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泡沫  作者: 若葉 美咲
2.過去からの復讐者
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「そんなあからさまに警戒されると、嫌だなぁ……」

 傷つくよ、なんて言ってぞの人物が笑う。

 だけど、警戒するのも仕方がないと思う。

 久恩を傷つける可能性があるということだ。つまり、敵になり得るということだ。

「小雪って……」

「そう、あの女の人」

 私の質問を遮って白い人が答えを出す。ふんわりとしているはずなのに、何もかもを見透かされている感じがあって嫌だ。

「君は『相談屋』の一員なんだろう?」

 白い人が聞いてくる。

 どこで、知られたのか。分からない。

 警戒した目で見つめつつもこのまま黙っていても埒が明かない。目を逸らさないまま小さくうなずいて見せた。

「だよね。なら、……僕の依頼を聞いてくれないかい?」

 白い人がゆっくり狐のお面へと手を伸ばす。

 狐のお面の赤い紐がするりと落ちた。そして、その人はお面を落とした。

 お面は音を立てず、床に落ちるはずだった。

 しかし。

 お面は床をすり抜けて消えていった。

「ふふふ、驚いたかい? 実はね、僕はもう死んでいるんだ」

 白い人が目を伏せたまま笑う。

 美しい人で生きを飲んでしまう。

「僕の名はシロ。しがいない百鬼夜行の長だった人物だ」

 男はそう言って目を開いた。赤と黄色のオッドアイ。吸い込まれそうなほどの神秘的な何かを感じた。

「無理してここまで来てくれた君を見込んで、お願いしたい。お願いだ。小雪を止めてくれ」

 シロが泣きそうな顔で私を見つめてくる。

 対する私は混乱していた。

 小雪は昔、久恩と同じ百鬼夜行に属していて。

 久恩が抜けたことを憎んでいて。

 だけど、小雪の尊敬している百鬼夜行の長は死んでいて。

 意味が分からない。

「方法はどんなでもいい。そう、例え――殺したとしても」

 シロが提案してきた案に私は白目を剥くしかない。

「ちょ、ちょっと待ってください!」

 私は手を振った。これ以上、情報で殴られても頭がついていかない。

「どうしたんだい?」

 シロが不思議そうに首を傾げる。

 なんで、この人が百鬼夜行を収められていたのか、意味が分からない。

「えっと、何かしちゃったかな?」

 困ったように笑われてもこっちが困る。

 第一、先に情報で殴ってきたのはそちらだ。整理する時間が欲しい。

「取り合えず考える時間を下さい」

 何をすべきなのか。何を知らなければいけないのか。

 一度熱くなりすぎた頭を冷やして考える。落ち着いて考えなければ失敗する気がした。

「まず、依頼への返事です。『相談屋』では引き受けることができません。私がここにいることすら、本当はあり得ないことなんです」

 シロが私の言葉を聞いて絶望したような顔色を見せた。

 だけど、と私は手を握りしめた。

「交換条件なら私が個人的に動いてもいいです」

 その発言にシロが瞬きを繰り返した。

 私は彼を見据えて、口を開いた。

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