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第2話 魔獣召喚/ヨダレまみれ

とりあえず2話目。よろしくお願いします!

 今日、何度目かになる非現実的な光景が至近距離にあるせいか、なんだか上手く頭が働かない。


 元々窮屈で嫌なものの多い現実を毛嫌いして、半引きこもりのニート生活なんてやってる俺だ。ラノベ的な展開が突然、自分の日常に訪れたとしても、普通の一般人よりもスムーズかつスマートに対応出来る……となんの根拠もない自信に満ち溢れていたのだが……。


 まぁ、部屋の扉を開けると突然石壁の牢獄のような部屋に飛ばされ、ゲームをやらされる。というのは……まぁ、このさい良いとしよう。


 魔物が実際に召喚可能! ゲームだと思っていたダンジョン作成&経営(?)は現実の世界と連動していた。これもまぁ、良しとしよう。


 しかし、女性に対して全く免疫のない三十過ぎのヒキオタニートが心の準備も整っていないうちに、美少女に抱きつかれたら、色々と思考能力の処理が追い付かなくなってしまったとしても、仕方がないだろう。


 しかも、この格好がよろしくない。イヤ、個人的にはこの上無い程に好みなのだが……いかんせん、好み過ぎて目に毒というか……直接的すぎるというか。


 そう、彼女は全裸であった。正確に言うと、その二の腕から手の指先にかけてと、太股の半ばから足の指先にかけては真っ白く美しい毛で覆われており、ゆるいウェーブのかかった背中の辺りまであるふわふわな髪の毛と、尻の辺りでゆったりと揺れているふわふわした尻尾も同じく純白だ。なんか犬耳も生えてるし。


「じ、獣人……!?」


 突然の来訪者にどうすれば良いのかわからず、オロオロとしていると、少女はこの部屋が珍しいのかキョロキョロと回りを見回している。


 しかし、この少女は一体どこから現れたんだろうか……?


「あ、もしかして、これ……か?」


 少女の足元に浮かび上がった魔方陣。発動したのが、俺がコボルトを配置したのと同じタイミングなのを考えると、俺がここに配置したとみるべきだろうか。


 と、いうことは、考えられるのは、本来コボルトが召喚されるはずが、何らかのアクシデントで獣人が召喚されてしまった……か、まさかとは思うが、この少女が召喚されたコボルトなのかのどちらか……なのではないだろうか?


 とりとめなくそう考えていると、少女は俺に身体をぴったりとつける程に密着すると、俺の身体の臭いを嗅ぎはじめる。


「なっ……!?」


 近寄るな! と言われることはあったとしても、若い女の子に接近され、臭いを嗅がれるなどという状況は俺の人生には存在しない。

 まさに予期せぬ事態!! だから、どうしたら良いのかも分からず呆然としていると、彼女の顔が手元に置いておいたビニール袋に寄っていく。


「あ、もしかして……これが欲しいのか?」


 確か、中にはコンビニで買った骨なしチキンが入ってたな。


 そう声をかけると、犬耳の少女は、上下に首を振る。どうやら、こちらが何を言ってるかは理解出来るようだ。


 俺の体に馬乗りになった体制のままの彼女は、何かを期待するような眼差しを向けてきており、その尻尾は彼女の期待感を示すようにぶんぶんと千切れんばかりに振られていた。


「ま、まずは一旦離れろ。な!」


 と、肩を押して離れようとしたが、ろくに相手を見ずに手を伸ばしたため、その手は大きく狙いを外し、たわわに実る豊かな胸をむんずと掴んでしまった。


 むにゅう! と、なんともいえない柔らかさと手からはみ出す程のそれを半ば無意識にむにむにと揉んでしまう。


「あっ!? ご、ごめん。い、いや……わざとじゃなくてですね、えぇと……その」


「わぅ?」


 しどろもどろになりながら謝っていると、少女はなんのことだ、とばかりに首をかしげ、不思議そうな顔をしている。


「と、とりあえず離れろ!」


 と、軽く押すように肩に手をやると、以外とあっさりと離れる。その隙にチキンをビニール袋から出し、包み紙を破る。まだ温かいそれは、空腹の俺にとっても、とても美味そうに見える。


 しかし、異性に免疫のないひきニートが全裸の犬耳少女に期待に満ちた食欲全開の眼差しを向けられては、全面的に降伏するしかないというものだ。


 だが、やはりお約束として、やっておきたいことが一つある。


「お手」


 そう言いながら、俺は少女に向けて手のひらを突き出す。


「わぅ!」


 少女は俺の手の上に自分の手を重ねる。やはりか。確証はなかったが、何となくこちらの意図が伝わる気がしていた。


「待て!」


 とりあえず、チキンを上にかざしたまま、一旦ストップをかける。もし、この娘がモンスターだというのならば、最初に召喚した彼女の育成が重要になってくる。とりあえず、付け焼き刃だが犬のしつけの要領でどちらが上か分からせてみようかと思う。


「…………」


 少女は無言のままヨダレを滴らせながら、チキンを凝視している……。さて、そろそろ良いかな。


「良し!」


 ゆっくりとチキンを目の前に持って来てそう声をかけると、少女は一目散にチキンにかぶりつき……驚きに目を見開く。


「わふっ!!」


 と、そのままあっという間に食べ尽くしてしまうと、自分の口元についた油を舐めつつペタリと地面に座り込み、もの欲しそうな顔をしてこちらを見つめてくる。


「……あ~、ごめんな。もぅ無いんだよ!」


「ウゥゥ……」


 少女は悲しそうなうなり声を上げると、再びこちらに近づいて来る。何だ? と、思う間もなく彼女は紙袋を持っていた手を舐めだす……どうやら、包み紙からこぼれ手に付いたチキンの油が狙いらしい。


 長い舌で丹念に指を舐められるという驚きのシチュエーションとその気持ち良さに、うっかり変な気持ちにさせられそうになったころ、目の前に突然彼女の顔が現れる。


「!? な……?」


 と、そのまま大型犬にされるように上にのし掛かられたまま、ベロベロと顔を舐められてしまう。


 顔を彼女の唾液まみれにされながら、とりあえずは餌づけ完了かな。と、胸をなで下ろすと同時に、もう少し指を舐められていたかったなぁ……などとも思う。


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