17-浄化
対不滅者特殊人造種第42部隊、世界大戦末期に形成された部隊。人造種は戦争時において人材不足を補う為に造られた人種だった。遺伝子に術式を組み込み、人為的に強化した兵士だ。世界大戦で汚染されつくされた世界でも生き残れるように設計されている。
性行為は可能だが、子孫を残すことは出来ない。人造種は決して成功した産まれたものではなく、また安定して生産されたわけはないため、個々のポテンシャルや性格、人体的異常があったりなどもした。
その中でも対不滅者特殊人造種第42部隊の人造種の三体だけは異常な程の生還率を叩き出していた。隊長ツェリスカ、副隊長タヴォール、そしてダネルダネルたちは他の人造種と一線をしていた。
◇
黒煙がまだ上がっており、戦火の後のように炎がまだくすぶっている中でタヴォールは喝采を浴びていた。
蛮神を屠った者として、その場にいるルーガン族が雄叫びを上げ、喜んでいた。
タヴォールはあたりを見渡し、安堵の顔をしながら、戦斧テラシォグラツォを掲げかちどきを上げる。するとルーガン族も更に雄叫びを上げ、その声量から地面が微々たるものだが振動していた。
ツェリスカがタヴォールの元に駆け寄っていった。
「よくやった、楽勝だっただろう?」
「ああ、マゴクのおかげだ」
ツェリスカはザレクにタヴォールの身体を癒やした。後半タヴォールは蛮神から攻撃をほとんど食らってはいないが、結界を張る前は火傷などを負っていたからだ。
また、ただの火傷ではなく呪染型の身体の奥底に侵食する攻撃であった為、戦闘が長引くと身体の内部からグズグズになっていくものだった。
兵士を何人か引き連れた身体中に切り傷の後がある屈強なルーガン族が二人の前に現れた。
「まずは蛮神を討伐してくれた事に感謝する。我が名はルーガルー・ルール・ルーガンと申す。お二人方が何用でここに居たか、なぜ我々に助力してくれたのか、いろいろ聞きたい事があるのだがお時間を取らせてもらえないだろうか?」
「私はツェリスカ、こいつはタヴォールだ。無論だ、狂信者を元に戻さないとまた同じ事が起きる。それに、黒幕が何者かそれについても調べたい」
「なんと?!狂信者を元に戻せるのか?!」
「ああ、そんなに驚くことか?」
このあと、狂信者の中でも地位が高く今回の騒動を先導しきって行っていた者と兵士たちに見張られた中で狂信者を元に戻した。
ツェリスカが召喚してあるアイオーン・ザレクから状態異常とも言える狂信を解除したのだ。最初から狂信を解除すれば良いのだが、狂信を解除するには一対一でないと解除できない。
しかし、タヴォールの天球儀があれば解除を範囲化することが可能になる。蛮神と戦ってる時は範囲化ができなかったのもあり、狂信を解除するにも行動不能にするよりも時間がかかった為、ツェリスカはその場で行わなかったのだ。
「正気に戻ったな?自分がおかしくなった時に誰と会ったか覚えてるだろう?そいつはずっぽりとした奇妙なローブをして仮面をつけていた奴か?」
ツェリスカは狂信が解除されたルーガン族に聞く、周りの者は狂信者ではなくなったとは思えなかった。ツェリスカがザレクに命令をし、狂信者の頭から黒い小さな粒子がフッと出たくらいだったからだ。彼女以外にそれに気づけた者は誰もいなかったからだ。
「あ、あれ…私は?!」
「いいから答えろ、奇妙なローブをして仮面をつけたような奴だったか?」
「は、はい…ローブをしてましたが私達と同じ種族だとわかりました。仮面をつけてましたが会ったことあるような…」
「チッ…やはりか…こいつはもう狂信者じゃなくなったから大丈夫だ」
ツェリスカは尋問部屋から出るとルーガルー・ルール・ルーガンがそこにはいた。
「ま、まさか本当に元に戻るとは…」
「都市全体に同じように術を展開する、都市の中心はどこだ?まだ隠れている狂信者も正気に戻す。今確保してる狂信者は正気に戻ったら事情を聞き、蛮神召喚の道具の在処や儀式場所などを聞き出せるはずだ」
「す、すぐに案内する。こっちだ」
ルーガルー・ルール・ルーガンはツェリスカとタヴォールを都市の中心に案内した。周りでは焼け崩れた建物や兵士と狂信者が争った後の片付けなどの復興が行われていた。そして都市の中心はタヴォールと蛮神が戦った場所よりも更に奥の方にある山の斜面を繰り抜いた要塞の前の広く開けられた場所だった。
「ここが都市の中心だ」
ルーガン族の都市は太陽に照らされた場所と岩山を繰り抜いた中に存在していた。そのため、都市の中心は山の斜面を繰り抜いた広場が中心地となる。外来から見える都市は一端であり、岩山の中でも都市が築かれているのだった。
「タヴォール、やるぞ。ここから都市の端っこを半径にし、そこから球体型で術式を構成しろ。ザレク、術式の準備ができたら浄化しろ」
ツェリスカが指示を出すと、タヴォールは天球儀を取り出し、展開させ空中に浮遊させ両手をかざしながら術式を構成させていった。
術式は立体球体型の紋様をしており、薄青色で形成された魔法陣は周りで見ているルガール族たちはうっとりし感嘆していた。
一方、術式を汲み上げているタヴォールの額に汗が滲み出ており、疲弊が出ていた。
(蛮神と戦った後にこんな広大な都市全域に全体化する術式とかキツ!キツイ!キツウウウウ!!!!)
歯を食いしばりながら、目に血走りながら懸命に術式を構成させていた。上官の命令は絶対と刷り込まれている為、命令には逆らえなかったのだ。
両手が震えながら、肩で行き着くようになり、術式がやっと完成するとザレクがそれを見計らって浄化を天球儀にかける。
天球儀を中心に眩しくないやさしい光が爆発し、建物を透過し都市全体に行き届いていった。
その後、都市全体から黒い小さな粒子が天球儀に集まっていき、一つの大きな黒い塊になった。
「ザレク、マゴク喰らえ」
二人は黒い塊に向けて口を大きく開け、吸い込んでいった。大きな黒い塊はすっぽりと二人に吸い込まれ跡形もなくなくなっていた。
「ザレク、マゴクお疲れ様、また何かあった時に呼ぶ」
「―えっ、ちょっ!」「たいちょ―」
二人は強制的に退喚させられた。最後に何か言っていたがツェリスカは特に気にしていなかった。
「はぁはぁ・・・はぁはぁ・・・終わった?」
タヴォールがぜぇぜぇと息をしながら、座り込んでいた。
「ああ、お疲れ様。ルーガルー・ルール・ルーガン、ここからあの端を半径に空と地下含め浄化を行った。元凶となった狂信の術も消滅させたからこれで大丈夫だ。あとは狂信者だった者に事情を聞けるはずだ」
「お、おう…直ちに事情聴取を開始し情報を集めよ」
「「「はっ」」」
ルーガルー・ルール・ルーガンは近くの兵士に命令し、兵士たちが小走りで命令に従っていった。
「ツェリスカ殿、タヴォール殿、誠に感謝する。まさかここまで大規模な術が行え、また蛮神すらも屠ってしまうとはあなた方はもしや勇者たちの者であられるか?」
勇者、ツェリスカは顔をしかめ、タヴォールは目を閉じ思案した。
「「いいえ、違います」」
「で、ではあなた方は何者ですか?」
「あのクソ蛮神どもを討伐する者さ」
「あ、私は街角の占い師です!占いするのでお金ください!」
「ふ、フハハハ!!!!アーッハッハッハッ!!!!」
ルーガルー・ルール・ルーガンは二人の解答に笑ってしまった。蛮神を討伐する者を自称し、片方は街角の占い師、そして蛮神とルーガン族の民を救った事はさも当たり前。金銭を請求するも「占いするのでお金ください」という営業だった。
デタラメな二人にルーガルー・ルール・ルーガンは笑わずにいられなかった。彼はこの都市、一族を長であり、王でもあり、戦士でもあった。そんな彼が人種に抱いていた考え方は彼女たちの出会いによって大きく変わっていく。




