明日世界が滅ぶなら
明日世界が滅ぶなら
何気ない会話の ちょっとした空白に 君はそう切り出した
明日世界が滅ぶなら 君は何をするの?
ありふれた質問だった
無人島に何を持っていく? とか 人は死んだらどうなると思う?とか
僕らぐらいの少年少女たちが 何度も口にしたような質問だ
何をするの?
君はもう一度繰り返す。
世界が救われるように頑張るよ
君は黙ったままだ。
そうじゃないでしょ と 君は思っていた と思う
窓の縁から吊るしていた風鈴が涼しげに鳴る
多分 何もしないよ いつもと変わらない
世界が滅びる前兆がないなら なおさらね
私はね
君が口を開く
思いっきり笑って 泣くかも
そう口にした君は いつもと変わらない
口の端を上げて 口元だけで笑う
それを見る度に なんだろう
君は恵まれているんだろうけど 何一つ不満はないんだろうけど
よく分からない 雨上がりの後の空気みたいな
捉えどころのないものを 抑え込んでいるのかなと思ってしまう
ねえ 君は何するの?
僕は小さく深呼吸をして いつの間にか乱れていた呼吸を整える
もしかしたら 僕たちは似たようなものを抑え込んでいて
だから 君はここにいるのかもしれない
そんな質問をしてきたのかもしれない
蝉の声が 青い夏の空に響く
もしかしたら 僕は これから何もできないかもしれない
迷い続けて 明日世界が滅ぶ日がきたとき
僕は決断しなかった日々に後悔するかもしれない
何もないじゃないかと 誰もいない部屋で嘆いているかもしれない
大丈夫
君は立ち上がり 夏空を切り取った窓を背にする
明日もきっとくるし
まだ夏は始まったばかりだからさ
明日世界が滅ぶなら
そう言った君は そのまま夏空に浮かぶ雲の先まで 飛んで行きそうだった
こんにちは。大藪鴻大です。最後までお読みくださり、ありがとうございます。
この詩は、『明日世界が滅びるなら』と『夏』をテーマに活動報告で書いたものをそのまま投稿したものです。明日世界が滅びるなら、何をしますか?
ちなみに、私は夏が大好きです。始まるときの高揚感も終わるときの切なさも、どちらも好きです。あと、どの季節よりも空が青くて、広いように感じます。
それでは、またどこかでお会いしましょう!