27-死の灰
ツェリスカ、彼女は巨人種にしては小さい。人種の中でも身長がかなり高く体格のいい男性と変わらない大きさだ。そのため、彼女が「巨人種」だと認識出来るのは同じ巨人種族だったり、不滅者だったりする。
低身長だが、強靭な肉体と並外れた回復力を持つが他の姉妹と比べるとホルモンバランスが安定しておらず、両性具有である。性欲が低く、性行為に関心がない。興味はあるが、自分の体質をわかってるのもあり、意識しない訓練をしてきている。かわいいものが好き、性的対象ではない。
見た目が女性よりも男性に見えるため、女性扱いはされたことがない。胸はあるが服装によっては女性に見えないのも原因の一つである。
◇
ククリ刀のようなベヨネッタハンドガンが白銀の犬が持つ剣を落とさせ、白銀の犬は四肢に刃をはやし、憤った。ただ、手足に剣がはえただけであたりに真空刃という裂傷空間ができた錯覚を覚えていた。
ギリッ
ザクロ・リリウムは歯ぎしりをし、絶対に負けたくないという思いがあった。彼女は最前線で戦うような近接アタッカーではない。ただ、自分が他の仲間に足手まといになることが何よりも許せなかった。
「死人の声を聞くが良い…」
彼女は自分自身に対しての怒りが目に宿っていた。ボソリと口ずさむのは詠唱の言霊、ザクロ・リリウムの前で守っているタヴォールは冷や汗をかいていた。
(なにこの圧倒的な威圧感…)
「屠る死化粧を、塵塗られよ…」
空中に静止していたイデルマージが揺らめいていき、灰色の塊へと変わっていった。
「堕ちて、苦しめ…灰落華」
しんしんとあたり一面に灰が降りはじめる。ン・パワゴは目を見開き、舌打ちをした。
(阻害術を展開させやがったな…)
ゆっくりと降ってはいるが、灰が4人の近くに降ると透明になって消えていった。しかし、白銀の犬には残っていった。
特にダメージを与えるようなものでもないが、異様なその光景の中で白銀の犬は自分を傷つけるものではないとわかっていた。
しかし、この術はダメージを目に見えて与えるようなものではなく戦闘が長引けば長引く程、毒になるものだった。
特殊な灰による呼吸困難、フィールドに積もった灰による行動阻害、ちらつく灰による視界阻害、また一つ一つの灰は小さなガラスが混じっており光の乱反射による幻想を魅せる。
「タヴォール!ザクロくんを全力で守れ!魔導盾の使用を許可する!」
ツェリスカがこの術の効果を理解していた。
(なんて術だ…死の灰じゃないか、しかも相手だけだと)
タヴォールは戦斧をしまい、天球儀を取り出し、左腕に展開させずに装備した。淡い光が天球儀に流れ、天球儀そのものが点灯する。
「魔導盾ルジェッティ、展開完了…だ」
白銀の犬が違和感を感じ、ザクロ・リリウムの方に襲いかかる。先ほどまでの大きな剣を装備してないため、ツェリスカとン・パワゴを振り切って襲いかかった。タヴォールが前にいるが瞬時に後ろに回りこみ、飛びかかろうとするが見えない壁に吹き飛ばされる。
キャィン!
斬りかかろうとした前足が圧し曲がっていた。うまく空中でバランスをとり、3本の足で着地する。その瞬間を狙って空中うからン・パワゴは地面に叩きつけるようにかかと落としを圧し曲がってない足の肩に与える。
攻撃そのものの流れは白銀の犬の肩はから圧し曲がってる足へと流れ、うまくバランスが取れないままよろめいた。懇親のかかと落としがよろめく程度だったことで、悔しそうな顔をするン・パワゴだった。
(クソ固いな)
よろめいた所に地面スレスレからベヨネッタハンドガンの刃が切り上げられた。その切り上げは綺麗に白銀の犬の顔を真っ二つにするのに充分な斬撃だった。
パックリと顔が真っ二つになった白銀の犬は、よろめいた体制のまま、活動を停止した。そして、灰でその体制を維持できず、滑るように大きな音を立てて倒れた。
「ふー終わったな」
ン・パワゴは万全ではないにせよ、自分の攻撃が通らなかった事に悔しさを覚えつつも倒せた事に安心していた。
「こいついったいなんなんだ?さっき見かけたヤツと明らかに違う」
「気をつけろ、そいつはまだ停止してない」
ツェリスカはベヨネッタハンドガンを2つに切り裂かれた頭に銃口を向ける。
ピシッ、ピシッ、ピシッ!
引き金を三回絞り、四角いから銃弾が発砲される。しかし、その銃弾は白銀の犬にあたることはなかった。
「何?!」
白銀の犬は跳躍し、その場から撤退していったのだ。
「イレギュラー覚えておくガいい…」
白銀の犬は負け惜しみの言葉を吐いて、その場から消えていった。残ったのは切り離された巨大な剣と完全に倒せなかった気持ち悪さが彼女たちにあった。
「結局、アイツはなんだったんだ…」
ン・パワゴは不機嫌に吐き捨てる。向けられた視線の先は白銀の剣だ。
人が持つには大きく、巨人種でも扱うのも現実的ではない大きさだった。6mほどの長さがある剣だったのだ。
「戦っている時は、ここまで大きいと感じなかったな…」
ン・パワゴが剣を触りながら、その刀身に傷などない美しい白銀に魅入っていた。
「あの犬は、剣術の心得があるのか、刀身を悟らせないようにしていた…いったいなんなんだ?」
ツェリスカは白銀の犬からは蛮神特有の気配は感じていなかった。むしろあの強さで対面しないと異様な存在感がわからなかったのだ。
それは他のザクロ・リリウムやン・パワゴ、タヴォールも一緒だった。
(あいつ、私の灰落華を食らっていたのに、最後に逃げるとか…今度あったら最初から使った方がよさそうか…くそぉ…)
ザクロ・リリウムは突然のエンカウントもあったのと今まで遭遇したことがない敵に不安感に襲われていた。自身が最強だと思っていた攻撃、例え土の加護相手でも通用してきたからだ。並のゴーレム相手、自身が作成したゴーレムにでさえ試し、融解させるほどの威力を持つ攻撃だ。
しかし、それが通用しなかった事による衝撃が途方もない焦りが襲ってきたのだ。ルーガン族の火の加護には無効化されるか吸収されるのは知っていた。しかし、ヴァーガ族へ攻撃通じないのかと思うと魔道書そのものの属性を変えないといけない、と…。
(うう…ちくしょう…)
喚き散らしたい気分だった、それを必死に押しとどめている内、涙目になっていた。
「ザクロくん、大丈夫だったか?どこか怪我してないか?」
気がついたら目の前にツェリスカとタヴォールが跪いてザクロ・リリウムの顔色を伺っていた。そっとツェリスカは彼女の片目から流れる涙を拭った。
そこで自分が泣いている事に気づいた。
「なんだ?ザコロ泣いてるんか?」
ン・パワゴは軽口をいつものように叩く、これの手は力強く握られ血が出ていた。
(俺の…力は…この程度なのか?違う…絶対に違う)
ルビー色の眼をした金獅子の獣人尻尾の毛を逆立てていた。
「うるっさい!!!うるっさい!!!」
「はっ、図星だな」
「てめぇこそ、何も出来なかったくせに」
「ああん?」
「はっあああん?」
二人はそれこそいつものように、煽り合う。だけど、二人は今までと違っていた。
二人のやり取りからタヴォールは少しばかり安心し、魔導盾となってる天球儀を操作し、先ほどの突進時のデータと落ちている剣を解析に向かった。
(ツェリ姉さんはあっさり斬っていたけれど…あれ斬れるものじゃない気がするんだよな…)




