22-魔法銃と火薬式の銃
ン・パワゴ、彼女はン氏族の金獅子種の獣人である。狩猟が主に食生活の基盤となっており、自分よりも大きな相手を個人、もしくはチームで討伐して生活をしていた。しかし、彼女は類まれなる才能と金獅子族では珍しいルビー色を持つ目をしていた。
そして、冒険している身でありながら「ン」を名乗っている。彼女は女性でありながら他の場所で自分の集落、村を作り「長」になることを許された者でもあった。獣人族の猫科は一夫多妻制が主で必ず男がトップになり「長」として氏族名を名乗る。その氏族から出るとなると氏族名は名乗れなくなる。
しかし、彼女は力を認められ異例として「ン族」として名乗ることも、新たな集落なり村を作ることが許された者だった。
◇
魔法弾と火薬式の銃弾が飛び交う中、軽い頭痛に襲われながら目を覚ました。
「いつつ…」
とっさに頭に手を当てようとするが狭すぎて手が天井にぶつかる。寝床となっている場所はあまりにも狭い場所であり、体の節々が痛かった。
横から這いずり出て飛空艇が傾いていることがわかり、丸窓から外を見ても木々の先が見える程度で何が起きているのかわからなかった。
「不時着した…襲撃か」
ツェリスカは、しゃがみこみタヴォールが寝ている場所を覗き込むとそこでは不時着した衝撃で寝床の奥に挟まっていた。
「おい、大丈夫か?」
「う、うう…」
その後、なんとか引っ張りだしたタヴォールと共に飛空艇の倉庫に行き、預けていた自分の武器を見つけ手に取る。
「衝撃でどこも壊れてはいないな」
「空路は―」
「ん?なんだ?」
タヴォールは何か言いたそうにしていた。今までツェリスカと空路による戦線への輸送時は必ず不時着、大破、などトラブルにあっていたのだ。
「いや、なんでもない」
「では行くぞ…」
タヴォールは天球儀を展開させ、外の様子を解析し、三方向から包囲されていた。数十名からの攻撃されていることとザクロ・リリウムが不時着した飛空艇を守っていることがわかった。
「ザクロくんがいる、こちら側の戦力での迎撃具合を見ると…こちらに分が悪い」
戦況の解析が終わり、タヴォールはツェリスカに告げる。
「ツェリ姉さん…」
天球儀をしまい、戦斧テラシォグラツォをアサルトライフルブルパップ式に変形させる。ツェリスカにアイコンタクトをし、使用の許可を求める。
頷きで返し、ツェリスカもベヨネットハンドガンを持ち飛空艇の看板へと向かった。途中、怪我を負ってる他の乗客たちがうめき声をあげていた。それを横目にしながら二人は足を急いでいった。
◇
「メイルブラドォから銃士隊の援軍は来るし、あとは足止めしておけばなんとかなるだろ?」
「お前も働け」
「拳届かないんだが」
笑いながらザクロ・リリウムと口悪く話すン・パワゴの二人は空賊を飛空艇の影から足止めをしていた。
「あんた、闘気を練って飛ばせるでしょ?!知ってんだからね?」
「最近覚えたんだけど、あれめっちゃうるさくて、まだコントロールが上手くいかなくな」
「チッ」
ザクロ・リリウムは軽く舌打ちをする。
「おっ?」
「はぁぁん?」
息をするように二人は煽り合う。その中でザクロ・リリウムはスピリットオブファイアを使い空賊を牽制していた。
彼女はイデルマージを再召喚が出来たが、メイルブラドォからの銃士隊を待つことをした。再召喚したとしても魔法銃との相性が悪く、召喚体を何度も破壊されるのはあまりいい思いもしないからだ。
何よりも隠れている場所がバレてしまうのもあるので召喚をしなかった。
突如、飛空艇を防衛している術士や銃士たちへの攻撃が弱まっていった。弱まっていく中で聞き慣れない音が聞こえてくるようなった。
ガラス等の工芸品が割れるような音が聞こえたのだ。
ピシシシッ
それが連続して聞こえると空賊たちがいる方向からうめき声や悲鳴が聞こえてきた。
ピスッ
ピシシシッ
周りから魔法弾が飛んでこなくなり、空賊たちのうめき声が聞こえ、応戦していた術士や銃士も不審がっていた。
「な、なんだったの・・・?」
「看板の上から二つ、巨人種だと思うんだが…気配があるな。そいつらが何かやった感じだな」
「パワわかんの?」
「あったりまえだ、俺を誰だと思ってるにゃ」
「そのにゃってやめて、マジキモイ」
「ああん?」
「はぁぁん?」
猫耳獣人と小人の二人が先程と同じように煽りながらも周りを警戒し、状況を確認するのだった。
◇
「クリア」
ベヨネットハンドガンを戦闘不能状態になった空賊たちから標準を外し、タヴォールの方を向くと彼女が持つアサルトライフルブルパップ式をまだ標準を向けたままだった。
「クリア」
二人は頷き、飛空艇の看板上から見える敵を一層する。本来ここには術士や銃士がいてもおかしくはない場所だと思ったのだが周りに誰もいなかったのだ。
彼女たちは知らないが魔法銃や火薬式の銃の有効射程距離はそこまであるわけでもなく、また斜面になっていることや弾を運びにくいこと、地上の迎撃を優先にしたことが起因していた。
「下の様子を見に行くぞ、ザクロくんが心配だ…大丈夫だろうが…」
「そうだね、ツェリ姉さん」
二人は飛空艇看板から、途中の段差を上手く使い地上に飛び降りた。
「何者だ?!」
標準的な人種の術士の一人が飛空艇の上から降りてきた所に驚き、杖を構えながら警戒をしていた。二人が持つ武器が魔法銃に似ていたのもあるからだ。
「ここの乗客だ、あいつらを上から援護させてもらったよ」
ベヨネットハンドガンを肩に置きながらなんでもないように言う。
「その銃はなんだ?」
かなり警戒しながらここの警備をしていた巨人種の男銃士がタヴォールを見る。
「私の相棒の―」
彼女はアサルトライフルブルパップ式の名前を言おうとしたが―
「違う!そういうことではない!なぜお前らが銃を持っている?」
空賊たちからの脅威を退けた二人だが、銃士や術士から警戒され、包囲されていた。
(ツェリ姉さん、何かおかしくないか?)
(私達が持つ銃にやたら警戒してる…どういうことだ?)
「あっ!ツェリスカにタヴォール!」
ザクロ・リリウムが何か騒ぎがあったのを見つけ、走ってきた。その後ろにはン・パワゴも一緒だった。
「ザクロくん!」
「リリウム氏、助力感謝します。この二人とお知り合いですか?」
巨人種の男銃士がこちらから目を離さず、ザクロ・リリウムに問いかけた。
「ええ、まさかこの飛空艇に乗っていたのは知らなかったけれどね。何か問題でも起きたの?」
「奇妙な銃を持っている。未登録である可能性がある事もあってな…積み荷にはそんな報告がなかった。冒険者だとしても銃を所持しているとなると、法令に抵触する可能性がある」
海洋都市メイルブラドォには銃士ギルドがあるが、メハルジア王国には存在はしない。ロクアディ皇帝国は一般兵など魔法銃の携帯している、また隊長クラスなど「火薬式の銃」の携帯が可能になる。
北方の巨大モンスターが多く生息しているカリュウドがいる国では圧縮ガスを使った銃はあるが外部への持ち出しは禁止されている。国外へ出る際には厳しいチェックが行われる。
貴族や要人などを街内、都市内での行動する際に「銃」といった速攻性がある攻撃による暗殺が懸念されている為、規制がかかっているのだ。同じ理由で「ボウガン」といったものも規制されている。
所持するには「信頼」が必要になっているのはどの「国」でも変わらないのだ。
「助けてもらった所すまないが同行してもらっても構わないか?リリウム氏の知人ということもあるが銃の問題は銃士として見過ごせないのだ」
ザクロ・リリウムと面識があるということで先程までの警戒も下がり、ツェリスカとタヴォールは連行ではなく同行という形でメイルブラドォの都市に戻る事になった。
「規則ならば従う、タヴォール」
「了解した」




