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シャンゴリラガールズ~三姉妹巨女伝~  作者: 犬宰要
風の加護、森に揺蕩う光の風を感じよ
54/62

50-そして、再会

 ツェリスカの服装、基本はザクロ・リリウムに見立ててもらっている。襟付きのシャツに女性だとわかるように最近では胸元が空いたクールセクシーな感じでなっている。革製のアーマーを動く時に妨げられないように装備している。前線での戦闘するような格好ではないのは、魔導本による遠隔攻撃で戦闘が終わってしまう為だ。

 後ろ腰には魔導本を収納するホルスター、右太ももには大剣にも変形するベヨネットハンドガンが専用ホルスターに収納されている。今までは大剣を背負っていたが、後ろ腰の魔導本とあたってしまうのもあり、ベヨネットハンドガン状態にして太もものホルスターに収納される形になった。

 どのみち、野営などを行う道具を入れたバックパックを背負うのもあり自然とそうなったのだった。全体的に白をベースとした紫黒色をした服装になっており、伸縮性のあるぴっちり目な布製のパンツ、胸元は空いている襟付きのシャツ、急所となる部分は革製のアーマーであしらった格好をしている。


 ツェリスカ本人は気に入ってるとのこと



 山の中、ツェリスカとザクロ・リリウムの二人は真っ赤に燃える炎から逃げていた。

「灰に成りやがれ、死に去らしやがれ!ケーッケッケッケッ!」

 コーディネイト・アーデル・ラーンブレイズ、彼女を知る国の者は今の彼女を見たら別人だと思うだろう。端正な顔立ち、誰もが可愛い、美しいと思う顔立ちは醜くく歪み、おぞましい表情で塗り固められていた。悪鬼という表現がしっくりとくるような形相であった。


 そんな彼女はあたり一面を業火の海にしながら、ケタケタを笑いながら叫んでいた。


「死ね!死ね!死ねぇぇぇい!!!」


 彼女の言葉と連動して、爆発音と火柱が上がっていった。夜にも関わらず火の光によって空が赤く染まっていた。神聖マナ樹国ドラシアルユースから北に位置する山々は、今までにない山火事になっていた。

 領土としては最北端である為か、神聖マナ樹国ドラシアルユースとってはそこまで重要な場所ではないのか、コーディネイト・アーデル・ラーンブレイズは容赦なく術を展開し、火攻めを行っていたのだ。彼女は神聖マナ樹国ドラシアルユースの騎士団の団長であったが今はすでにその地位はなく、ただの暴女と成り下がっていた。


 この山は山賊の根城とされており、猟師などもあまり近寄らない場所とされているが冒険者クラスになると山賊相手に引けは取らないので使われる事が多い。また、行商なども護衛をつければ比較的に安全に通れる事もあり利用されていた。

 しかし、その場所が大規模な山火事なり、木々が焼ける轟音と共にケタケタと笑い声が聞こえる地獄とかしていた。空を見上げると人の頭くらいの火球が宙を無数に舞っており、所構わず降り注いではまた火球が形成されては火の雨が降り続いていた。



「ザクロくん、計画火事の予定でもあったのか?」

 火の玉の雨が降り注ぐ中、ツェリスカは走っていた。

「グラントリア内陸北部では火の雨が降るという予報も出てないわ」

 ザクロ・リリウムもツェリスカと同じく走っていた、体格が違うのもあり全速力に近かったが、息切れはしてなかった。術式による肉体強化を一時的に行っており、体力や筋力の強化を行っていた。

「それにしてもこの術、すごいね…自分の身体が今まで感じたことないくらい軽い…」

「ザレクはこういう術式が得意だったからな、そういえば山道から逸れて行ってるのは―」

「この火の広がり方、どうにもあのまま山道を使うと間違いなく逃げ場が無くなるわ。突っ切るにしても嫌な予感がするしね」


 二人は山道から外れ、山の中に入っていき、火の手から逃れていった。二人はコーディネイト・アーデル・ラーンブレイズがこの山火事の元凶だとは知るよしもなく、自分たちが狙われている事すらもわかっていなかった。ただ、火の手から逃れるべく、行動をしているだけだったのだ。

 ツェリスカとザクロ・リリウムは彼女から執拗に狙われていることにすら気がついていなかった。またこの火事も人為的なものだとしても誰がやっているのかさえ、二人は知る由もなかったのだ。


「確か地図によれば、この先に川があったから、それを超えれば火の手も流石に来ないと思う」

「ザレクが何か言いたそうにしていたが―」

「ツェリスカはね、用事が終わるとすぐに帰還させるのもどうかと思うよ。ザレクちゃんやマゴクちゃんは本当は一緒に居たいだろうし…」

「いやそうは言ってもな―」

「はぁー、もうツェリスカはもうちょっとあの天霊種族(アイオーン)たちにやさしくしたら…」

「や、やさしくか…それはかっこいいに繋がるか?」

「…ま、まあ…繋がるんじゃないかな?」

「そうか、善処する」


 川を超えた先に、湖畔があり二人はそこにたどり着き、野営をすることになった。ツェリスカは野営準備にとりかかる中、ザクロ・リリウムは魔導本を取り出していた。魔導本を開くと背表紙が燃え始め、淡い炎がゆらりゆらりと揺れていた。

「炎の原書(バーンオブイデル)よ、応えろ…いでよ、イデルマージ」

 ザクロ・リリウムは唱えると、髭もじゃのハゲた炎の爺さんが現れる。

「ここはもう精霊の森じゃないのか…」

「何よ?文句あるの?滞在中、出来る限り好き放っておいたでしょ…」

 ザクロ・リリウムは精霊の森にいる間、魔導本の中にいつイデルマージが出たい出たいと言ってきたので、彼女は出来る限り好き勝手にさせていたのだ。

「しかしの…」

「はぁぁん?」


 ツェリスカは野営準備をしながら、ザクロ・リリウムとイデルマージのやり取りを見てて「やさしく」という意味がいったい何なのかよくわからなくなっていた。

(それにしても、川を超えてから何か妙な感じがするな…危険という感じはしないのだが、何かセーブポイントが近くにあるような感じだな)


 実は湖の底にはセーブポイントのモニュメントがあり、それが湖畔まで枝分かれして岩として出ていたのだった。その気配にツェリスカは気づいていたものの、それがどの岩かどうかまではわかってはいなかった。

(はぁ、何か奇妙な感じだな…)

 ツェリスカはひしひしと妙な感じに疲れてしまい、近くにあった岩に腰掛けた。野営の準備はすでに済んでおり、焚き火も炊いてある状態だった。ちょっとした気が緩みから、腰掛けた岩がセーブポイントと同じ気配を出している事にすら気づかないままだった。


 モニュメントに触れたツェリスカは、前と同じように宇宙の中みたいなところに放り込まれた。あたり一面煌びやかに星の光がゆっくりと流転し、浮遊感漂う中で上下がわからない感覚が身体に襲っていた。

 不思議と不安や恐怖はなく、彼女は慣れていた為か「またか」という思いがあった。程なくしてあたりを見渡し、タヴォールやダネルダネルの姿を見つけようとした。


「君はかっこよく生きたい、そう今は思っているのか…。世界は君を認めるよ、君の生き方を」


「誰だ!?」

 ツェリスカは今までになかった声に対して緊張感を露わにした。この空間そのものが誰かしらに作られたもの、という思考が働き自分はそこにおびき寄せられたという答えを導き出していたのだ。

(この空間…そういえばそもそもなんなんなだ?)


「ここは世界と世界の狭間だよ」

「なっ!?」

「ははは、まあ驚くよね。まあ、僕はこの世界の神みたいな存在だ。用件を伝えよう」


 ツェリスカは相手の姿は見えずとも、存在はらそこらかしこにあり、声はハッキリと聞こえ、絶対に勝てないという危険信号が頭に鳴り響いていた。


「ああ、怖がらなくても大丈夫。言いたいことは―」


 突如、身体を揺さぶられる感覚が身を襲う。

「ツェリスカ!ツェリスカ!大丈夫?」

「…んっ?ああ?うん?」

 あの何者かが何かを言う前にツェリスカはザクロ・リリウムに起こされる。


「今のはいったい…?」

「どうし…ってこの岩ってセーブポイントじゃん!」

「ホッホッホッ、まさかこんな所にあるとはのう」

 ザクロ・リリウムとイデルマージが驚き、ザクロ・リリウムはセーブポイントと共鳴させ登録をしていた。


「これでよし、っと…ん?どうしたのツェリスカ、大丈夫?」

「いや、私にもよくわからない」

 ツェリスカはセーブポイントに腰掛けながら、手で触れなおしていたがさっきと同じように宇宙の中のようなところに意識が飛ばされることはなかった。

(神みたいな存在…用件とか言っていたな、いったい何を言いたかったんだ…?わからないことがまた増えたな…)

 もやもやとしたものが彼女の胸にあったが、いろいろ考えても仕方ないと思考を切替えて彼女はザクロ・リリウムとイデルマージと共に野宿をした。夜の番は交代制ではなく、イデルマージが行うことになっているため、朝まで二人はぐっすりと寝ることが出来たのだった。


 モンスターなど出現したとしても、大抵イデルマージが倒してしまうくらいの強さを持っていた。イデルマージが苦戦するようなモンスターが出現した場合は、召喚主であるザクロ・リリウムに察知するため基本野宿はこういった形で番をさせていたのだった。一瞬で殺されるような相手が来たとしてもツェリスカが先に察知するため、夜の番をしなくてもどうとでもなってしまうこともあり、あまり対して危険はない。


「まあ、でもここにセーブポイントがあって助かったわ」

「見たところ誰も管理してなさそうだが…」

「昔、ここに都市でもあったのかもね」


 セーブポイントの周りには基本モンスターなどの生活に脅威になるものは近寄れないように結界が貼れる仕組みになっているのだが、整備や管理されていないセーブポイントではその効力が低い。


「さっき共鳴でわかったのだけど、一部の機能はまだ有効化されててモンスターなど近寄れなくなってるから、夜はある程度安心出来そうだよ」

「そうか、便利なんだなセーブポイントは」

「そうよ…ってもしかしてセーブポイントの事を説明しなかったっけ?」

「いや都市内だと転移が出来るとか、セーブポイントそのものが都市のエネルギー源として活用されていること、あとは害意などを察知してくれる等知ってるぞ」

「なんだ知ってるんじゃん」


 セーブポイントはツェリスカがもつ認識であっている。しかし、不滅者(プレイヤー)ではその意味合いが変わってくる。ツェリスカが知っている事以外に、セーブポイントは不滅者(プレイヤー)が何かあった際に戻れる装置でもあった。


(ここにセーブポイントがあるってことは、この湖の下に何かありそうね…とはいえ、それを今確かめるのはよくないよなぁ…潜るにしても準備とかもあるし)

 ザクロ・リリウムは、なんとなく湖の底に何かあると感が告げていた。


 ツェリスカはそんなことを梅雨も知らずに、セーブポイントに触れながらさっきの出来事を思い出していた。



 山火事は三日三晩続き、角有種族の仕業だったとは噂にすら上がらなかった。しかし、「炎の悪鬼」「火鬼」「炎魔神」が森に現れたといった噂が広がっていった。事件扱いされ、討伐クエストが冒険者ギルドに貼られるようになった。


 ツェリスカとザクロ・リリウムは山火事で遠回りはしたものの、タヴォールとン・パワゴが滞在している街へ到着する。そして、そこでタヴォールとン・パワゴと再会を果たすことになった。


「ツェリ姉さん、久しぶり…その―」

「いい、私が悪かった…すまなかった」


 二人は無事に仲直りし、その様子を見ていたザクロ・リリウムは少しだけ目が潤んでいた。ン・パワゴの方は微笑しながら、腕を組み頷いていた。


「長らく会ってなかった、久しぶりだよな。こうして元気そうに五体満足でよかったよかった」

 ン・パワゴは笑いながら言う。そして、さあこれから再会の祝杯をあげようとばかりに飯屋を指差していた。

「そうね、私もお腹減ったし、食べましょう」

「せやな、ザクロはもうすでに呑んだくれてるけれど、な」

「はぁぁん?」

「あぁぁん?そのポーション割りはなんだよ?」

「水分補給ですぅー」

「アルコール混じってるやろ」

「それがー?」


 ツェリスカは二人のいつものやり取りを見て笑みをこぼしながら、またこの4人で過ごせる事に安心感を持っていた。タヴォールも同じくツェリスカという姉がこの時代に合った生き方を見つけてくれたような気がして、安心感を持っていた。


 これから自分たちの産まれた研究所で知るルーツが何を示すのか知らずに―

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