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シャンゴリラガールズ~三姉妹巨女伝~  作者: 犬宰要
風の加護、森に揺蕩う光の風を感じよ
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37-精霊の森へ

 有角種族、エルフ種族は大気中の力を呼吸するように取り組み体内で一体させる。周りの大気を感じるため、大気中の力の流れが滞っているかどうかで、異種族かどうか「臭い」でわかる。厳密には「臭い」ではないのだが、大気の力がそこだけ滞っている為、何か、あるいは誰かかがいるとわかる。

 そのため、感知能力に長けていると言われているのはこの差である。感知できる範囲は個人差があるが、「臭い」に敏感なものは1キロ先だろうかわかると言われている。

 この二つの種族は産まれて自然と大気中の力を取り入れ、一体化出来る。しかし、他種族の場合は自然と出来る者は少なく、鍛錬や修行を経て出来るようになる。人種はそれを仙人と呼ぶ。





 神聖マナ樹国ドラシアルユースには五元色の騎士団と呼ばれる選りすぐりの強者たちが存在する。そして、決して領内で彼らの逆鱗に触れてはならないと言われている。

 この五元色の騎士団は、神聖マナ樹国ドラシアルユースの5本柱であり、圧倒的な力であった。赤、青、緑、茶、黄の五色の騎士団はそれぞれ特徴があり、ドラシアルユースを守る盾でもあり、侵略してくる不届き者に対しての剣でもあった。


 真朱(しんしゅ)の旅団、赤の色を持ち長女コーディネイト・アーデル・ラーンブライズ、長男フォトン・ワーデル・ラーンブライズ、次男リオネイル・ワーデル・ラーンブレイズの三姉弟が治める騎士団である。

 旅団と名乗っているのは、元は冒険者として名を馳せておりその名残として名乗っている。ラーンブライズ家は有角種族イフリート種の名家として知られている。


 青鈍(あおにび)の衆、別名湖畔の騎士団と呼ばれている。全員仮面を着用しており、素顔は同じ団員のみ開示されている。青鈍の衆になると親しい友人などにも告げてはならず、国を守る秘密の衛兵となる。

 仮面をしているのは、冒険者や他国との交流が増えた事による様々いざこざによるもので起因していた。それ以来、仮面をつけるようになっており、仮面そのものも魔道具としての術式も組み込まれている。


翡翠の森

 ルゥファ・ルクス・アルスクイン、神聖マナ樹国ドラシアルユースの神聖マナ神教の聖女である。角有種族のドリアード種であり、木の加護を持ち豊穣を司る種族とも言われている。木々や大地の力を引出す、戦闘時になると森や大地がある場所を思い通りにする程の力を持っている。支援の方が向いていることもあり普段は戦うといったことをせず、森の管理を主に行っている騎士団である。

 ルゥファ・ルクス・アルスクインは慈悲と慈愛の聖女という異名も持っている。そして彼女も貴族である。


狐色の群れ

 トロット・バーミュニント・カラビアン、名門貴族カラビアン家であり、エルフ種族ハイエルフ種。狩猟などを主に請け負ったりし、森内のモンスターなどの討伐をしたりしている。騎士団ではあるが、冒険者にまかせておくと森が荒らされる事があるため、狩猟などのクエストを行ったりもしている。また、領土内の森や湖など冒険者が荒らされていたりしていないかどうかの監視なども行っている。


黄蘗(きはだ)の葉

 フェリクス・ヴェニシェッチ・シェバビアン、名門貴族シェバビアン家の騎士団。騎士団と名乗ってはいるものの、他の騎士団と違って国内の食料や木材、加工物の貿易などを行っている。財政を司っており、各種ギルドの管理統括を行ってもいる。また騎士団としての一柱でもあるため、騎士団としての戦闘能力は高い。


 彼らが同じ場所に集まることはほぼ無い、例え皇帝国が攻めてきてもそれは変わらなかった。彼らは領地内に侵入してきた不届き者をただ淡々と排除していったのだ。ただ、交流がないわけでもなく、互いに情報交換など行ってはいる。


 森と湖、山あり川あり、渓谷もある…とこれだけ自然が溢れていて「自然の要塞」と言われてもあまり諸外国はピンとこない。この国全体に特殊な力場を発生させているため、飛空挺は気球型でないと飛ぶことは出来ず、浮遊石型だと力場の影響で失速し、墜落してしまう力場が発生しているのだ。


 精霊の加護と神聖マナ樹国ドラシアルユースでは常識として認知されていることであり、建国当初からその力は衰えることなく続いている。また、角有種族とエルフ種族はこの力を自然と扱えるため、戦闘時に強力な魔法や膂力を発揮するのだ。空中から一方的に物量で押し寄せてこようとも、本国に着く前に失墜する事があり皇帝国は攻められないでいた。


 また、地上から進軍したとしても精霊の加護による力の差から攻められないでいた。とはいえ、皇帝国も何もしていないわけでもなく彼らの領土内に城を築き侵攻はしている。その城の建設が秘密裏にされたわけでもなく、堂々と建設されたのには訳があった。


 そこは精霊の森内であり、角有種族、エルフ種族であろうと精霊種族の許しを無しには入れない禁止区域だったのだ。有角種族とエルフ種族は精霊種族を守る為に兵や騎士団を派遣したが、精霊種族に断られ、自分たちでなんとかすると強く言われたのだ。


 さて、そんな事情を知らずに精霊の森へと行く船場に来ていたザクロ・リリウムとツェリスカは船場で兵士に囲まれていた。


「貴様ら怪しいな、何の用で精霊の森へ行こうとする?答えよ!」


 エルフ種族の男衛兵が二人を怒鳴りつける。この国の衛兵は全員木彫りのマスクをしていた。武装は弓矢と槍、短杖を装備している。


 普段、精霊の森は解放されているが皇帝国が攻めてきてからは精霊種族が門を閉ざしているため誰も近寄れなくなっていたのだ。


「私たちは精霊の森に呼ばれたから行きたいだけなんだけど?」


 ザクロ・リリウムはイライラしながら向けられた槍に物怖じせず答える。その反応にカチンときたのか、衛兵たちは槍に力を流し込み、視認出来るほどのエネルギーの刃を形成させ、二人に突きつけていた。


 カタカタとツェリスカの魔導本が突如として動き出す。腰にしっかりと止めているので本来、カタカタと動くような事はなく、ツェリスカ本人も眉を上げ不審な顔をする。

周りの衛兵たちは今すぐにでも槍を突き刺そうと力を込め、一気に場の空気が凍りついた。ザクロ・リリウムはツェリスカの魔導本を見るとギョッとしていた。


 ツェリスカの魔導本のほんの少しの隙間から7枚の羽を持つ妖精、ザレクとマゴクが出てきた。


 ツェリスカはこの二匹を当時魔導本を渡された時に、そこに付随するかのようにすでに召喚されていた状態で会ったのだ。

 本来、つまる所ツェリスカとこの二匹との関係は召喚者と契約関係ではなく、戦場での仲間みたいな関係だった。もちろん、上下関係はあるもののこの時代における召喚士という生業からすると「異常」なのだった。


 なぜなら勝手に召喚されてきたのだから…


 ザクロ・リリウムは口をポカーンと開けたまま、呆れに近いような、更に絶望的な状況になったような顔をしていた。

 ツェリスカも冷や汗が出ており、思わず手で顔を覆いたくなっていた。だが、状況が状況のためか周りへの警戒をし、いつでも逃げれるようにしていた。もちろん、逃げたとしてもすぐに見つかってしまうのでこの国から指名手配なりされる。


 ツェリスカとザクロ・リリウムはこれからこのザレクとマゴクが下劣な言葉を吐き出して、更にどうしようもない状況になると確信していたからだ。


「控えよ!この者たちは我らの客人で在られる!」

「そなたたちの無礼な行為、今は目に瞑ろう。武器をおさめ、我らの森へと案内しろ。ザクロ・リリウム殿、ツェリスカ殿、遠い所から遥々とご足労頂き、感謝致す」

 ツェリスカとザクロ・リリウムはマゴクとザレクの姿をした何かが、何を言っているのを認識出来なかった。


 周りの衛兵たちはすぐに槍を収め、先ほどまでの敵意がうって変わり客人への対応と変わっていき謝罪の言葉が出てきていた。しかし、腑に落ちない点があるのか、衛兵たちは訝しんでいた。今まで精霊種族から「客人」として呼ばれた者などいなかったからだ。

「本部に確認をして、こちらからお送りさせていた―」

 偉そうな衛兵のザレクとマゴクに対してしかるべき手続きを踏み、彼女たちを精霊の森へと送り届けるつもりだった。


「必要ない、私達がこのまま一緒に今から行くのだから…それとも何か問題があるのか?船を出すのだ」

 ザレクが船着場の衛兵に向け、告げた。


 彼ら衛兵たちは少なからず、正式に呼ばれているのであれば国を通して精霊の森へ送るもので、このまま行かせるのは何かが腑に落ちないと告げていた。


「さっさとしろ」

 マゴクが衛兵たちに向けて、静かに、そして強く言い放った。


 偉そうな衛兵もその周りにいる衛兵も萎縮し、マゴクの言う事に従いザクロ・リリウムとツェリスカは船着場の船に乗り出発することになった。


 この時に偉そうな衛兵が自分も着いて行くと申し出ていたが、ザレクとマゴクに必要ないと一蹴し、退けられた。

 十数人乗れる大型の船にツェリスカ、ザクロ・リリウム、ザレクとマゴクが乗っていた。操舵手ももちろんいるが、久々の精霊の森への出航と精霊種族であるマゴクとザレクを乗せているのもあり、かなり緊張していた。


 ツェリスカとザクロ・リリウムはザレクとマゴクになされるままに船に乗り、精霊の森へと向かう中、今までと違うザレクとマゴクの態度と言動に不安を感じていた。

(私が知っているザレクとマゴクじゃない…いったい何が起きてるんだ…)

 ツェリスカは今までと違うザレクとマゴクに対して調子が狂い、怖いという思いがあった。今までほったらかしにしていたのもあって怒り方が一周回って変な方向にいってしまったのではと感じていたのだ。


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