17. まがときにはキャラメルオレンジソースをかけて その② ☆
クラビエデス通りに入ったアダム・エルキンとデヴィン・モレッツは、直ぐに異変に気づいた。ザワザワと神経を苛立たせる感覚が忍び寄る。
雑音は次第に音圧を増している。
大股で移動する彼らの後を這い寄るように迫ってくるのだ。すでに直ぐ近くに迫ってきているのも感じていた。
「おおっと。早よもおいでなったようや」
「安全調査局第2課の飼い犬どもか」
道化師姿のふたりの青年は、同時に舌を打つ。
「面倒なヤツらやな」
「あっちも、任務やからな。仕方ないねん」
ふたりはわざとらしく溜め息を吐いた。
「雑音の発信源、視えるか。ディー」
「黒のスーツ着込んだふたり組や。図体のデカい武闘派と、低身長の能力者」
「雑音の元は低身長やな」
彼らの遠隔透視に映し出されたのは、厳めしい顔つきをしたスーツ姿の男2名。しかし事前に告げられた追撃者の人数は5名である。
第一に、ベレゾフスキーの姿が見えない。さらに感覚を澄ませ視界を広げ、公安調査庁連邦安全調査局第二課第2班班長の気配を探す。
しかし先方の能力者も、こちらの動向を見張っているようだ。アダムとディーが遠隔透視を始めると、視界を邪魔しようと雑音を強くした。
「七三分けの白いのは、どこ行った?」
「ダックワーズ公園の手前あたりにおるの違うか? テスらの先回りをしよったか」
雑音は頭痛を伴う。
苦虫を噛み潰したような顔でふたりはこめかみを押さえた。アダムは右手の人差し指で、ディーは左手の人差し指で。
相変わらず、それは鏡に映ったようなそっくりな仕草だ。
能力の感度が鈍っている。それでも彼らの視線の先には、不明瞭ではあったが、捜索対象の人物が視えていた。
次第にハッキリとする映像に映るのは、長身痩躯で銀髪をキッチリと七三分けにした男。スクエア型のメタルフレームの奥に光るアイスブルーの瞳をまっすぐに前方に向け、直立不動で立っている。
間違いなくニコライ・ベレゾフスキーだ。
探し当てた連邦安全調査局第二課第2班の班長と、その背後に従う部下は2名。これで計算が合う。ただし困ったことに、付き従う部下の内ひとりは能力者のように受け取られた。
なぜなら。先行するベレゾフスキーたちを発見した途端、新たな雑音がアダムとディーを襲ったからだ。
様子を窺う彼らへの警告を兼ねた妨害といったところか。
そこへ先からの雑音が重なり、盛大な不協和音を奏で始めたので、ふたりはすぐさま遠隔透視を中断した。
「そんなら、あっちが本隊。こっちのふたりは俺らのジャマ部隊か」
「洒落臭いこっちゃ」
当然、そんなことくらいで怯むような青年たちでは無いのだ。
敵は鷹栖マオと名乗る少年が懸念していたとおり、二手に分かれていた。
そのどちらの組にも強力な能力者を配し、テスを挟み撃ちにして捕まえようとしていたらしい。
だが優秀なA級能力者が救援に駆けつけた事を知ったベレゾフスキーは、後手についていたふたりの部下を青年たちの足止めに回してきた。
「俺らも、任務なんや。正式な発足はまだとは言え、能力者不法犯罪特別捜査班の初仕事やからな」
「初戦は白星で飾りたいやん。せやから遠慮無う、行かせてもらうわ」
ふたりは視線を合わせると、会心の笑みを作った。
その台詞が聞こえたのか。彼らの行く手を阻もうと待ち構える安全調査局所属の小柄な能力者は、より一層強力な雑音を投げつけてきた。
負けじとアダムとディーも、それに対抗する。互いに相手の思念波をかき乱そうとして、クラビエデス通りの一角には、非能力者には視えない砂嵐が巻き起ころうとしていた。
イラスト:さば・ノーブ様
ぶつかり合った思念波の強力な気力は摩擦を起こし、振動を発生する。
ジジジ……と言う耳障りな低い音に重なるようにして、ヒュ~ンという不安定で心地悪い音が混じる。超音波を含んだ高周波数の音は、超常能力のぶつかり合いが引き起こした歪みの音だった。
音のもたらす不快感が脳を揺さぶり感情を高ぶらせ、振動を起こす。それが共鳴して、振幅が大きく高まって行く。
青年たちの超常能力と、ベレゾフスキー配下の能力者のそれが、共鳴現象を起こし始めていた。
静かなクラビエデス通りの風景が歪んだ。
能力戦の影響で、磁場が乱れている。その影響が、能力者達の感覚を乱していく。
これまで止まることの無かったふたりの足が止まってしまった。
「いくら任務で許可が出とるいうても、ここは一般市民居住区域内で、本来なら能力の使用禁止や。幸い日曜の夕方――オッと、もう夜か――でひと気が無いとはいえ、どこでうっかり接触ミスがあるとも限らへん。一般市民の皆さんを巻き込んで事故でも起こしてみ、認可証格下げ、最悪取り消しやで。
それやのに、なんでこんなに大胆なことすんのや」
公認能力者が禁止区域で超常能力を使用する場合、たとえ使用許可が下りていたとしても、極力使用は避けるようにする。
能力は主に「防御」に使用するのであって、積極的に「攻撃」には使用しない。どんなに「制御」しても、なにが災いして能力が暴走するかわからないし、非能力者は超常能力による事故を嫌がる。
不必要ないざこざを避けるためにも、使用は最小限。特殊能力の誇示は避けるように厳命されているのだ。
なのに。相手の出力レベルは過剰気味で、アダムとディーも「制御」しているにもかかわらず、ぶつかり合った能力の反応が大きすぎる。
「せやけど。あちらさんかて、同じこと思てるようや。誰かが、俺らの能力、増幅しとるんやないかってな」
「はあぁ? 誰が、そんな、いらんサービスすんねん」
「わからんから、困っとんねん!」
アダムとディーは互いの顔を見た。
「なんかおかしなことになっとるな」
「せやな」
ふたりは大きく息を吐いて冷静を取り戻す。同時に別の不安材料を思い浮かべ、雑音を掻い潜ってテスの様子を透視してみるのだった。
イラスト:茂木 多弥様
案の定、テスは不安と心配に襲われていた。
彼らにとって大いに嘆かわしいことであるが、現在テスの脳裏に拡がるそれらの悩みは、能力についてでは無く、一緒に行動を共にする正体不明な少年に対してだった。
沸き立つような興奮まで抱え込み、気持ちは忙しなく動いている。
「イヤな展開になっとるやん」
「恋する乙女、かいな」
「……ちうか。この一件が落ち着いたら、あのほんわかのほほん娘に、お灸を据えがてら感情のセーブの仕方教えんと、こっちが保たんわ!」
「ダダ漏れやもんなぁ。かわいいっちゃ、かわいいんやけど……」
「なんか、しんどいわ!!」
と、声を合わせるお節介なお兄ちゃんらの心配をお構いなしに。
テスの気持ちはふわふわと浮いていた。
理由がなんであれ、鬱状態で情緒不安定気味なテスの感情が、振り子のように大きく揺れているのには変わりない。こうも不安定では、外部からの攻撃に簡単に操作されてしまいそうだ。
そのテスの行く手に、ベレゾフスキーとその部下が、手ぐすねを引いて待ち構えている。
「ヤバないか? テスは能力使われへんし、眼鏡ッ子は非能力者やし」
「せやな。……ちうか、テスの様子もヘンやで」
彼らの能力の振動に共鳴したのか、テスの波動が大きく揺れている。彼女の放つ色が震えている。
雑音と脈打つような頭痛を感じ、うろたえていた。
「狩り」で、初めてテス・ブロンという少女を見出したときと状況が似ていた。彼女の超常能力が、アダムとディーの触覚を刺激するのだ。
微弱だった感触は、テスの鼓動と同じ早さで確実なものになっていく。
嫌悪と恐怖から、身体の奥底に押し込め鍵を掛けたはずの能力が、顔を出そうとしている。
共鳴の連鎖反応が、テスに目覚めを促しているのか。
「アダム。マズい予感がするンやけど」
「ああ」
ふたりは声を落とした。本来ならこの先の会話は安全調査局第2課の連中に聞かせたくはない。だが、あちらも感応能力を扱えるので内緒話も筒抜けになる。
どうせ無駄なら隠して変な勘ぐりをされるより、聞かせてしまった方が相手の関心を必要以上に惹かなくて済む。
いや。これから話すことは、是非、関心を持って、盗み聞きして欲しいと青年たちは思っていたのだが。
「覚えてるか? 『狩り』の日もテスの精神状態は不安定やった」
「いきなり意識が陶酔したり、トランス状態になったりして、ヤバい思てる内に事故のショックでついに能力を暴走させおったしなぁ」
「隅の老人」との会話中に幻覚作用に襲われ混乱したまま、テスは事故に巻き込まれて老人の死を目の当たりにしている。パニックを起こし、大騒ぎを起こしたのは一部関係者の間では(箝口令を敷かれたのにも関わらず)噂になった。
「あの時、な。俺らも含め『狩り』に参加した能力者は、みんな重~い不快感ちうか重圧みたいなもんを感じていたやろ」
「せや。モニター越しに観ていたレチェル4の研究室にまで伝わってた云うやつ、な」
ここでディーは少し間を置いた。第二課第2班の能力者がちゃんと盗み聴きをしているのを確かめてから、アダムとの会話を再開する。
そのアダムも、ディーの意図を汲んでか、いつもより喋る速度を落としていた。やり過ぎると不信を招くので、あくまでも気持ち遅め位であるが。
「アレ、テスの精神状態が伝染したンや無いかと思うねん」
「同感や」
あうんの呼吸の青年達だから、この先はあえて言葉にしなくても通じていた。そして、結論も出ていた。
だが盗み聴きをしている者は、まだなにを言いたいのかを理解できていない。
「まさか……とは思うンやけど、な」
「増幅しとるのは、テスか!? テスのふわふわな快感……ちうか温気みたいなもんが増幅装置になって、幸せのお裾分け感覚で周りの能力者さんへ能力割り増しサービスしとるんか!?」
無言でうなずくディー。顔をしかめたアダムも、あの娘ならやらかしかねないといった表情だ。
「いらんこと、せんでもらいたいわ……」
「――しかも、絶対、自覚無いんやで」
鬱の症状に捕らわれて以来、テスの波動や気力の色から覇気が消えた。どちらも暗く重く沈んだまま、出口の無い迷路を彷徨い続けていた。
オーウェンの励ましもヨーネル医師のカウンセリングも、アダムとディーのアドバイスもマリアの罵倒も効果が無かった。
親友クリスタとの共同生活へと戻しても、あまり改善は観られなかったというのに……。
それが今、テスの心はふるふると震えていた。大きく波打ち、高揚している。
感情が渦を巻き、不安とときめきが心拍数を上げている。
それよりなにより、はっきりとテスの超常能力の気力を感じられた。
「超常能力が再度覚醒したことさえ気付いとらん内に、この騒ぎか!」
「今は眼鏡ッ子に夢中になっとって、そんなん露とも考えておらへんからなぁ」
「ちうか、眼鏡っ子に夢中や云うことさえ気付いとらんがな!」
「お灸どころや無うて、お仕置きが必要やわ」
「自分が言うと、ホンマに危なく聞こえんな。ドS顔のディーさんよ」
「まずは己からお仕置きされたいンか? DV顔のアダムさんよ」
キツい冗談の応酬の後、ふたりは動き出した。
急いでテスたちに追いつかねばならない。
その時、ふたりの後方から耳を広げたバスケットボール大の物体が近づいてきた。地上3メートルあたりを浮遊しながら、不審な物や人物を探し出すパトロールポッドだ。
日没後、夜間モード仕様に切り替わったポッドの機体は、淡い光を発して蛍のようにも見える。わざと目立つ姿をしているのは、監視眼が観ているという警告と警備体勢の強固さを、罪を犯そうとする者に知らしめる為だ。
その監視眼が動いて、ふたりの青年の姿を捉えた。
途端。ポッドが彼らめがけて急降下する。
「ひえっ!」
「ほえっ!」
ふたりは素早く左右に飛び退き、ポッドの体当たりを回避した。再び舞い上がったポッドはクルリと反転し、電光石火の勢いで二度目の攻撃を仕掛けて来た。
「なんでや!」
「俺ら、不審者扱いか!」
自分たちの奇抜な服装は棚の上に上げ、ポッドの判断を非難する。けれどもポッドはその抗議を受け付けなかった。
ならば、と。たっぷりとした道化師の衣裳の中から札を取り出したディーは、ポッドの眼を潰そうと、機体中央に取り付けられていたカメラに向かって投げつけた。
見事札はカメラの眼を潰したのだが、ポッドの勢いまでは殺せず、彼の元へと突っ込んで来る。あわや、と思った時――。
彼の30センチ手前で、丸い機体がグシャリと音をたてて潰れ、地面に落ちた。相棒の念動力が、高い硬度数値と耐性を誇る物質で作られた球体の外装を圧縮し、内部のコントロール回路を壊して彼を救ったのだ。
「ありがとさん」
ディーが礼を言えば、
「そのセリフ、もう少し後回しにしとき。ほら、お出ましや」
アダムが顎をしゃくった方向、石畳の歩道の中央に、いつの間にか黒いスーツ姿の男がふたり立っていた。
♡ ♡ ♡ ♡
ベレゾフスキーが出た~!
彫像みたいに整った白い顔と冷たい光を放つアイスブルーの瞳と云う容姿も手伝って、突然目の前に現われたらホンモノのお化けみたいじゃない。
しかも逢魔が時の、人通りの途絶えた、(模倣とは云え)古い街並みの中に、音も無く現われるなんてシチュエーションが良すぎだわ。
(――――でも!)
なんでよぉ!?
せっかくマオとの会話も盛り上がって、もう少しでクリスタも戻って来るって連絡があって、久し振りに楽しい気分になっていたのに!
うっ。
もしかして。雑音が聴きこえるのは、あなたのせいなの?
街路灯の灯具部分が吹っ飛んじゃったのは、あなたのせいよね?
超常能力が、超常能力がまた悪戯を始めたのは…………
「47分39秒ぶりの再会だな。テリーザ・モーリン・ブロン。パブロバ通りからクラビエデス通りまで移動することになってしまったが、お遊びもここまでだ。我々に同行するように」
「イイイイ……イヤよ!」
「そちらの少年。君も同行していただこうか、公務執行妨害だ」
「ダッ、ダメよ。彼は関係ないでしょ」
「だから、公務執行妨害だと言っている」
「彼、未成年よ」
「関係ない。少年は非能力者で、この件には巻き込まれてだけだから、記憶処理をするだけだ。すぐに釈放する」
その時マオが滑るように身体を動かして、あたしの前に出た。ベレゾフスキーの視線から、あたしを守るように。
「話に割り込ませていただきますが、記憶処理とは、なにをなさるつもりなんですか?」
落ち着いた声で、冷静にベレゾフスキーに問いかけるマオ。
こんな時なのに、丁寧な言葉遣いで質問できるのがちょっと怖い。
彼の背中に隠れているあたしからは見えないけど、おそらくふたりの間には冷たい視線が交わされているに違いないわ。きっと。
だって、空気が……。
あたりの空気が冷たくなったのよ。これ、日没で陽が落ちたからだけじゃ無いよね。
ゾワッと、来たもん!
「君の記憶から、テリーザ・モーリン・ブロンを消させてもらうだけだ」
――え!? どういうこと?
「彼女の記憶を?」
「そう。君の記憶を少し操作して、テリーザ・モーリン・ブロンとの接触の事実や会話の内容を消させてもらう。彼女は一般市民ではないのでね」
「……一般市民では無い……? どういう意味です?」
マオが眉をしかめた。
なにを言うつもりなの、ベレゾフスキー。ダメよ。言わないで!
マオには教えないで!
(あたしが能力者だって事実は!!)
ブルッと震えが走る。
頭上で、パシッ! と破裂音が聞こえた。
さっきも聞いた。街路灯の灯具部分が爆ぜる音。
(動揺が能力を暴走させた――!?)
四散して空中に飛び出した破片が、宝石のように輝いている。月の光を浴びて、キラキラと。美しいけど、それは次の瞬間に兇器に変わった。
破片は弾丸となり、あたしたちを襲う。
異変を感じたマオの反応は早い。
左腕で自分の目を庇いつつ、飛んで来る破片が当たらないようにとあたしの盾になる。ショックでボーッとしていたあたしは動けない。
成り行きを目で追うのが精一杯だった。
予告なしの先制攻撃を、部下の能力者が張った防御壁に守られてやり過ごしたベレゾフスキーは、直立不動のまま、高慢な冷たい眼をギラギラと光らせてあたしとマオを見ていた。
「見たかね、君。これがテリーザ・モーリン・ブロンの秘められた能力なのだ。
テリーザ・モーリン・ブロンは超常能力者なのだ」
♡ ♡ ♡ ♡
あたしは長く尾を引く金切り声を上げていた。
その声につられて、クラビエデス通りのお洒落な街路灯の灯具部分が次々と爆ぜていく。あたしの涙の代わりに、砕けた強化ガラスが光の雨となって輝きながら降っている。
身をひるがえし、ガラスの雨を避けるマオ。
思わず身を引くベレゾフスキー。防御する部下たち。
あたしの目には、全てがスローモーションで動いているように視えていた。
(……これって、映画のワンシーンみたい……)
「テス!」
彼の声で、あたしは正気に戻った。
これ以上声を上げ続けていたら、マオを傷つけちゃう! 急いで両手で口を押さえ、声を押し込めた。
さらに。危険に光る雫は、あたしの頭上にも降りかかろうとしていた。だからといってすぐに身体が反応するわけ無い。驚いて目を見開いているだけのあたしの頭に、ポンとなにかが被せられる。
(――――ぇ!)
目の前に現われたのは、流れ落ちようとする黒い滝。
しゅるり、と解けて大きく揺れる。
(……絹糸みたいな、黒い髪……)
あたしの目には、それしか映っていなかった。
だから小さな破片を避けるために帽子を被せられ、突っ立っているだけのあたしの肩を抱いてガラスの降雨の中からマオが連れ出してくれた――と云うことを理解したのは、鋭利な雫が地面に落ちた音を聞いたときだった。
マオが目の前にいる。
彼の息づかいが、こんなにも近く聞こえる。
でも切なくて、悲しくて、恐ろしくて、触れることも声を掛けることも出来ない。なにかしたら、あなたに拒否されてしまいそうで。
マオの瞳が「拒絶」の色に染まるのを観たくないの。だからあたしは縮こまったまま、なにも出来ない。
ガラスの破片が傷つけたのかしら。黒く長い髪に縁取られた陶器のように滑らかな彼の頬に、赤い線が一条走っている。
赤い血がじわりと滲むのが、美しいほど鮮やかに見えた。
近づく彼、後すさるあたし。震えが止まらない。
「……あなたは、能力者だったの?」
あたしは右手を彼の頬へと伸ばす。
ぎこちない指先で赤い線をなぞれば、跡かたも無く傷は消えていった。
さば・ノーブ様、茂木 多弥様、イラストありがとうございました。
今回は、最後のイラストもイメージイラストなので、本編とはちょっと衣裳が違います。
「ねえ、このふたりの間で主役張らなきゃならないのってかなり大変なことなのよ。わかるでしょ?」というタイトルがついています。
わかりますよね? (; ̄ー ̄A アセアセ・・・
さて。ついに能力復活! しかもマオに能力者であることがバレてしまいました。
彼の反応やいかに!?
そしてベーさんは? 間に合うのか、アダムとディー。
以下、次回に続く!!