【3話】(元)王様と新しい仲間
きょろきょろそわそわおどおど。
きょろきょろそわそわおど…ビクッ!
何だろう、あの小動物。
ひたすらルエの実を取り、時々クリフに喧嘩を売られたのを買い。あまりの白熱ぶりにエリスお婆ちゃんが赤い殺人ドリンクを、老婆と思えない軽やかな身のこなしで私達を死の淵に追いやったりしている一週間。
この村の恒例の商人の小隊がやってきた。小さな怯える子供と村人に挨拶する若い夫婦と共に。
「話を聴いたら、村に行くとの事でね。折角だから、一緒に来たんだよ」
「わざわざありがとうございます」
「いやいや…この村が絶えて欲しくは無いですから。これ位はタダでやりますよ」
シャーデさん、下心が見えてます。
村長とシャーデさんの会話に突っ込みをしつつ、私はもう一度だけ新しい村の住民となる子供を見た。
金色のふわふわとした髪はお父さん似だ。顔立ちは今は怯えているけど可愛らしくで性別が解らん。が、大きな緑の瞳はお母さん似なんだろう。この村の基本は女性でも動き易さを重視しているズボンの為、他の村の基本を私は知らない。もし、ナコル村の基本と違う村であるならば、この子は男の子だろう。
それにしても、肌が白いなぁ。
「イリスちゃん、話に行こうよ」
「うん」
村の子供の一人であるユナちゃんが私の手を取る。それを握り返して私達は男の子(予想)へと近付いた。
ナコル村は現在、十歳未満の子供が私と6歳のユナちゃん。そして私と同じ5歳のクリフしか居ない。10歳以上というなら、三人は王都を目指して村から旅立った。
何か学校が王都にあるんだって。詳しくは話を聞いていなかったけれど、もっと大きくなったら教えてくれるらしい。
ルエの実の入っている袋を荷馬車に積む手伝いをしていた、クリフが私達よりも先に子供へと駆けて。
「お前!」
「は、はぃ!?」
「男か!?」
馬鹿か貴様!
勢い良く指を突き付けたクリフに涙目で怯えて震える男の子(多分)を救うべく、わたしはユナちゃんから手を離して。
「この馬鹿クリフ!」
上段蹴りを奴にお見舞いしてやりました。
「イッ!…の、ガリガリ!何すんだよ!」
「第一声が酷過ぎるわ、馬鹿!」
「ねぇ、君って女の子?」
ユナちゃん、私の叫びを聞いた?
直ぐに迎撃の構えを取るクリフと威嚇し合う中で、ユナちゃんがにこやかに問いかけるのに、私は項垂れてクリフは「だろ?」と誇らし気に胸を張る。うん、ムカつく。
「い…い、え。僕は男…です…」
「へぇ、クリフと違って可愛いね」
「男が可愛くちゃ駄目だろ」
ユナちゃんにビクビクと怯えながらも、小さな声で言う男の子(確定)にユナちゃんがクリフを見てため息を吐いたのを、クリフが嫌そうに返して更に不服だと鼻を鳴らした。そんなクリフにユナちゃんは頭を左右に振る。
ユナちゃんは、セミロングの綺麗な青い髪に左右をちょろりとピンク色のリボンで結んで。少しつり目の紫苑色の目をした女の子だ。私達よりも一歳年上なので、私にもクリフにもお姉ちゃんとして接する早く大人になりたい子なのです。
以前、理由を聞いたら『商人になって稼ぎたいから』との事。
自身で摘み取ったルエの実を材料に、シャーデさんから実戦で交渉を学んでます。
「ねぇ、名前は?」
二人の様子に私は何時もの事だと放置、新しい仲間へと声を掛けた所。
「ボッ…僕は、ハロ、ン…です」
めっちゃ、怯えられた。
何で。
ショックで固まる私に、涙を流しそうな震えるハロン。事態に気付いたのは、ユナちゃんで。
「ハロン、私はユナよ。これはクリフ…で、この子はアイリスなの。ガリガリだけど、モンスターじゃないわ」
モンスター!?
「そうだぞ、直ぐに殴るが弱いから気にすんなよ」
「…ご、ごめん…」
クリフの追撃によって、更に怯えた目で私は見られてしまった。二人は私の敵なのか。
「クリフ、意味は売り言葉って思わないでおくけど…えと…宜しく?」
クリフを無視して、私はハロンに手を出すと彼は、肩を跳ねて一歩だけ後ろに逃げました。シン、と静まり返った中で、私達を見てユナちゃんが、私の手を掴むと。
「イリス、あっちで手伝い」
ぐるりと私の身体を反転させて、調味料類を運ぶ村の人達へと背中を押した。
「…はい」
結局、私はとぼとぼとお手伝いに向かい。その途中で、後ろを振り返って三人の姿を見て、肩を落とした。
こういう事態は、結構ある。
私は何故か、この村の人以外には様々な反応をされるのだ。記憶にあるのは、シャーデさんの息子が来た時には、会話が出来ない位に警戒されて。新しい護衛の人には、暫くの挨拶の会話が「本当に子供か?」と言われる事だったり。
私は子供以外に転生した覚えは無い。
…待て、自分。
手伝いが終わった後、村に2日間は残って帰る準備をするというシャーデさん達を、村が総出でお祝いという名目で、ただ騒ぎたい村人が祭を開いている中。私は疲れたと言って、心配するお爺ちゃん達に祭りを楽しんできて欲しいと言って、一人で先に家に帰った。
「…カリスマS+…」
原因、判明。
そう、私は誰にも見られない様にステータス画面を見ていたのだ。
パラメータに関して、簡単な説明をするにはまずは『王の資質』から説明をするべきだろう。
『王の資質』とは、プレイヤーキャラクターのジョブとも言えるシステムだ。これは皆最初は『未熟な王』という資質だが、進化の段階は国のレベル。その時の国民の満足度や、国の施設等の状態値。軍の戦闘力や戦闘し勝利した数に同盟国の数によって、勝手に進化していく。
資質は大きく分類すると筋力に特化した『武王』と上位の『覇王』と魔力に特化した『知王』と『賢王』。
何か、属性っぽいけど。覇王は前衛で魔法は使えない。賢王は魔法使えるけど、剣とか持てない。
だからこそ、ジョブと呼ばれる由縁なのだ。
賢王がどれだけ軍の攻撃力を上げても、覇王には力に勝てないし、逆に国の設備をどれだけ上げても賢王の魔力には及ばない。
そして、その王の資質は、パラメータで評価され。プレイヤーのステータスの補助になる。
簡単に言うなら、覇王なら力が10も増える、とか。
さぁ、私の説明をして最後に王の資質がどう運営に作られていたのか説明しよう。
皆の国、最初は小さな村見たいな城しか与えられない。私の場合は、与えられた城がエルフの里がお隣でした。慌てて同盟をする前に攻撃されてしまったので、エルフの里を滅ぼした。滅ぼしたその土地を頂いて、私の国のレベルが上がったので『武王』になった。
同志の話だと、完全なる死亡フラグだそうだ。チュートリアルにて、ランダムで『創造』された臣下の優秀さで助かりました。
そうして、私は同盟をするよりもまずは『理想の国』の基盤を用意したくて、一度だけ、同盟の勧誘をして断られると。
後で相手が同盟を申請しようが、全面降伏しようが滅ぼした。
だって、交易よりもこっちが国の為になるんだもの。
で、一回目の統一にて『覇王』となった。
そこで、『移転』して同じく自国に優しく、敵国は殲滅。うちに来た子は受け入れて…を、繰り返して10回目の統一の特典にて王の資質の条件が解放されて『天上天下の皇帝』になった。この頃から、何か自国への移住が増えて臣下の忠誠や国民の満足度が上がりやすくなって。同盟がほぼ、結べなくなった。
更に、お年玉や社会に出たら課金に手を出して、ハードコアな同志の力や技術と私の涙を誘う努力で。統一50回目にして再び資質の条件を解放し『三千世界の女帝』になった。後は臣下を限界突破させて、使徒を選び抜き。理想の国とした記念すべき100回目の統一にて最後の進化を特典として頂き『唯我独尊の女帝』となった。
初心を貫いた結果の、これが私の王の資質の進化具合なのだが…これが、まぁまぁ厄介だった。
パラメータはカリスマ以外は現在、封印されているのだけれど。記憶が正しければ、正規のパラメータはこれだ。
軍事力:S
内政:B
外交:C
カリスマ:S+
軍事力は純粋な、体力、攻撃と防御に俊敏。内政は魔力、魔攻と魔防に影響があり。ちなみに、俊敏は軍事力と内政の二つから影響があります。外交とカリスマはまた別なのだが。
その中で唯一封印されていないカリスマの説明文が『相手に畏怖と憧憬を与える王の風格』
民草にこんなのいらない…っ!
そろそろ、幼少でのビックイベントがあります