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泡沫  作者: 若葉 美咲
1・現代に生み出された怨霊
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ある日の相談屋


 人は醜い。他人を妬み、憎しみ、争い合う。常に誰かを見下さなければ生きていけない。なんて悲しい生き物なのか。

 だけど、その実態を誰も見ようとしない。見つめようとしない。平和だの友情だのを謳いながら、平気で裏切り傷つけてゆくのだ。それが当たり前だと言うように自分の行動を振り返ることもしなければ、反省することも無い。

 結局、人間は自分が一番なのだ。自分さえ良ければ、自分さえ救われればそれで満足。誰が傷つこうが、誰が泣こうが知らんぷり。見たくない事から目を逸らし、現状維持。

 そうして流された血と涙は一体誰のためのものだというのか。誰に届くと言うのか。



 ある日のこと。ここ、『相談屋』に珍しい類の事件が持ち込まれたらしい。

 『相談屋』の名はとても有名で売れ続けている。だが、普段持ち込まれる依頼と言えば迷子のペット探しだとか、買い出しのお手伝いだとか、壊れた物の修理だとか、子供の家庭教師だとか、怪我の治療だとか。一言でいうのなら日常の雑事な訳である。

 それらの依頼は受付の人と仕切り役をやっている久恩という九尾が必要な人員を揃えて現場に向かわせる。数人で言われた場所に向かい、そこで頼まれたことをこなし、報酬をいただいて終わり、という物が多い。普通は。

 探偵に頼むような事件はやって来ないのだ。何故なら、妖界で警察を務めている天狗警団てんぐけいだんがとても優秀だからである。彼らのおかげで様々な事件は迅速に解決され、妖達は平和な暮らしを築けている。

 おかげで『相談屋』も比較的安全に仕事をこなすことが出来るのだ。


 しかし、その日は違った。

 鬼門村きもんむらという村から代表で数人の使いがやって来たのだ。皆、同じように困り顔をしていた。

 受付の者は話を聞いて自分たちだけでは解決できるものではないと判断した。勝手にことを進める事案としては大きすぎたのだ。結果から言うとその判断は正しかった。後に起きた大きな事件に素早く対応できたのも、この時の動きが適切だったからと言える。

 彼らは社長室に案内された。

 社長。私は彼の名をこの時はまだ知らなかった。だからここでも社長、とだけ書かせてもらおうと思っている。

 社長は吸っていた煙管を片づけて彼らと向き合った。独特な笑みを浮かべて。

 社長室にやって来た者達は最初、おどおどしていたがやがて意を決したように語り出したという。

 私は後から聞かされたのだが、話された内容は大体こんな感じだったらしい。

 鬼門村でも稀にしか見ない強い怨霊が現れた。すごく強い負の気を放っているせいで、村周辺の植物が枯れてしまう。このままでは、食べる為に育てている植物まで枯れてしまい、村の者達全員が食いっぱぐれて死んでしまう。何とか怨霊の気持ちを鎮められないか、とのことだった。

「そいつァ頼るところを間違えてねぇか? 警団のところへ持って行きゃァ三分くらいで片づけてくれるだろうが」

 若い姿をしている社長はそう言い放ったという。正論と言えば正論なのだが、わざわざ『相談屋』を便りに遠路遥々(はるばる)やって来た者に失礼だ。何を思って社長がそんなことを言ったのか、今でも理解しかねるところがある。

 だが、鬼門村の者達は諦めなかった。社長に対して粘り強く頭を下げてきたのだ。


 鬼門村は人間が鬼門とする方角から人間界を人の手によって追い出された者を真っ先に迎え入れる場所だ。そのまま鬼門村に住み着く者は多い。

 人間界を追われると言うことは人間に害をなす者。妖界に来るまで心の平穏を得られず、周囲に害を与え続けててしまう。鬼門村にはそういう体験をした者が少なからずいるのだ。

 警団に頼めば力でもって負の気を抑えてくれるかもし得ない。しかし、それは根本的な解決にはならない。負の気の原因を解決しなければ長い時間をかけて心を殺してしまう。心を殺した者ははるか長い時間をかけ力を増大させ、たたり神になってしまうのだ。それでは何の意味も無い。

 だから、浄化して欲しいのだと代表してきた者は力説した。成仏しなくていい。ただ、周りに害を及ぼすことがなくなるように宥めて欲しい、と。また、これが村の意見であると。


 村の優しい思いがどれほどの力をくれたのか、彼らはきっと知らないだろう。知ったとしても、笑ってそれは良かった、と告げるのだ。

 貸しとか借りとかそんな心じゃない。純粋に何とかしてあげたいと思いやる温かさが満ち溢れているのだ。

 また、その話を聞いた社長も真剣な思いに応えようと動くことを決めた。


 かくして『相談屋』は動き始めた。しかも、社長を含めた総動員で。

 それまでにあった依頼は久恩が最適な人数を揃え、各場所ごとへ向かわせ、迅速に片付けるように指令が飛んだ。これからくる依頼は、受付だけはするが直ぐには行動しない、という態勢が取られた。火急の要件は受付られないと張り紙までされた。

 人員は三つに分けられた。留守を守る者、情報を集める者、現場に行き対処する者。

 現場の指揮はなんと社長自ら振るうことになった。久恩を含めた班が現場に向かう班として屋敷を出発した。


 久しぶりの投稿となってしまい申し訳ありません。今、大変難しい時期なんです。

 でも、小説を書きたいです。妖ものは本当に大好きなんですよ。書いててとても楽しいですし。

 やることをやってからにしろと周りの人に言われているので自分にムチを打って頑張って取り組んでおります。いや、更新遅いぞってね。全く言い返せません。

 それでも楽しんで行ってもらえれば嬉しいです。

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