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シャンゴリラガールズ~三姉妹巨女伝~  作者: 犬宰要
別れと出会いと再会
1/62

1-三姉妹の最後と始まり

世界戦争末期に未来に飛ばされ、飛ばされた先が海の上だった。海面に叩きつけられて意識を失い、その時のショックで記憶が一時的に喪失してしまい、海辺で打ち上げられた時に助けられるものの名前以外、自分が何者だったか忘れてしまう。


飛ばされる直前までは不滅者たちとの戦争をしていた。一方的に近い戦いだったが、彼らは最後まで抗い続け、不滅者から自由を勝ち取ろうとしていた。

地上では企てが露見してしまうため、地下の奥深くに飛空戦闘艦を建造していたり、禁忌とも呼ばれるようなことに何度もおこなっていた。


不滅者たちは何万年もの間、地上を遊技盤として国の存亡や侵略などを決めていた。


それに対抗し、真の自由を得る為に戦う兵士として生み出されたのが主人公たち

しかし、時は未来…そんな不滅者たちの存在すら忘れられており、国同士のいざこざや種族同士の争いといった自分たちがいた過去と比べて平和だった。


彼らが普通の冒険者として歩もうとしても生まれ持った宿命はそれを許すことはなかった。



1-三姉妹の最後と始まり

 頭がクラクラして、足元がフラフラして、この戦いの先にどんな未来があるのかわからない。ただ、与えられた命令をこなし、この任務を達成させる。それが軍人であり、私達が造られた存在意義だと彼女は思っていた。

 どのくらい戦闘が続いたのだろう、太陽が上り、沈み、何日経ったのだろうか…日にちの感覚なんて無かった。次はどの戦場で行けばいいのか、気がついたら仲間が死んでいくのも慣れてきていた。


 彼女が見上げる空は赤く、踏み歩いてきた地面も血色に染まっており、この戦いの先にある真の自由の為に彼女は迷うことなく歩み進んだ。



 様々な種族、民族が国境を超えて、ただ真の自由の為に…遊技盤の上のコマとしか見ていない"あいつら"を倒し、世界を取り戻そうとしていた。世界戦争、のちに生き残った人たちはそう記していた多大きな戦争である。


 一国の王、帝国の帝、平和条約をした半年後に戦争をはじめさせ、互いに消耗し…一つの国が亡くなった事、少数民族が国を築き上げ、他国を侵略していき大量虐殺をしていった事—数え上げればキリがない不自然な出来事だ。


 不自然な出来事でさえ、すんなりと決定されて行われてしまったのだ。


 時代が移り変わり勇者と魔王、英雄、そういった噂が世界でされ始めた頃…世界を遊技盤の上で遊ぶように裏から操り、好き勝手に戦争をはじめたりしていることを力がある者達が気づき始めた。終わることのない戦争の歴史、平和条約という名のだまし討が頻発したことや、豹変する国の統率者たち、彼らが何者かに操られていると—


 それは小さな疑心だった。


 そしてその疑心が確信へとなる証拠が世界に浸透していき、世界は真の自由のために戦う事になった。それが神々とも言われている者達…"あいつら"が不滅者(プレイヤー)と名乗っていることがわかるが、彼らがどこから来たのかそれとも創造主たちなのかはわからない。そしてこの戦いそのものが彼らの企てた事なのかもわからない。


 ただ、その者達を倒せば、人の手で歴史を歩めると信じていた。そして、のちにそれが世界戦争と呼ばれるようになった。



 静まり返っていない夜、どこかで叫び声が聞こえていた。定期的に地面から振動がし、その振動が爆発が起こすものだった。草原だったここは今では荒野だ…空には神とも言える不滅者(プレイヤー)の兵がひしめくように飛び、地上には別の化物どもが群れをなして闊歩している。


 ただ、目の前の化物どもを倒すために彼女は武器を構える。

「ツェリ姉ぇ!2時の方向から赤ちゃんたちが来てるよ!」

 ツェリ姉、彼女の名前はツェリスカ。色白で人種にしては身長があり、巨人種族とも呼ばれる種族だが彼女はその中でもかなり小さい方だった。屈強さが売りでもあり、自然治癒といった自己回復力は種族の中でも高い巨人種族だ。

 ボーイッシュに切りそろえられた濃ゆい紫が混じった黒髪、前髪の隙間から鋭い目つきにかわり。

「チッ!蛮神クラスか!タヴォール!近接戦闘だ、ダネルは後方から援護だ!クソが」

「ツェリ姉ぇ、援軍くるかなぁ…」

 タヴォールと呼ばれた彼女はツェリスカに縋るように聞く、綺麗な白髪がベリーショートに整えられて軍人刈りに近い髪型だ。ツェリスカと違い、褐色肌で身長も一回りも大きく巨人種族の中でも男共と同じくらい長身である。ツェリスカの妹でもあるが、身長は彼女よりはるかに高い。

「えっ…援軍来るかもわからないのに私を後方配置するって私後ろから敵が来たらどうしたらいいダネ?」

 語尾にダネをつける癖があるこの巨人種族の女性。適度に日焼けした健康的な肌、金髪にウィーブがかかり肩よりも少し長く、この三人の中で末女となる。身長は丁度ツェリスカとタヴォールの真ん中だ。名前はダネルダネル、不安そうな表情をして長女のツェリスカに聞いていた。

「ツェリ姉さん?」


 遠くから巨大な白い赤ん坊が手を前に出しながらよたよたと二足歩行で歩いてきていた。あ〜あ〜という声が真っ黒な口から発せられ、赤ん坊の形をしているが歯並びは健康的にもしっかりと生え揃えられている。それは凶悪にも噛み殺すために使ってくるのだ。

 目は銀色になっていて、まるで水銀で満たされたような眼球だ。ぶよぶよとした肉体からは想像できない程、敵と判断した相手には過敏に動く化物でもある。


「自分でなんとかしろ、今までだってそうだっただろ。やるしか無いんだよ」

 妹に対してぶっきらぼうに言う、見た目が違うが産まれは一緒だ。親の顔は知らない、試験管から産まれてきた彼女たちはただ産まれた順番が近い事と、誰よりも一緒に過ごしてきたからこそのやり取りだった。


「ちぇー、ほんじゃ…あのあたりにいるね」

 ダネルダネルは、普通の人間にとっては機銃や大砲とも言えるサイズのスナイパーライフルを軽々と持ち、走っていった。ツェリスカはため息をつき、近接戦闘用の武器に切り替えるため、持っていた魔道書を後ろの腰のホルスターに仕舞いこんだ。

 右太ももから彼女たちのサイズではハンドガンの銃を手に取る。銃口は真四角になっており、黒い刃と一体になったバヨネットハンドガンと呼ばれるものだ。普通の人のサイズではアサルトライフル並の大きさだった。それが銃だと見た目では判別が付きにくく、何かと問われれば剣といったほうがしっくりくるようなデザインだった。


 ツェリスカはそのベヨネットハンドガンを持ち、銃に祈りを捧げるように顔に近づけると変形して大きな剣へと変形した。ディヴァインエッジモードと言われる形態で、いわゆる大剣状態だ。先程の四角い銃口はなくなり純粋な剣となる。

 一方、タヴォールは菱型の銃口を持つブルパップ式のアサルトライフルに祈りを捧げるように顔に近づけると大きな戦斧へとなった。普通のアサルトライフルと違い、弾を入れるマガジンがトリガーの後ろ側についているアサルトライフルだ。

「テラシォグラツォ、私を守ってくれ」

 タヴォールはボソリと武器に対して言葉を紡ぐが、特にその行為が武器そのものを変形させるキーワードでも呪文でもない。二人が持つ銃でもあり剣であり斧にもある武器は彼女たちに作られた特殊な武器なのだ。


 二人は顔を合わせ、頷き合い赤ん坊の群れに突っ込んでいく。そして突如として赤みがかかった空から黒い穴が不規則に現れ、空の色が変化していった。あたりは一瞬で暗くなっていくが、火のくすぶりや爆発などの閃光であたりは辛うじて明かりを保っている状態だった。

「な、なんだ?」

 ツェリスカは今まで体験したことがない不気味な空に全身の毛穴が開いていた。


 白い巨大な赤ん坊も進行を止め、上を見上げていた。3人も不気味な空模様に不安を覚えていた。戦場では何が起きるかわからない、だが彼女たちが見た景色は今までの中で異常過ぎると告げていた。

 黒い穴がどろりと溶け、それがのっぺりとした顔に変わっていき、唇のないむき出しの歯が形成された顔ができた。無数の穴が顔へと変わりに口が一斉に開いていく、そこから何かを放射されるのかそれとも何かを吐き出すのか、彼女たちはただ危険だと察知していた。

「ツェ、ツェリ姉ェ?!」

 空から目を離さず姉の名前を呼ぶタヴォール、彼女たちはわかっていた今までで一番ヤバイ、これは生き残れないと…

 空が黒い顔に埋め尽くされ、口から淡い光を漏れ出していた。その光であたりは真昼のようにじょじょに明るくなっていった。


「最大防御体勢!!!!」

 ツェリスカは叫び、大きな剣から防御フィールドを最大出力で展開させ、自分の周りにフィールドを発生させる。透明な黒っぽい紫色の八角形の板が合わさりあり完全にツェリスカを包み込み更に紋様が刻まれていった。タヴォールもテラシォグラツォと呼んでいた戦斧から同じような防御フィールドが展開され身体を包み込んだ。

 彼女たちが待つ近接武器は盾といったものを持たない変わりに武器そのものが体を守るバリアを貼ってくれたりする機能がついていた。


 上空の口から白い光が地面に向かって発射され、自分たちがいる所からかなり離れた場所で大きな爆発が見え、遅れた頃に爆風が彼女たちに襲いかかる。防御フィールドはその衝撃波程度では揺るがなかった。だが、前方にいる巨大な白い赤ん坊にたちに向けて照射され、着弾時の衝撃波をもろに二人とも食らった。


 防御フィールドにヒビが入る度に修復はされるものの長くは持たない事が彼女たちはわかっていた。

「無理無理無理無理!!!!」

 タヴォールが戦斧を片手で構えながら背中に背負っている巨大な盾のようなものに触れる。盾に似たようなものは変形し、天球儀になりクルクルと回転し出す。彼女が持つ天球儀は立体的な星系図と言われるものではあるが様々な戦闘に役立つ便利な機能がついた魔道具だった。タヴォールは天球儀を使いさっきよりも巨大な防御フィールドが展開され、ツェリスカとタヴォールを包み込み衝撃が和らいでいった。

「よくやったタヴォール」

DD(ダネルダネル)は—」

「大丈夫だろう、一番頑丈だしな…」

 防御フィールド内は静寂に包まれていた。

 二人はわかっていた、あの光が直撃したら耐え切れないと…このままだと死ぬ、進軍しても死ぬことに


「ツェリ姉さん、試したい事があるんだ—」

 タヴォールは戦斧を置き、変形した天球儀の核に手をかざす。ツェリスカ、タヴォール、そして、どこかにいるダネルダネルの三人の身体が光りだし、リング状の紋章が現れ出す。

「これは—」

 ツェリスカは困惑していた。自分の周りに形成されいった紋章を読み取りそれが何を意味するのか理解していたからだ。そう緊急脱出系統の術だと彼女はわかったのだ。

「タヴォール!貴様!」

 彼女たちは光の粒子になって消えていった。



 世界戦争末期、彼女たち三姉妹、長女ツェリスカ、次女タヴォール、末女ダネルダネルは戦死されたことになった。

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