表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
幻妖の縁〜双刻鬼伝〜  作者: 緋澄
弍章 鬼
7/17

???

何十年も、何百年も眠りについていた。

大切な、優しい思い出を抱きしめ闇の中に落ちていく。

永遠に目覚める気など無かった。

もう出会うことはない"主"を想い続けることしか出来ない。

せめて、枷である今の主人にだけは忠誠も干渉もしない。

もう二度と、他の誰のものにもならない。


「妾の心はお前だけのものだ。永遠に…」


涙が頬を伝う。

目を閉じれば、まるで昨日のことのように思い出す。

紅い綺麗な夕日と紅葉が舞う景色。

"主"がお気に入りの場所だと言っていた。

"妾"も好きだと言えば嬉しそうに微笑む。

その笑みが瞼の裏に鮮明に焼き付いている。

この感情は、『好き』というものだったのだと思う。"妾"が持つべき感情ではないが。


ーそれでも"妾"は好きだった。







どれくらいの年月が経ったか。

ふと懐かしい声が"妾"を呼んだ気がして目を覚ます。


「…□□?」


"主"の名を無意識に呟いていた。

深い闇から久しぶりの外界に出る。

ふわりと宙に浮かびながら必死に探す。

"主"の名を何度も何度も呼びながら。



そして現れた。

しかし何度呼んでも反応はない。

何故だ。何故声が聞こえていない?そんな筈はない。"主"は"妾"に選ばれた者だ。そして確かに目の前の"主"には契約痕(しるし)があるというのに。



「妾の声が聞こえぬのか!?□□!」



涙が溢れ頬を、首を流れていく。そんなことも気にせず"主"に触れようとする。が、手が、身体がすり抜ける。

言葉にならない声が嗚咽混じりに漏れる。

目の前には待ち焦がれた"主"がいるというのに。

背後から抱きしめるように被さり、そっと左手に"妾"の左手を重ねる。


その途端。



"妾"に気づいたかのように振り返る"主"に顔が綻ぶ。

しかし"妾"を認識したわけではなかったらしい。不思議そうに周囲を探す"主"に肩を落とす。

それでも触れた左手を握りしめる"主"の姿に冷え固まっていた心が解れるような気がした。


「妾はここにいるぞ。ずっと、待っていた。□□」


"妾"の名を呼んで。"主"に呼んで欲しいのだ。

次こそは守って見せる。"主"を失いはしない。


そして、



ー独りにしないでくれ。



どんなに強がって心を閉じても、もう独りは嫌なんだ。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ