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第5話 追加召喚/しょうりのおたけび

 現代日本から異世界に飛ばされた先でダンジョン作成生活を送ることになった翌日の朝。固いベッドと薄い毛布に辟易しつつもなんとか眠りについていた俺は、軽い衝撃を受けて目を覚ます。どうやらベッドから落ちてしまったらしい。


 そのベッドには、いつの間にか入り込んで来たアルブがヨダレを垂らしながら気持ち良さそうに寝ている。コイツの寝相の悪さによって蹴飛ばされてしまったようだ。寝ていても起きていても落ち着きのない奴だ。


 とりあえず、起きたは良いが特にやることもないので再びゲーム画面を覗き込みDPを確認する。すると若干だがDPが増えている。


おそらくゴブリンどもを倒した分ポイントが入ったのだろう。ならばここらで配置するモンスターを増やしておきたいところだ。


 と、いうことでコボルトをランダムに3体召喚。コイツらはアルブのような特殊すぎる個体とは違い、ごく普通のコボルトだ。とりあえず入り口付近にある最初の部屋に配置し、しばらく放置する。


 ただ、さすがにコボルトを配置しただけでは不安なのでポイントを消費して罠を設置しておくことにした。こちら側の操作で発動するタイプの落とし穴を大量に設置。自動で発動しないのは面倒だが、これはコボルトが引っかかるリスクを避ける為なのでやむを得ないだろう。


 近接戦闘に慣れていないコボルトでも戦えるよう、武装は槍を装備させておく。人間の子供程の大きさのコボルトは他のモンスターと比べてもリーチが短いため、それを補うという意図での装備選択でもある。


 ひとまずはこれで大丈夫だろう。DPが貯まるまでの急場凌ぎとして使えれば良いし、これでちまちまとポイントを稼ぎながら細かく生活状況やダンジョンの改善を図っていけるだろう。


 と、言うわけで、のそのそと起き出して纏わり付いて来たアルブの相手を適当にしながら、このまましばらく様子を見ることにする。暇潰し用に何かないかとポイントで交換出来るような物を探して見る。


 テレビもネットも、ラジオすら利用出来ない今、娯楽と生活環境の改善は急務だ。


 ん? それだとダンジョンが何時まで経っても出来上がらないんじゃないのって? いやいや、実際に飛ばされて見ればわかるかと思うが、現代日本でぬるま湯に使ったような生活をしていた人間が、初期状態の、こんな牢獄のようなダンジョンでひたすらポイントを節約しながらダンジョンの拡張なんて出来ないって! 身も心も持ちません。


 と、いう訳で……トイレに置いてあった尻ふき用の紙なんてトイレットペーパーというよりは、ほとんど紙というような硬さで、まず使える気がしないので、これもきちんとミシン目のついた柔らかい物に変更。

あと、自分とアルブの娯楽用に、自分には漫画雑誌と缶コーヒー。アルブには大きな骨の形をした犬用のガムを購入する。


 そのまま雑誌を読みながらしばらく横になっていると、また侵入者がありの警告音が鳴り響く。それとともに、ガムにかじりつきながらゴロゴロしていたアルブはガムをくわえた状態のまま、素早く部屋から飛び出してゆく。


 ゲーム画面に目を向けると、侵入者の姿が映し出されている。今回の敵はゴブリンが4体にホブゴブリンが1体、ゴブリンメイジが1体のようだ。4対6と数の上でも不利だし魔法を使うゴブリンメイジまでいる。しかも、さして広くもないあの部屋に、配置したコボルトと合わせて10体の魔物がいるというのは、さすがに狭い。


 と、思っている内に素早く一体のゴブリンの背後に忍び寄ったアルブはゴブリンの首を両手で掴むと、そのまま首を捻り折る。


 他の魔物達が首の骨を折られ崩れ落ちるゴブリンに気を取られている間に、アルブはゴブリンどもの隙間をを縫うように移動して一番後方にいるゴブリンメイジへと駆け寄ると、その勢いのまま顔面に飛び膝蹴りを食らわせる。


 アルブは、鼻血を吹き出しながら倒れ込んだゴブリンメイジへ脚から出した鋭い爪を首元へと突き立ててとどめを刺す。と、そのアルブの背後めがけて間髪を入れず背後から風を切る音と共に鋭い斬撃が打ち下ろされる。


 しかし、その攻撃は天井近くまで軽々と飛び上がったアルブにあっさりと避けられてしまい、背後から不意打ちを仕掛けたホブゴブリンの一撃はあっさりと空を切り、ダンジョンの石畳を叩く。


 すると、そのお返しとばかりに落下の勢いを利用してアルブがホブゴブリンの顔面へとドロップキックを放つ。


 真上近くからの急角度でのドロップキックは顎にヒットし、思い切り脳を揺さぶられたホブゴブリンはフラフラな状態で立ち尽くしている。


 その隙にホブゴブリンの背後へと回り込んだアルブはホブゴブリンの腰に両手を回しガッチリとホールドすると、そのままバックドロップを食らわせる。


 垂直に近い形に床に叩きつけられたホブゴブリンは受け身を取ることも出来ずに固い石畳に頭から激突し、そのまま動かなくなってしまった。


 魔物達の密集した中でよくあんな大技が決まったなと感心していると、アルブの猛攻に圧倒された残りのゴブリンが逃げだそうとしていた。


 そこで、それまであっけにとられていた3体のコボルト達が動き出し、それらを包囲殲滅してゆく。


 群れのボスを瞬時に殺されてしまい困惑したゴブリン共は、実に呆気なく仕留められていった。


 やがて、ゴブリン共の死体が消え去り元の広さを取り戻した部屋では、興奮冷めやらぬアルブがあちこちをバタバタと駆け回り軽く宙返り等した後、大きく長い雄叫びを上げる。


 それは勝利の雄叫びであると同時に、同じ部屋にいるコボルト達により強いのはどちらかを明確にするためのものでもあったようで、3体のコボルト達はその場で跪く。アルブを自分達よりも上位者であると認めたようだ。


 その姿に満足したのかアルブはむふー、と鼻息荒くも満足そうに笑みを浮かべるとドロップ品を片手に再びこの部屋へと戻って来るのであった。


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