3-ギルドに所属するということ
ザクロ・リリウムは古代に反映した国が築き上げた地下大遺跡を踏破し、財宝や功績から冒険者を引退して冒険者居住区で土地と小さな家を買い、気ままな生活をしていた。召喚士として有能であり、独自の召喚理論を持っていることから有名だった。
◇
ツェリスカとザクロ・リリウムがいる海辺にある都市国家は他の都市国家と比べて多種多様な種族との貿易からなる民族問題が絶えない。しかし、その民族間との外交は大きな利益をもたらし都市国家として大きくなっていった。
他の都市国家は同じ陸地に面しておらず、海に囲われた土地である。多くの種族が入り混じり生活をしており、唯一の都市国家である。
その都市国家の名は海洋国家メイルブラドォ
◇
「召喚士リリウム殿、お久しぶりです」
術士ギルド本部、本棚が数多くあり、受け付けのカウンターの奥からツェリスカと同じ巨人族の男が手を振りながら出てきた。
「ヴォルディン、久しぶりね」
ヴォルディンと呼ばれた巨人族は私を見ると眉をひそめながら一瞥する。身長はツェリスカよりも大きく大柄で筋肉が盛り上がって更に大きく見えた。短く整えられた髪型に整えられた髭がよく似合う大男だった。
「この方は弟子ですか?」
ザクロ・リリウムは腰に手を当てながら、人差し指でヴォルディンを指さしながら頬をふくらせていた。
「違うわよ、彼女…ツェリスカさんは魔導本を持っていたし、紹介に来たのよ」
小人族の仕草一つ一つはどれも可愛らしさにあふれていた。ヴォルディンは驚きながらもツェリスカに対し、礼をし、術士受付カウンターへ案内した。
「こちらに、名前と…あと紹介者の名前はここに…」
ツェリスカは文字を書こうとし、とどまった。そこに書かれている文字が見慣れないものだったからだ。
「なんだ、文字が書けなかったか…代わりに書こう。名前は?」
「ツェリスカです」
「ファミリーネームは?ないのか?」
ツェリスカは首を横にふり、無いことを伝える。あるのかさえ思い出せないからだ、ヴォルディンはそのことを知らず、特に気にすることもなく登録をすすませる。
「ほら、これが仮ギルドカードだ。詳しいことはここの下の階にいる講師に聞くんだ。それではリリウム殿、もし何か御用の時はいつでも!」
「うん、わかったわ」
そう言ってヴォルディンは受付カウンターの奥の部屋へ姿を消した。
「彼、ヴォルディンはここのギルドマスターよ。術士としても力はかなり強いわ」
ツェリスカもなんとなく彼が強いことを肌で感じていた。だがなぜ彼が強いのかその理由が直感的なもので理由がわからないでいた。
「さ、仮登録になってるから登録を済ませて仕事が出来るようにしましょ」
ザクロ・リリウムは下の階へ行くエレベーターへ案内し、ツェリスカと一緒に講師を紹介してくれた。
「街の外にいる、害獣…つまりはモンスターを狩ってきてもらいます。魔導本は…すでにお持ちですね。討伐してもらいたいのは野ネズミ、野ウサギをそれぞれ5匹ずつです」
簡易的な地図を見せられ、生息していると思われる地域を教えられる。
「狩ってきたモンスターはこの袋に入れてきてください。門番の方に今お持ちのギルドカードを見せれば狩った獲物を一時的に預かってくれるので安心してください」
ツェリスカは力がある巨人族といえど、さすがに全て持ち歩くのは難である。
「一応、私も護衛するから安心してね」
ガッ!
1m弱の大きな野ネズミが魔導本で撲殺される。
バンッ!
同じく1m弱の大きな野うさぎが魔導本で撲殺される。
「あっという間に…10匹…じゃないわ!術を使いなさいよ!」
「いや、その…」
ツェリスカは術が使えないわけじゃなかった、ただオーバーキルしてしまうと肌身で感じていたのだ。本来、彼女は軍人でありモンスターといえど格上相手に襲ってこないし、むしろ避けて通るくらいだ。
「まあ、いいわ。さっさと納品しましょう」
あたりは草原と起伏がそんなにない丘、遠くには巨大な農場も見えた。空は雲もなく、遠くには鳥も飛んでいた。ツェリスカにとってはあまりにも見慣れない風景だった、記憶を失っていたとしてもこれが平和だというのが肌身に感じていた。そして、自分がこの景色を見たかったのだと感じていた。
「ああ、行こう」
ツェリスカは笑顔でザクロ・リリウムの後ろについていき、術士ギルドへと戻る。
「もう終わったのか?!早いな!さすがリリウム殿の紹介だけあるな…」
渡した袋の中を講師は確認しながらその手口を見て、眉をひそめる。
「ちょっと訓練用の的があるのでそこに向けて、初歩の術を当ててくれませんか?確認したいことがあります」
ザクロ・リリウムもピンときたのか、ニンマリとしていた。
「はい、わかりました」
講師に連れられて、更に下に降りていくと射的場のようにでかい開けたところに案内された。一際大きな少し焦げ付いている鉄の塊が中央付近に置いてあり、講師はあれに向けて撃ってみてくださいと言われる。
ツェリスカは後ろの腰に入っている魔導本のバインダーのロックを外し、魔力を込め一気に本を開き、初歩の術とされる魔導弾を早撃ちで当てる。
「はあぁぁぁぁ?!」
驚きの声を上げたのはザクロ・リリウムだ。魔導弾は魔導本である場合は本を攻撃用のページを開き、体内で術式を編み上げて、本を使ってブーストさせて本のページを対象に向けて撃つ術だ。
ツェリスカの行ったのは、その動作をなくし、魔導本を抜いたと同時に対象にすぐに当てたのだ。術の発動するまで魔導本に術式の紋様が出るものなのだが、彼女がおこなったのは一瞬光ったと同時に着弾である。しかも、とんでもない速さと威力だった…真ん丸と貫通した穴が鉄の塊に空いていた。
「こ、これは…驚きましたね。リリウム殿、彼女は何者なんですか?」
ザクロ・リリウムは空いた口が塞がらず、目の前の出来事をまだ直視したまま固まっていた。
「あの…すみません」
ツェリスカは壊してしまった、というか穴を開けてしまった事に謝った。
「い、いえいいんですよ。リリウム殿なんて、爆発させたことがありましたから…ははは」
講師の乾いた笑いをし、顔が引きつっていた。
仮登録状態から、しっかりと登録され、ツェリスカは晴れて正式なギルドカードを受け取る。ギルドの受付から、討伐した対象が自動で記録されるので普段から肌身離さない事や犯罪行為をした場合でも記録されるので言い逃れできない事など、注意点など聞かされる。
都市内にある巨大な透明な石のモニュメント、セーブポイントはギルドカードと一定数の金額をあれば転移移動が出来るのだという。ギルドカードに念じれば都市内のセーブポイントも移動できるが、それなりに通行料がかかるらしい。
「結構広いし、迷った時に使えば便利よ」
ザクロ・リリウムの笑顔は眩しかった。
「でも、その前にお金ね…」
そうなのだ、ツェリスカにはお金が無かった。
すると、さっきの講師がギルドマスターとは何か話をしているのがカウンターの奥で見えた。こちらが見ているのを気づくとギルドマスターであるヴォルディンはいい笑顔でギルドカードの説明を聞いているツェリスカの元へやってきた。
「お前さん、確かツェリスカって言ったっけな…かなり強いらしいな。早速仕事してくれねぇか?なぁに簡単だ、報酬もちゃんと出すぞ」
ツェリスカは元軍人だ。記憶は失っても、所属している場所の命令であれば即決するのが軍人としての基本姿勢であり礼儀だ。
「受けよう。詳しく話を聞かせてくれ」
「そうこなくっちゃあ!」
ヴォルディンはツェリスカのきっぷの良さと即決する姿勢に好感を持っていた。
「同じ巨人族として誇らしいぜ」
「ちょっと!内容を聞かずに引き受けるなんて!ヴォルディンも何考えるの!」
ザクロ・リリウムが両手を突き上げながら講義している。ツェリスカの心は癒やされた。
「んもう…どうせ私も巻き込むつもりだったんでしょ?」
頬を膨らませながら腕を組み、見上げる姿が可愛かった。
「そんな難しい事じゃねえよ、今しがた入った情報でな…詳しくは酒場にいるマスターに聞いてくれ、リリウム殿ならわかるだろ?」
「そっち絡みの依頼か…報酬は期待できそうね」
ザクロ・リリウムはニンマリとし、機嫌は治っていた。
ツェリスカは今までの自分が何者だったのか、どこから来たのか思い出せないが特別不安は無かった。今は今を、がんばって生きていこうとザクロ・リリウムを見て思ったのだった。