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第9話 風呂場の攻防(後)

 ガラガラと音を立てながら、横にスライドさせるタイプの風呂の扉を開けて入って来たのは、おっぱ……いや、予想通りパラールであった。


 一体、いつ用意したのか、風呂桶のようなものと手拭いを持って仁王立ちしている。そして、アルブと同様やはり全裸だ。いや、まぁ、風呂に入るのに全裸というのは、決して間違ってはいないのだが……何でこの子もこんなに堂々と入って来るかな。


「わたしモ入……ル」


 彼女はまだ少し、たどたどしい日本語でそう言うと、軽くかけ湯をした後、湯船を跨いで俺の隣へと入って来た。


 思わずパラールの方に……具体的には、やはりその自己主張の激しい胸に目がいってしまった。服の上からでも大きいであろうことは分かってはいたが、実際に生で目にして見ると、その迫力に圧倒されてしまう!


 その視線に気付いたのか、パラールはこちらに目線を合わせる……しまった! 少し露骨すぎたかと反省しつつ、文句の一つも言われるかと身構えるが、彼女は気にする素振りもなく、相変わらずのゆるめの表情をしたままゆったりと湯船に使っていた。


 パラール本人は全く気にしていない様子(多分……願望含む)だが、個人的に感じた気まずさを紛らわせたいので、当初の目的でもあるアルブの身体を洗ってやることにしようかと思う。


 とりあえず、檜造りの広い浴槽で機嫌良さそうに泳ぎ回っていたアルブを捕まえて洗い場へ。


 洗い場の椅子にアルブを座らせ、あらかじめDP交換で色々取り揃えておいたお風呂グッズ等を手元をに並べ、準備をしてゆく。基本的にものぐさで手間のかかることは嫌いな俺だが、風呂に関することに割く労力は惜しくはない。


 もしかしたら香料等の余計な匂いを嫌うかもしれないかな? とアルブの為に用意した無香料の石鹸をこすり付けて泡立てたボディタオルで背中を洗い始める。

 落ち着きというものが、全く見当たる余地のないけだものという印象のあったアルブだが……当初、身体を洗うとなると、もっと暴れるかと思っていたが、特に嫌がる様子もなく大人しく、されるがまま身体を洗われていた。


 残りは腕と脚。それに身体の前面だ! 二の腕から指先までと、太股半ばから足の先までは真っ白い毛に被われているため、手で洗ってやることになる、のだが……腕はあっさりと終わらせることが出来たのだが、脚と前はやはり、攻撃力の高いおっぱ……刺激的な胸部をはじめ、視線を動かしてゆくとモロにナニがアレしているので、ワタクシとしても非常に困りどころなのである。


 しかしながら、このままではいたずらに時間を浪費してしまうだけなので、身体をあまり見ないようにしながら後ろ向きに立たせたアルブの脚を洗うことにする。


 腕を洗った時と同様に、手を石鹸で泡立たせ脚を洗ってゆく。すると「くしゅぐったい」とアルブが脚をうねうねと動かし、火照りで少し赤くなった顔で笑いを堪えるように身悶している。と、それに合わせて、俺のちょうど目線の位置にある形の良い尻が尻尾と共に実に魅惑的に揺れているではないか。


 この状況をご覧の方がいたならば……そしてそれが、女性の方だったならば『嫌、変態!』とか『キモいんですけど!』などと言われてしまうかもしれない……いやいや、確かに俺も男だ! 嬉しくないなどと言うことはないが、なんの心構えもない状態でのこの状況、全く動揺や羞恥の見られない女性陣(一方は魔物)……色々と感情が追いついていない部分もあり、正直困惑や動揺の方が大きい!


 そしてその為、つい目の前で揺れているアルブの

尻尾へと手を伸ばしてしまった。


「ふぁ……!?」


 突然尻尾に触れられたアルブは驚いてバタバタと暴れ出す。


「あ、こら、危な……!!」


 そして、コケた先に風呂桶やら、自分用に用意していたボディソープのボトルなどがあったり、それを辺り一面にぶちまけてしまい、あまつさえアルブへ向けて程よく飛び散ってしまったのは、あれ? こんな展開、前に漫画で読んだことあるな。などと思っていると、こういう狙いすましたかのようなタイミングでパラールさんが乱入してくる。中々に混乱しているこの状況が面白そうに見えたのだろうか。


 騒ぎの中で後頭部をしこたまぶつけてしまう俺であったが……漫画のように気絶し、気付いたらベッドの上。などという展開はなく、痛む頭を抱えつつ、引き続きアルブの頭をシャンプーハットを使って洗い、残りの身体洗いは乱入してきたパラールへと託すことにした。


 ん? 最初からそうすれば良かったって…………あぁ、その通りだ。しかしながら、その時にはそんな選択肢は頭から抜けていたんだよ。


ファンタジー世界への異世界転位に犬耳ヒロイン&巨乳ヒロインとお風呂イベント……言葉にして抜き出してみると、ウハウハなハーレム展開のように見えるが、実際に起こってみると中々の疲労感があるものだ…………まぁ、楽しくなかったとは言わんがね……。


 つーか、異世界転位っていっても、そもそもここが何処なのかさえも俺知らないし……ダンジョンの外に出るのも、なんか恐いし。なんか結果的に元の引きこもり生活の延長に近い生活を送ってる気がするな。


 と、何とはなしにそんな事を考えていると、『侵入者ありの』警告音が鳴り響く。



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