …… 別れたよ。」



早苗(さなえ)さん……


僕は一度、 先輩から紹介されたことがある。 先輩が「こいつが俺の彼女の早苗だ。」と、 照れながら紹介してくれた。


「はじめまして、こんにちわ!」


明るく挨拶をしてくれた。僕が見る限りでは、 とても美しく、 言っては悪いが、 がさつな先輩には勿体無いような人であった。


そんな、 美しい彼女と別れてしまうなんて ……


「いつ別れたんですか?」


「 二日前だ ……」


先輩はそこまで言うとターフビジョンの方に視線を戻した。


先輩の横顔はとても淋しい顔をしていた。 回りの観客からはガヤガヤした声が上がり、 ターフビジョンの競馬に熱を上げていたが、 そんなことに気にもせずにずっと、 先輩は画面を眺めていた。


【各馬一斉に第1コーナーを通過! 第2コーナーに差し掛かります! そして、向こう正面に流れる。 折り合いは付いてるか? では、順番を整理しましょう。 今、三馬身の差を着けて三番のリュウセイヒカリがトップを独走! 一番人気が好ダッシュ!それから……】





3番リュウセイヒカリ (雄5) ◎◎◎○



やはり、 一番人気が強いように感じた。◎が沢山着いていたいので当たり前か。 先輩はこの馬に賭けていた。


「リュウセイヒカリは必ず来るよ。 あの馬は逃げ馬なんで、ここもぶっちぎりで逃げる。 逃げて逃げてのゴール板通過の一位だ!」


先輩は、自慢げに自分の予想を語った。

そろそろ、最終コーナー付近に馬達が差し掛かった。


【第3コーナーを各馬が回った! 馬順はまだまだ変わらず! おおっと! 8番のメイクミラクルがすっと、 上がって来た! 第4コーナー通過! 直線に! …… 】


あら? 全然、注目していなかった一頭の馬が馬郡後方から外に出てきた。 足も軽々と動く馬体は「この時を待ってました!」と、 言わんばかりに前に出てきた。




8番 メイクミラクル (雄5) ……注…注




「先輩! さっきの新聞に注って文字が書かれてましたけど、注ってなんですか?」


「注意3着以内に入るかも知れないと思われる馬だ。 ここで勝負かけてくるなんて…… まさかがあり得るかもな。」


ターフビジョンの馬達が一斉に、最後の直線に入った。 それと同時に、 レースを観戦していた人達がざわざわと騒ぎだし、 一気にクライマックスに向かう。



♪♪♪―



隣で着信音が響いた。


先輩は胸ポケットからスマホを取り出す。


「 なんだ! 良いところなのに。 誰だ……… あっ! 」


先輩はそそくさとスマホを耳に当てながら、 少し離れた所に移動をしていった。

僕は横目で流しながら、 ターフビジョンのレースを見る。


【最後の直線に入る! トップはリュウセイヒカリが真っ直ぐに伸びる! メイクミラクルも1馬身の追撃に転じて伸びる伸びる! 残り300m! あっ!もう一頭馬郡から出てきた! サナエキタルが物凄い末脚を炸裂させてきた!サナエキタルだぁ! メイクミラクルにのし掛かる!】


信じられない光景を見た。 サナエキタルは、後方に居たのだが、もうすぐゴール直線で、一気に美しい馬体を伸ばしてきた。 二番手のメイクミラクルに外側にすっと覆い被さる様にぴったりと寄せてきた。


【サナエキタルがメイクミラクルに襲いかかる! メイクミラクル粘る! 粘る! サナエキタルが(かわ)した! メイクミラクル失速! 失速!2番手にサナエキタル! 】



!!!!


サナエキタルがメイクミラクルを追い抜いた。 メイクミラクルの物凄いスピードをサナエキタルが食べてしまったように、 サナエキタルはぐんぐんとトップを走るリュウセイヒカリを追う。


【サナエキタルの走りが止まらない!! 残り100m!! 内にリュウセイヒカリ!外にサナエキタル! あっ!あ! リュウセイヒカリとサナエキタルが並んだ!! どっちだ! どっちだ! 残り50m! もう、二頭の差が解らないっっ! 平行だ!平行! 今同時にゴールイン!!! 内か外か?! 僅かにリュウセイヒカルかぁ!!!】


アナウンサーは絶叫した!


アナウンサーの言った通りに少し、 リュウセイヒカリの方が先にゴールしたように見えた。 ゴール瞬間に回りの観客からは馬券や新聞等を大空に舞い上げていた。


駄目だった…


僕はがっかりしていると、 電話が終わった先輩が戻ってきた。


「レースどうだった? リュウセイヒカリが逃げ切ったよな! やっぱりあいつは来ると思ってたんだよ。お前は?」


「 ダメでしたね。 良いところまでいったんですが …… リュウセイヒカリの方が僅かにゴールを先に通過したようでしたよ。ところで、 電話は誰でした?」


「ああ…… 早苗(さなえ)からだよ。 もう一度やり直そうって電話来た。 あんたは逃げてばかりだから、一端、距離を置こうと思ってたらしいんだ。 けど、 我慢できなくなって、 今、復縁の電話をしたんだとよ。」


先輩はやれやれと思った感じに話してくれた。 僕も少しほっとした。


「おし! んじゃ、次のレースの予想と行こうか! 次が最終だ! んん??あれ?」


先輩が、ターフビジョンの方を指を指した。着順の1位と2位が空欄のままであり、 その右隣には青地に白文字が踊っていた。




【審】



ん? 審って何?






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