introduction~ひとりごと ☆
人はなぜ宇宙を目指したか……。
そんなの、知らない。だってあたしが生まれた時には、すでに人類は宇宙で暮らしていたんだから。
さぞかし宇宙にあこがれていたんじゃないのかな?
何故かは、わからないけれど、ね。
昔々、人類の前身が地球で暮らしていた時から、頭の上には空があった。
だから毎日、仰いでいた。
毎日毎日空を見て暮らしていたら、あるときその上に、さらに広くて大きな宇宙というものがあることを知った。
そこに山があるから山に登る人類という種族は、そこに宇宙があるから、そこに行きたくなった。
そんなもんじゃないの。
すごいのは、それを実現しちゃったこと。
憧れを夢のまま終わらせずに、あの手この手を使って、ホントに宇宙に飛び出しちゃったこと。
まあいろいろ失敗やら、苦労はあったらしいけど、それでも諦めなかったのは立派じゃない。
えらい、えらい。
昔の人って、偉大ね。
それで、「さあ宇宙に飛び出そう!」って云ったって、そう簡単にはいかないわよね。「ちょっとコンビニ……」ってのとは、訳が違うもの。
だって、まず、人間は空気と重力が無くちゃ生活できないんだから。短期間なら重力ナシでもイケるみたいだけど、生涯浮遊しっぱなしって訳にはいかないでしょ?
そこで、やっぱり人類ってがんばっちゃうのよ。宇宙ステーションなるものを足場に、宇宙に人口の浮島浮かべて宇宙移民を始め、それから100年も経たない内に、宇宙空間を高速ドライブでジャンプすることを覚えちゃった。
今じゃ、銀河ハイウェイよ。木星まで、ひとっ跳び~~。
アステロイドベルトは、新興住宅地って。
……で、あたしはそこで生まれ育ったの。
今まで人類は宇宙を開拓――という名の侵略……、だってさぁ「じゃあここで生活しようか」って決めた場所を、自分たちの都合のいいように改良してしまうのよ。
土地に感情ってものがあるのなら、とんでもない人格無視だと思われても仕方ないほどの、荒っぽいやり方で突き進んできたんだからね。
あたしでも、「これは酷い」ってケース、山ほどあるんだから。
よく宇宙間大戦争が起きなかったわね、って思うわ。思うでしょ?
どれだけ人類が宇宙にあこがれ、宇宙開発については過去のいざこざをいっさいチャラにして一致団結で幾多の難局を乗り切っちゃいました、って云う証拠みたいなものかしらん。
――残念ながら、内戦は後を絶たない状態なんだけど。
悲しい話よね。宇宙に出ても人類は争うことを忘れなかった、良くも、悪くも。
はあぁぁ……、溜め息出ちゃう。
その侵略に近い開拓を推し進めてきた頑固な人類も、そろそろ宇宙生活に適応した進化をしようって気になったようで、最近は「能力者」なる亜種が誕生するようになったと、ニュースで言っていた。
なに!? 「能力者」って。「亜種」って。
なんだか差別用語みたいで、嫌じゃない?
あたしには、よくわからないわ。後で、検索してみようかな。
♡ ♡ ♡ ♡
あたし……? あたしはテリーザ・モーリン・ブロン。通称、テス。
惑星レチェルのカヌレ総合大学に通う18歳の女の子。身長155センチ、体重とスリーサイズは秘密よ。
親友のクリスタ・ロードウェイと一緒に、ルームシェアして生活中。
そうよ、あのモデルの、クリスタよ。幼馴染で親友。いいでしょ、ちょっと自慢。
髪はプラチナブロンドで、くせっ毛のショートヘア。
瞳はライトブルーで…………
(ソレデ、オマエハ、何者ダ……)