4-海の虎と呼ばれている海賊
海洋国家メイルブラドゥ、多種多様な種族が様々な目的をもってこの都市にやってくる。その中で入出管理部門は毎日が忙しい、それと同時に犯罪者が紛れ込んでいないかなと目を常に光らせている。犯罪者が紛れ込んだとしても、その日のうちに特別な部隊によって気づかない内に捕縛されるとも言われている。
◇
召喚士リリウム、彼女がもたらした功績は大きい。そのため、彼女が都市に入った時点で国の重鎮の耳に入っていた。そして、彼女が引き連れた巨人族のツェリスカの存在も認知されていた。
そして運悪く、それなり以上のランクの冒険者でないと達成できそうにない問題があったのだった。
◇
都市部の中心に近く、塔が入り組んでおりその中にある酒場。過度な装飾もなく、広々とし、多くの冒険者がくつろいだり地図を見たりしガヤガヤとしていた。空いているテーブル席はいくつか残っているものの、結構な数の冒険者がいた。
外に通じるベランダにもテーブル席があるが、柵などはないが下層には更に大きめなベランダがあり落ちても少し怪我する程度だ。
カウンター席は半扇型になっており、棚には多くのお酒が並んでいた。働いている店員は獣人族の猫種と犬種で耳をピクピクさせつつ、しっぽが時たま左右に揺れていた。どれも女性だが、彼女たちに触れようとはしなかった。
彼女たちはここで働く前までは冒険者であった為、手を出したら相応の支払いと手痛い目にあうからだ。それを支払ってでも行う輩はいるらしいが、そうなる前にパーティメンバーに眠らされ、連れて行かれる。
「マスター、久しぶり!依頼を受けにきたわ」
カウンターの奥に暇そうにパイプをふかしている髭面がツェリスカを見る。ザクロ・リリウムはマスターから見えない位置だ。
マスターは顔をしかめ、口を半開きにしながらツェリスカに問う。
「あんた冒険者か?見ない顔だな、何にする?」
さっきの声は幻聴だと思ったのだろう。小人族のザクロ・リリウムはマスターからは見えていないからだ。
「ちょっと!無視しないでよ!ここよ!ここ!」
ザクロ・リリウムはカウンターの椅子によじ登る。ようやく二人は顔が見える状態になるとマスターは笑顔になる。
「はっはっはっ、すまないすまない。いやぁ懐かしい声だなと思ったが幻聴かなと思ったものでな。依頼だったな…内容の話をする前に勇者の噂を知ってるか?」
「勇者?なにそれ」
「そうだったな、お前さん引きこもっていたんだっけな…最近、勇者なんじゃないかと思われる冒険者が現れてな、そいつらが今まで海の虎と呼ばれている海賊の拠点一つを潰したんだよ」
ザクロ・リリウムは海賊の拠点、一つや二つ潰されることはよくあることじゃないと思っていた。
「いや、今まで拠点の場所がわからなかったんだ。国が探していた拠点だぜ?それを一介の冒険者が見つけて、数人で潰してしまったんだ。そりゃ勇者じゃないかって言われてるんだよ」
「それが今回の依頼とどう関係してるのよ、勇者とかどうでもいいわ」
マスターはパイプを吸い、ため息と共に紫煙を吐き出す。
「依頼内容はこうだ、その潰された拠点後を調査してきてほしい。国から調査団を送って、調査が終わってその場所を閉鎖しようとした時に奥から奇妙な声を聞いたんだ。そして兵士を何人か派遣したんだが、誰も戻らなかったんだ」
「調査依頼ということか?」
ツェリスカはマスターに問いかけると頷かれる。
「ああ、だが奇妙な声の正体と派遣された兵士の探索だ。交戦しそうになったら何者かだけは確認してきてくれ、あとは軍の仕事だ」
「奇妙な声…ねぇ…?セイレーンの眷属だと面倒ね」
「まあ、そういうことだ。場所はここから船が出ている、北のバレンウェーブ都市に行って軍が駐留してるから詳しくはそこで話を聞けばいい。うまく海流に乗れば2,3日でつけるはずだ」
マスターから紹介状を受け取ると、ザクロ・リリウムが横からそれをちょうだいという感じに手を出してきたので渡した。
「じゃあ、見てくるね」
「ああ、早速頼む」
ツェリスカはザクロ・リリウムに連れられるがままにバレンウェーブ都市への定期船に乗せられて向かう事になった。ちょっとした遠征になるのだから準備とかが気になり、ザクロ・リリウムに準備は?と聞くものの、大丈夫の一言で終わった。
船に揺られる事、数日の間は特に気候やモンスターなどに出くわすこともなくバレンウェーブ都市に着くことが出来た。
「久々の船旅っていうのも悪く無いものね」
船から降りて伸びをしながら上半身のストレッチをしていた。
ツェリスカは、巨人族であるためか船内は狭く感じ窮屈だった。同様に彼女も上半身の具合を確かめるように腕などのストレッチをする。
「さ、必要なものを揃えるわよ」
彼女に連れられて、まずはカバンを買ってもらう事になった。
「大きいんだから荷物持ちはお願いね」
ニヒヒと笑う顔を断れるわけがなかった。
「任せておけ」
その後、携帯食料など旅に必要なものを購入した後に、滞在してる軍の偉い人と会うことになった。
「これは召喚士リリウム殿!あなたが来てくれるは!―」
「前置きはいいわ、場所はどこ?」
ツェリスカはこのザクロ・リリウムという小人族はかなり使い手なんだろうと周りの反応を見て思っていた。彼女自身を助けてくれた事からそれなりに力がないと無理だ。小人族が自宅まで巨人族を運ぶのだから、相当な膂力があるに違いない。しかし、彼女の腕にはそのような力があるようにツェリスカは見えてなかった。
「ちょっとツェリスカ?聞いてるの?」
考え事をしていたら、彼女から注意が入ってしまった。
「すまん、聞いてなかった」
「まあ、いいわ。ここから北東に行った所に天然の洞窟があるのよ、どうやらそこが隠し通路の一つらしいの、そこから入って中を調査するわ。これが見取り図ね」
見取り図は詳細が詳しく書かれているものの、道幅など尺度などが統一されているわけではないので大雑把だった。
「それで、リリウム殿…この方は?」
ツェリスカは自分の紹介をしていなかった事を思い出し、直立し他の兵士がやっていたように敬礼し自己紹介をした。
「ハッ!申し遅れました。術士見習いツェリスカです!」
一際大きな声で挨拶をすると、ザクロ・リリウムがびっくりしており、周りの兵士も何だなんだという感じで注目していた。その時、ツェリスカはザクロ・リリウムが椅子から転げ落ちたが見てない振りをした。
「ハッハッハッハッ、いい気合っぷりだ。術士見習いか、その服越しからもわかる…相当な手練と見た」
「ハッ、自分はまだまだです!」
「うっさい!場所がわかったし行くわよ」
軍から調査場所まで馬車を使う事になった、歩いて行く事になると半日以上かかってしまうからだ。
「調査場所はキャンプ地になってるからそこで泊まってから明日、朝一で入るわよ」
「わかった、海の虎という海賊について聞きたいのだが…」
「海神タンガロアを信仰し、強硬派の魚人族との繋がりがあるとされている人族の集団よ。構成員の数は不明、顔に刺青を切り傷のような刺青を入れているのが特徴だったかしら…まあ、人さらい、物資の略奪などするクソな連中よ」
「見つけた場合は?」
ザクロ・リリウムは少し考えこんだ。
「犯罪者は基本その場で処刑するのが普通だけど、今回は出来る限り生け捕りにした方がいいわね。拠点を潰し、調査団がいるのに関わらず戻ってくるなんておかしいもの」
軍の紋章が入った馬車に揺られながら、キャンプ地に向かっていたが途中で奇妙な気配に包まれている事にツェリスカは感じた。
「何か…何者かが敵意を持って私達を見ている」
「確かに、何か変な空気ね…」
すると馬車が急停車し、敵襲という声が響く。瞬時に馬車から降り、あたりを見るとマスクをした柄が悪そうな巨人族や魚人族が馬車を囲んでいた。馬車の前方には一際大柄な魚人族がそこにはいた。
「海賊が陸地に上がるものなのか?」
ツェリスカはあたりを見渡しながらザクロ・リリウムに問いかける。
「さぁ、最近儲かってないから出てきたんじゃない?」
ザクロ・リリウムは腰の魔導本をすでに構え、ページを開いていた。本のカバーから炎がメラメラを湧き出ており、周りの海賊たちを恐れさせていた。
「こ、こいつ不機嫌のザクロだ!」
「はぁぁあん?」
恐れられいる理由は別にありそうだった。