16. もの思いのカドリーユ その⑤ ☆
しつこいようですが、ロクム・シティは現在『秋』です。
焼き栗は、ほくほくした食感と素朴な甘味が格別だった。夕方になり風も冷たくなってきたから、温かい焼き栗を抱えていると暖も取れるし、なにより空きっ腹に食べ物が入るという幸福感があたしをほっこりと温かくしてくれた。
割れ目が付いているから殻は簡単に剥けるし、中から出てくるハート型の実は湯気が立つほど熱々で。黄金の焼き色とフワリと立ち上る香ばしい香りが、食欲をそそるの。
あたしは、それを次から次へと口に運んでいた。だって、止まらない。無用な味付けのされていない栗はさっぱりとした甘さで、ほろほろと口の中で崩れていく。これなら、いくらでも食べられそう。
熱いショコラを一口飲んで、焼き栗を摘まむ。病みつきになりそうなローテーションだわ。
「あの。一緒に食べない?」
あたしは彼に栗の入った紙袋を差し出した。いくら空腹だとは言え、独り占めは気が引ける。……っていうか、これ、彼が買ってくれた焼き栗だし。
「いいの?」
「あなたも食べて。楽しいことと美味しいものは分け合った方がもっと大きな喜びになるって、親友が教えてくれたの」
「ふうん。あなたが幸せそうな顔をして食べるのを観ているのも、楽しいけど」
さりげなく彼は口元を手で覆い隠した。それって楽しいんじゃなくて可笑しい、よね?
えぇ~ん、年下の男の子に笑われた。食い意地の張った子供みたいだって言いたいんでしょう。
(いぢわるゥ~~~~)
恨めしい表情を作ってにらみつけてやったら、
「それでは――」
と、延ばされた細長い指が紙袋の底の方から栗をひとつ摘まんでいく。
殻を剝き、口に運んでいく仕草が優雅。同じ動作をしているのに 、どうして彼の方がお上品に見えるのかしら?
ボーッと眺めていたら、恥ずかしいような、咎めるような視線を返された。
ばつが悪くなったあたしは、急いで紙袋に残っていた最後の栗を取り出し、殻を剝いて口に放り込む。
ああん、こういう動作が子供っぽく見えるのかも。
残り物の栗はちょっと焦げていて苦かった。
あの切れ長の瞳でジッと見られると、なんだか落ち着かないのよね。長いまつげの下で琥珀色が揺らめく度に、心の中が見透かされているみたいで。
(大丈夫。彼ハ能力者デハナイワ)
知っている。
彼は非能力者だわ。
(アラアラ。ヨクワカッタワネ)
それは……。ん!?
え、どうして?
相手の能力の有無って、自然に感じ取れるものなのかな。
(ソンナコトヨリ彼二名前ヲ訊カナクテイイノ? ソレトモ思考ヲ読ンデミル?)
訊きます! あたしは非能力者だから。感応能力なんて便利なものは無いんですもん、なけなしの勇気とコミュ力を総動員するの。
「あの、さっきの質問。お名前を教えてもらってない……の」
「アタシ」が横から口を出してヘンな突っ込みを入れたものだから、妙な意識が働いて、引っ込み思案が邪魔を始める。
「ああ、そうだったね。僕の名前……」
彼が一瞬の間を置いたとき、いきなり携帯通信用端末機が鳴り出した。なんでこのタイミングで……って思いつつも、彼に断りを入れながらバッグの中から取り出す。
着歴には、アダムの名前が。あたしの救難要請に、オーウェンさんがあのふたりを派遣してくれたの。
「おお、テスか。今、どこにおンねん。面倒やな、テスが能力者やったら感応能力でチャチャっと情報交換出来んのに、あらへんばっかりに携帯通信機に頼らなあかんとは」
「まだ能力復活せぇへんの?」
ディーまで、いきなりなにを言い出すのよ。あたしは急いで彼と距離を取る。会話が聞かれちゃ、マズいわ。
あたしが元能力者なのは秘密事項だよ!
「ラミントン広場よ。知り合いと一緒にいるの」
これで彼らも不必要に余分なことは言わないはず。
「わかった。今地下鉄でそっち向かっとる」
「あと15分もかからんと思う。エエ子で待ってンのやで」
ほら、察しのよい彼らは直ぐに対応してくれたでしょ。
ロクム・シティの市街地では、能力は使えない。
規定によって、認可証を持つ能力者は一般市民居住区で能力を使うことは禁止されている。もちろん任務等で使用許可が下りている場合は別だけど、無断で使うことは許されない。
それどころか生命の安全を守るためとかの特別な理由でも無い限り、無断使用は犯罪行為にされちゃう。
これは不要に能力を使用して市民の混乱を招くことを防ぐためと、今もって根深く残る超常能力に対する誤解から能力者を守る意味もあるの。
迷信と疑惑は、能力者と非能力者の間に高い壁を作っている。誤った情報と知識が不信を育てている。
ようやく義務教育の授業で超常能力に関しても触れるようになったとはいえ、浸透するまでには時間がかかるだろうし、頑なに認めたがらない世代や地域の方が多数派なのも事実。
能力者を「亜種」として、異端視する人だっている。
超常能力はまだ研究途上で、不確かなことが多すぎることも一般に受け容れられない要因かもね。あたしだって覚醒しなかったら能力に関しては疑心暗鬼だったし、余程のことがない限り認識を改めるなんてことはしなかったと思うの。
必要以上に能力を誇示しない。より良い関係を保つために設けられた措置、共存のルールですって。
現在はまだ肩身の狭い状態だけど、いつか能力者も非能力者も、わだかまりなく一緒に暮らせる世界になればいいのに。
「お願い、早く助けに来てね」
彼らだって、浮揚能力を使いたいに違いないわ。その方が移動は迅速なんですもの。
それなのにわざわざ公共交通機関を使って移動しているって事は、まだ任務として上層部の認可が下りていないって事よね。
急に心細くなってきた。
ベレゾフスキーは調査の要請が申請され強制連行と取り調べの許可が下りているって、司令執行許可状を持っていた。それを覆さないと、あたしは強制連行の上に拷……じゃない、取り調べを受けなくちゃならない。
あっちの言い分の方が、合法なんだもん。
同じ公安局下とは云えあいつらとは部署が違う。仕事の内容から云って、秘密主義の秘密厳守だから部署間の情報交換は難しい。その上任務遂行においての余計な口出しは、なにより嫌う。ああ、大人って面倒くさい!
だからこそベレゾフスキーと問題は起こしたくないよね。
オーウェンさん、苦慮しているのかも。不安が沸いてくる。
「どうしよう……」
あたしは半べそをかいていた。
急に、間近に低めの息混じりの声が聞えた。びっくりして、通信端末機を落としそうになる。
「横から失礼します。僕の名前は、鷹栖マオ。彼女の友人です。
あなた方に相談があります。現在ラミントン広場にいますが、ここは周囲を交通量の多い道路に囲まれ、パブロバ通りに接する北側の入り口と地下鉄駅昇降口のある南側の入り口を塞がれたら逃げ場が無い。
追っ手は5名。今のところ追撃者の影は見えないけど、僕が攻め手でこの状況を見たら、人員を二手に分け、入り口を塞いで袋のねずみにするでしょう。逃げ場がない場所へ誘い込んで挟み撃ちにするのは、常套手段ですから。
そうなる前に、ここから抜け出したいんです」
「誰や、この眼鏡ッ子?」
末端機の向こうで、アダムとディーが面食らっている。突然割り込んできて、あたしの代わりに説明を始めるんですもの、誰だって驚くわよね。
しかも彼ったら、ちょっと目を離した間に眼鏡を掛けていた。美人さんオーラが消えて、目立たない子に戻っている。
それより、今、名乗ったよね。名前を言ったわよね。確か……、
(鷹栖……マオって!)
「南側の入り口から広場を抜けて信号を渡り、クラビエデス通りを進みダックワース公園方面へと移動します。おふたりは追い掛けてきてください」
「明快な説明しとるけど、ほぼ命令やな」
「ま、確かに広場にとどまるのは得策やないわ。俺らがそっちに着くまで、あの七三眼鏡の白いのにテスが捕まらんようにしといてくれんのはうれしいんやけど……」
「七三眼鏡の白いの」と云うのは、ベレゾフスキーのことらしい。でも映像のふたりが不服そうな顔をしているのは、別の問題に関して――みたいな気がするのだけど。
なんて思っていると、
「テス、そこの眼鏡ッ子は誰なんや!?」
アダムとディーが斉唱した。
「だ、だから、えっと。友人! ふたりともお願いね」
彼らがしゃべり出すと長くなる。今は余計な詮索をされるもの困るし、されても答えられないから、あとできちんと説明するからと通話を強制終了した。
「ごめん、差し出がましいことした」
「ううん。むしろ完全に面倒事に引き込んじゃったみたいで、謝らなきゃならないのはあたしの方だわ」
「友人にしておいたけど、大丈夫だったかな」
「お友達が増えるのは嬉しいわ。あたし人見知りが激しくて、友達を作るのが下手なの。だから、お友達になってくれるのなら凄く、その……うれしい」
ああん、勝手に頬が熱を持つ。朱いチークを塗りすぎたみたいな顔を見られたくなくて、そそくさと顔を伏せる。
「それと――順番が逆になってしまったけど、僕の名前は鷹栖マオと云う。よろしく」
ああ、ようやく名前が訊けた。彼の口から。
「隅の老人」の時のように、訊けず終いになったらどうしようかと、半ば本気で心配していたの。
「えっと、その……マオって呼んでいい?」
「どうぞ、テリーザ・モーリン・ブロン」
「そこは、テス――でお願いよ」
レンズの奥で、彼が愉快そうに目を細めた。
(いぢわる!)
♡ ♡ ♡ ♡
あたしたちは広場の南口を抜け、クラビエデス通りへと足早に信号を渡る。その間もマオは周囲を気にしていた。
百貨店方面へとそぞろ歩くお洒落なご婦人方に混じり、スーツ姿のビジネスマンの姿がちらりほらり。
日曜日だというのに、お仕事なのかしら?
クラビエデス通りには、大手の銀行や保険会社や証券会社などの金融機関のオフィスが軒を並べている。だからビジネスマンの姿があるのは当然といえばそうなのだけど、ベレゾフスキーたちもスーツ姿だったと思うと、誰もが追撃者に見えてくるのよ。
でも日曜日のオフィス街には、ほとんど人通りは無い。日の入りにはまだ間があるけど、こんなところかえって狙われやすいんじゃないかしら。
「人間の眼は無くても、防犯監視カメラの眼は、そこここで光っているよ。それからパトロールポッドが巡回している。ほら、正面から飛んで来た」
大きな耳のような翼を広げたバスケットボール大の飛行物体が、監視眼を動かしながら前方から飛んで来て、あたしとマオの姿を確認すると、後方向へと飛び去って行った。
「あなたを追っている人間たちの目的は知らないけど、やましいことなら、監視カメラの映像データに姿を残したくはないと思う。ここは金融街だから、防犯システムにはどこのオフィスも金を掛けているし、競って厳重でつけ入るスキを与えない装置を、内にも外にも設置しているようなところだからね。
ほら、動体検知カメラが僕たちを追っている。システムが働いている限り、手は出し難いんじゃないかな」
なるほどぉ。通り過ぎようとしているビルの入り口の上部、小さな監視眼が動いている。
右から左へ。あたしたちの動きに合わせて。
(動イテイル限リ……? しすてむガ止マッタラドウナルノ?)
「あいつらがなにか仕掛けてくる合図になる」
「そうかぁ……って。え、あたし、まだ質問していないわよね!?」
「うん。でも、言いたいだろうことは顔に書いてあったから、先に答えた」
ふぇ~ん。だんだん遊ばれている感がしてきたんですけど。
気のせいよね?
♡ ♡ ♡ ♡
パトロールポッドが再び近づいてきた。監視眼が、せかせか歩くあたしたちを確認する。そのまま飛び去るのかと思ったら、ポッドは反転して、数メートル先の横路地へと入っていった。
「……あのね」
「疲れた?」
「ううん。もうひとつマオに謝らなくてはならないことを思いだしたの」
彼が少しだけ首をかしげた。
「懐中時計を……なくしちゃったの。ごめんなさい」
あたしは立ち止まり、頭を下げた。
「懐中時計って?」
マオは不思議そうな顔をした。
そう言えば、彼は「隅の老人」のことは全く知らないって言っていたわよね。会ったこともないって言っていた。
じゃあ、老人が大切に持っていた懐中時計のことを知らないのは当然なのか。
だからってあたしが「隅の老人」について知っていることだって、ごく僅かでしかない。
奥様からのプレゼントである懐中時計を大切に持っていたこと、それをカフェに忘れたこと、届けようと追い掛けたあたしと老人が暴走車との接触事故に巻き込まれたこと。
その際、銀の懐中時計が紛失してしまったこと。
彼に話せるのは、そのくらいだわ。
「知っていることだけでいいよ。話して」
話しの続きは歩きながら。
ダックワース公園まで続くレトロなデザインの街路灯。灯が点り始めたのを見ながら、あたしたちは石畳の歩道をまた歩み出した。
「――それで。老人はいつもあの席に座っていたの」
「ええ、そうよ。こ~んな気難しい顔をして。まずランチを頼むの。それから…………」
老人の風貌とか、服装とか、頼んだメニューとか。どんな様子でカフェでの時間を過ごしていたのか、とか。細々としたことまでマオは興味深く聞いてくれた。
お喋りしていると不安も疲労も軽くなるわ。しかも彼は聞き上手だったから、人見知りなあたしでも舌がよく回ったの。こんなこと、滅多にないのよ。
ただし、あたしの視た不思議な幻影はマオには話せなかった。老人との会話中に陥った、あの悪夢のような光景。その後も度々現われるへんてこりんな夢も。
あれは、あたしが能力者であったことと繋がってしまうから。
気軽に話せることじゃないし、知られたくないの。
マオには拒絶されたくないの。
臆病なあたしは、あんな眼で他人から拒絶されるのは――もうイヤなの。
でも。
やっぱり疑問が残っている。大きな疑問が、最初の疑問が……。
「教えて、あなたは誰? どうしてカフェ・ファーブルトンにやって来たの?」
(どうしてあたしの脳内画像に現われたの?)
一歩先を歩いていた彼が足を止めた。ゆっくりとこちらに向き直る。
数秒間あたしの顔を見つめてから静かに話し出した。
「頼まれたんだ。あなたが言うところの「隅の老人」という人物から連絡があったら、……もしもそんなことがあったら、その人物に会って欲しい――って」
ぼわり、と脳内に花が溢れた。牡丹に芍薬に、百合の花。次々に大輪の花を咲かせていく。
艶やかな花々。
《なぜ会いに来ない?》
その花の影に隠れるようにして、座り込むうさぎ。杖を放り投げ、足を投げ出して、背中を丸めて……泣いているの?
《テスよ、わからぬのか》
(……来るわ、絹糸みたいな黒髪の……)
でも、それは「奥様」じゃなくて――。
そうよ!
夢で視た「奥様」の幻影は、牡丹と芍薬と百合の花。
でもあたしがマオの幻影と共に視ていたのは、枝に鈴なり咲いた薄紅の花。はらはら、ひらひら舞い散る花だわ。
花は最初から別人だって告げていたってこと?
混同していたのは、あたし。
幻影も。「隅の老人の奥様」と「マオ」も。
じゃあ、奥様って――――
「誰? 誰がマオに頼んだの?」
珍しく彼が口籠もったとき、またあたしの携帯通信用端末機が鳴った。
なに、このタイミング。急いで取り出し、通話ボタンを押す。
「はい。あたしたち、クラビエデス通りを南下しているわよ」
てっきり掛けてきたのはアダムかディーだと思って応えたら、
「はぁン。おまえさん、なんでそんなところにいるんだい?」
クリスタだった!
「クリスタ、クリスタ。どうしたの」
「そりゃ、こっちのセリフだよ。なにやってんだい」
なんて答えたらいいの。イチから説明していると長くなるわ。
「誰かと一緒なのかい?」
ひょええ。どうしてわかるの。
マオのことを伝えようかと迷っていると、彼が無言で口元に指を立てた。アダムとディーの時は積極的に割って入ってきたのに、今度は距離を取っている。
「ううん。ひとりよ」
「リックと一緒、とかじゃないのか」
待ってよ~。なんで、そこでリックの名前が出てくるのぉ。
「だってあいつ、おまえさんとよりを戻したいとか言ってなかったっけ?」
「へ? ――え?
あぁ……言って……あん、ちょっと待ってクリスタ。そんな、……えっとぉ……」
「まさか、別のオトコとデート中とか……!」
ちがーーーーう!!
確かに別の男の子と一緒だけど、デートじゃないし。否定したいけど、マオは黙っていろって目配せしてくるし。
なににしても名探偵の推理、ぶっ飛びすぎです。
「と、ところで、なに? お仕事は終わったの」
なんとか体勢を立て直して聞き返す。
「ああ、今から帰るよ。
でね。ハイウェイバスで帰るつもりだったんだが、ロマン・ナダルのスタッフが、ロクム・シティまで送迎用リムジンで送ってくれるって言うんだ。それに乗って帰るから、予定より帰宅時間が早くなりそうだよ。
今からだったら、一緒に晩ご飯が食べられるだろう。前からテスが行きたがっていたトラットリアへ行ってみないかい。待っておいで!」
「え~、ホント! わかった、直ぐにお部屋に帰るわ……。うん、うん、待っている」
トントン拍子に話が決まって通話を切ったんだけど。
その前に、今の状況をなんとかしなければならないということを考えたら、頭が痛くなってきたぁ……。
イラスト:exa様
♤ ♤ ♤ ♤
――その頃。地下鉄ラミントン駅の出口には、アダムとディーの姿があった。
ふたりがクラビエデス通り方面へと顔を向けたとき、アダムの携帯通信用端末機がメールを受信した。
オーウェンからである。
「来たで。准A級能力者テリーザ・モーリン・ブロン保護の司令執行許可状。これで正式な任務や」
「堂々、使えんな。超常能力」
顔を見合わせて、青年たちはニンマリと笑う。
「ところで、アダム。自分お化けの類いは平気か?」
「なんや、急に」
「さっきの電話に割り込んできた眼鏡ッ子な、覚えてるか」
「ああ、なんでテスと一緒におるんやろう。いけ好かへんヤツや」
苦々しい表情で思い返す、アダム。その言葉にうなずくディーも同じ気持ちなのだろう。
「名前、鷹栖マオ言うたやろ」
「言うたな」
「なぁんか気になったんで、さっきからずーっと調べてんねん」
「眼鏡ッ子の素性か?」
携帯通信用端末機の検索機能を操作する相棒の指が止まらないのを、彼も気にはしていた。
「さっきからなんや熱心にやっとる思えば、それやったんか」
「そうや。けどな、なんべんも個人識別子の検索掛けてンのやけど、惑星レチェルにはそないなヤツは存在してへん言われるんよ。まぁ旅行者ちうこともある思て、検索範囲を広げてんやけど、ぜぇ~んぜんヒットせえへん」
ディーの報告にアダムは目を見開いた。
「どういうこっちゃ」
「それやから、眼鏡ッ子は幽霊の可能性がある言うとる」
「なんでテスが幽霊とデートしてるんや!?」
「俺にわからんもん、自分にわかるか?」
信号が青に変わった。青年たちは不機嫌な表情のまま、クラビエデス通り方面へと大股で渡っていく。ぶつかりそうになったビジネスマンが、思わず道を譲った。
「こうなったら、早うテスたちを捕まえることやな」
「本人から聞き出すのが、一番手っ取り早いわ!」
クラウン姿にコスプレした青年たちは、周囲の奇異なものを見るような視線をものともせず、金融街へと突き進んでいった。
さあ、役者が次々と舞台に舞い戻ってきました。
アダムとディー、クリスタ……。『テスとクリスタ』らしく、騒々しくなってきました。
そして、遂に「美人さん」のお名前がッ!!
もうラストまで出て来ないんじゃないかと、わたしの方が心配していましたが、よくやったぞA&D!! しかしまた謎が増えた。
exa様よりFAをいただきました。眼精疲労で苦しんでいるときにいただいたもので、とても励みになりました。
本当にありがとうございました。最後まで頑張ります!
――と云う訳で、次回は新章へ。
ベレゾフスキーとマオのチェスゲームも詰めに……入れるか!?




