第6話 行き倒れ/食のデッドヒート!!
倒したホブゴブリン共のドロップ品を持ち帰ったアルブに、DPを使って交換したコンビニの骨なしチキンや肉まん等を与え、大喜びなコイツが大人しくしているうちにドロップ品と交換したDPの使い道を考える。
まずは、寝心地の悪いベッドを上質なものに変更。これで寝てもいまいち疲れが取れない。ということも無くなるのではないだろうか。
次にこの住居兼ダンジョン制作部屋(?)と最初の部屋との間に部屋を二つ追加。といっても、ただ何もない部屋を作っただけだが、少しはダンジョンっぽくなってきたのではないかと思う……。
そんな中、再び侵入者ありの警報が鳴り響く。立て続けに侵入者とは慌ただしいなと思いつつも、そういうこともあるかなとモニターを覗き込む。
今回は部屋に配置したコボルト達に経験値を積ませる為にアルブは残したままにしようかと思っていたが……アイツめ、もうすでに部屋を飛び出した後のようだ。本当に落ち着きがないヤツだな。
まぁ、今回もアルブがいればなんとかなるかな、と……何とはなしに考えていると、程なくしてアルブがひょっこりと部屋へと戻ってくる。
そうして戻って来たアルブに「なんかある」と言われ、腕を引っ張られながらダンジョンの入口まで連れて行かれると、そこには人が倒れていた。
とんがり帽子にマントというその姿からしてほぼ間違いなく魔術師であろうと思われる……が、うつぶせに倒れたまま、全く動く気配がない。
「死んでる……のか?」
とりあえず、仰向けにして状態を確認しようと助け起こす。おや? 仰向けにするまで気付かなかったが、行き倒れていたのは女の子のようだ……整った顔立ちはもちろんのこと、ゆったりとした服を着ていても分かる程の豊かな胸の膨らみ……ハラショー!! これでこのダンジョンにおける巨乳度が増した!!
い、いやいやいや……そんなことを気にしている場合じゃないな。人が倒れているというのに。と、密かに心中でそんな事を考えていると、微かに彼女の瞼が動いた。
「……ФЧСХЭμ」
「…………ん?」
そう、ゆっくりと眼を開けた彼女は、か細い声で何かを伝えてきたが……何を言ってるのかさっぱり分からない。
と、思ったのも束の間。次の瞬間に彼女のお腹から聞こえて来た低い唸り声のような轟音が全てを物語っていたのだった。あぁ、腹減ってたのね。
つーかこのパターン、昨日もあったよな。
とりあえず、彼女と彼女が背負っていたデカいリュックサックをアルブに運ばせ、ゲーム機のある部屋へと戻る。女の子に全て担がせて酷い奴と責めるなかれ! アルブはれっきとした魔物である。俺なんかよりも遙かに怪力なのだ。現に今も人一人を軽々と運んでいる……わりと雑に。
手っ取り早く食えるようにカップ麺とおにぎりでいいかな。と、DP交換でカップ麺にコンビニのおにぎりを用意していると、背後から何やら視線を感じる。
すると、期待に目を輝かせた腹ペコ魔獣様が指をくわえてこちらをガン見している。
「あるぶもたべたい!」
まぁ、そう言うと思ったのでカップ麺とおにぎりを3人分に変更し、待つこと3分……。
3人分のカップ麺から良い香りが漂って来たところで、魔術師の少女が勢い良く跳ね起きる。
少女の視線はカップ麺と、ビニールを剥がして紙皿の上に置いたおにぎりにいっているが、多少戸惑ったような顔をしている……まぁ、異世界の人間はこんな食べ物は見たことないだろうから仕方ないかな。
などと考えていると、少女はためらう素振りさえ見せずおにぎりに手を伸ばして食らいついた。
少女はあっという間におにぎりを食べ終えると、カップ麺をじーっと見つめている。あ、俺の感覚ではカップ麺は手軽に食えるものだが、この世界の人間は箸つかえないか。アルブの時も結局、俺が食わせてやる羽目になったしな。
と、言う訳で、これはどうやって食べるものか少女に見せる為にアルブにカップ麺を食わせてやる。
俺が差し出した箸をくわえて美味そうに麺をすするアルブに触発されたのか、少女もこちらに向け口を突き出してみせる。一見すると、可愛らしい少女二人が口を突き出している、ドキドキなシチュエーションにも見えるが、実際は腹を減らした雛鳥に餌をやっている感覚に等しいのは、おそらくは二人から発せられる強力なもっと食べたいオーラのせいであろう。
とりあえずアルブの後に少女にも麺を食べさせる……が、このカップ麺が少女の食欲に火を付けてしまったようだ。少女は俺前に置いてあったおにぎりも瞬時に胃に収め、こちらに熱い視線を送っている(もちろん恋愛的な意味ではない)
これではらちがあかないと判断した俺は焼き鳥やハンバーガー、追加のおにぎり等食べやすい物をDP交換で大量に用意した……が、程なくしてこの餓えたけだもの共によって瞬く間に食べ尽くされた。ひとしきり満足した二人(一人と一体?)はとても良い笑顔を浮かべている。
二人とも、とても美味そうに食べていたので、こちらとしても食わせた甲斐はあるが……そもそもこの少女は一体誰なんだろうか?