第8話 少女の工房/風呂場の攻防(前)
遅々として進まないダンジョン製作(汗)
「あらためまして、カフェでやんす、よろしくお願いするッス!」
と、パラールに抱えられながら挨拶をするカフェ。その後、パラールが机と椅子を欲しがっていると言っていたので、部屋の配置換えのついでにそれもDPで交換する。
今の部屋の配置だと入り口(コボルト×2)、空き部屋、パラールの部屋、ダンジョンの拡張が出来るこの部屋と縦一直線に続いているだけなので、パラールの部屋をメイン部屋であるこの部屋の左隣へと配置変更。
今までは入り口の防衛に割り振っていたカフェが、半ばパラールの通訳アイテムと化してしまったため、コボルトを増員として、さらに3体召喚。入り口に1体補充、空き部屋に2体配置する。まだまだダンジョンなどとは言えないレベルだが、少しはマシになっただろうか。
で、なし崩し的にダンジョンに居座ることになったパラールは占拠した自分の部屋に、自らの髪の色と同じライトブラウンの大きなリュックサックを運び込み、様々な道具を出してはドタバタと何やら作業をしており、その様子を見ていると、やはりこの子も魔術師なのだなぁ、と思えてくる。
とりあえず彼女はしばらく部屋にこもって出て来そうにないので、その間、こちらもさらなる居住環境の改善を試みる。
部屋の壁は未だ石壁のままだが、床はフローリング、流し台も出来た。トイレも和式だが個室に変更してある。となると……やはり足りないものがある。そう、風呂だ! やはり日本人たるもの風呂は欠かせない。生活に必要な台所やトイレが確保出来ている今、我がダンジョンに最も必要なものと言っても過言ではない。
と、いう訳で風呂場を新たに建造する。現代日本でのニート生活では自室の風呂はユニットバス型の狭い浴室だったので、この機会に思い切って檜造りの大きな浴槽と広めの洗い場を作ることにする。
「はぁ~。良い湯だ!」
広い湯船にゆったりと浸かりながら思わず声を洩らす。パラールは部屋にこもって作業中(何をしているかは分からない)、カフェはパラールの手伝い。アルブは骨の形をした犬用のガムを囓りながらゴロゴロとしているので、俺はこの隙を利用して一人で一番風呂を楽しんでいる最中だ。
両手両足を伸ばしても大分スペースにゆとりのある浴槽、風呂ってのはやっぱり良いもんだなぁ……。その分DPはごっそりと持って行かれてしまったが、そこまでしても作る価値はあったと思うね。
「ごしゅじん、なにしてる?」
すると、風呂場の入り口からこちらを覗き込んでいるアルブと目が合う。
「ぅお!? アルブか……そうだな……お前も入るか?」
「……ん!」
アルブもそろそろ一度身体を洗ってやらねばならない……しかしながらそれは、美少女の皮を被ったけだものであるところのアルブと一緒に風呂に入るということになる。
つまりは、外見上は美少女と一緒にお風呂……これは、燃えるシチュエーション過ぎていつもの俺ならば、そのまま燃え尽きて灰になってしまう(情けない)パターンのヤツだ! が、しかし、今アルブに着せているのは水着。ならば、そのまま入らせて、その勢いのままに素早く身体を洗ってやれば万事解決!! なのではないだろうか? うぉー、俺頭良い! と、頭の悪い事を考えていると、トテトテと小走りでアルブが入って来た……全裸で!
「をぉいっ!? アルブさんよ、な、なな何でお前裸なんだよ?」
「? ごしゅじんとおなじかっこうした」
なんてこった……全く間違ってない。が、その無邪気な笑顔と魅力的な裸体は俺にとって好物過ぎてそれはもはや致死量なレベルへと到達している。
そんな俺の心中の葛藤をよそに、アルブは駆け寄って来た勢いのまま湯船に飛び込んで来る。
派手な音と波しぶきを立てて飛び込んできたアルブに軽く注意するも「うひひ」と、全く懲りていない様子で笑うアルブと横並びになり湯船に浸かる。
「わふぅ~」
気持ち良さそうに声を洩らしているアルブのほうに目をやると、まるで海に浮かぶ弩級戦艦の如きボリュームを誇る二つの膨らみが風呂の湯の中に浮いていた……そう、おっぱいである!!
噂には聞いていたが、まさか実際に浮いているその姿をこの目で見ることが出来る日が来ようとは!
思わず心中に湧き上がる大きな波のような動揺と再び触ってみたいという衝動に、自分の中の天使と悪魔が激しい攻防を繰り広げている……その時であった。
アルブと同じ弩級戦艦並みの攻撃力(主に視覚的な意味で)を持つ乱入者が現れたのは!!
乱入者あり!!!