【1話】(元)王様は転生者~幼少編~
私は、十年前にこの世界に転生した元日本人です。
しかも、どうやら私は六年以上、遊び続けているゲームのプレイヤーキャラクターになってしまったご様子。彼女の名前は『アイリス』今は私の名前だ。
さて、簡単に私の過去を振り返ってみよう。
まず、私は高校を卒業して直ぐに社会の波に飛び込んだ転生する前は、二十歳を過ぎたオタクな女だ。彼氏?何処かの国の言葉です?
まぁ、私の話は重要じゃない。
大切なゲームの話をしよう。私がハマっていたのはパソコンのブラウザで遊べるMOシュミレーションRPGの『異世界遊戯』である。
あらすじはこうだ。戦いに明け暮れる混沌とした世界を任された、一人の神様見習いがその世界で国を造り、世界を統一する事。
神様見習いは、プレイヤーキャラクターで、昇格クエストをクリアしていけば一人前の神様になれる。他には『王の資質』というシステムが存在し。それは、プレイヤーの職業みたいなもので、これは国を発展させていくと、その国の状態やプレイヤーの行動で進化していく。
ちなみに、やり直すには全て消去して新しくやるか。課金アイテムの『魂の浄化』をしないと、プレイヤーの神格や資質は固定です。
世界観は中世の洋風から様々なファンタジーを中心に、種族も様々。龍人やらエルフやら吸血鬼やらやらやら。これはバージョンアップしていく度に、新しい世界観や種族が増えた。
私は、ぶっちゃければ異世界大好き!妄想や想像任せて下さい!の人物だった為に、高校からハマって以来、今日まで自分で『理想の国』を造り上げ。世界を統一しては特典を貰って、『転生』せずにその国ごと次の異世界で暴れまくる。
こんな事をして、類友と交流しては時々オンラインバトルを繰り広げて楽しんでいました。
さぁ、皆様。お気付きでしょうか?私が『転生』といったのを。
そう、このゲームはプレイヤーが神様なので、実際にキャラクターは『神の器』と設定される。
だから、敗北してやられようが肉体が滅びても新しい『神の器』を用意するので、国は継続して再び侵略出来る…との設定である。
このゲームにはまた別に、世界を統一するとその特典が統一回数ごとにグレードアップして貰えるのだ。
まず、一回目は『転生』と『移転』
これは、プレイヤーキャラクターだけを次の世界に引き継ぎする『転生』と国ごと持っていっちゃう『移転』である。その後の特典は今は良いので、省きます。
こんな感じで、その他の要素にも恵まれたゲームは私の心を掴んで、私は遊びに遊びまくって自国をいじくりまわした。
そして、どうやら私はリアルで『転生』をしてしまったらしい。
まず、仕事が終わってゲームでによによして明日の仲間達との開催するイベントに気合いと課金を導入して万全なる準備を施して、寝た。
の、ですが。
余りの寒さに目を覚ますと、一面は雪景色の世界。もう、慌てて起き上がろうとしても起き上がれず。寒いし痛いし、息も満足に出来なくて苦しいのに、震えて声を出そうにも声にならない。直ぐに意識は無くなってきて、死ぬのかと思ったのです。
結果的には、助かりました。
意識が無くなった後に、私は無事に見つかって。一週間の間は高熱を出して、生死の境をさ迷い続け。それから、五年もの月日を転生したという記憶を無くしたまま、普通の子供として育ち。
つい、3日前にこの小さな村のガキ大将のクリフ君に川に突き飛ばされ。再び、高熱を出して2日寝込んだ次の日である、今。
私は、転生者である事を思い出したのです。
ありがとう、クリフ君。君が川に突き飛ばしてくれたお陰で、私は重要な事を思い出せました。だから、君のお母さんとうちのグエンお爺ちゃんの粛清を受けて、召されろ。骨は拾わずに土を掛けてはおきます。
「イリス、大丈夫かい?」
念の為にと、ベットに押し込まれている私は、暇潰しとしてお婆ちゃんから任されたルエの花の種を取っていると、お婆ちゃんが木のコップを片手にやってきた。
ルエの花は、向日葵に似ているが種は丸く赤い。この種をすり潰して水を混ぜながら煮込むと、とても苦い風邪薬になる。その苦さは、地球で例えるなら青汁を煮込んでセンブリ茶を混ぜた。つまりは、人を殺せる味です。栄養も豊富な種はそのまま軽く煎るとピーナッツみたいな味で、普通に食卓に並ぶ。
我が村の特産品です。
「エリスお婆ちゃん、大丈夫だよ」
「そうかい?おや…随分取れたねぇ」
お婆ちゃん、が結構とれた種を見て皺を深めながら微笑んで、私の頭を撫でる。嬉しくて、少し照れ臭くて私ははにかむと、お婆ちゃんの手にあるコップに注目した。
「…お婆ちゃん…」
「イリス、念の為に飲みなさい?」
渡されたコップは赤い液体。恐怖に顔が凍り付く私にお婆ちゃんは笑みを絶やさない。
私を拾ってくれたのは、グエンお爺ちゃんとエリスお婆ちゃんの夫婦で。赤ちゃんだった私を、子供に恵まれ無かった二人はとても大切に育ててくれた。
それは、もう大切に。
「おば…ちゃん」
「また、熱が出たら大変なのはイリスなのよ。お婆ちゃんとお爺ちゃんも心配なの」
涙目の私に、お婆ちゃんが種と花を私から受け取って、私の審判を待つ。飲むか、飲まざるかを。
私は震える手を持ち上げ、目をキツく閉じると…赤い地獄の飲み物を、途中で吐き出しそうになりながら飲み干した。
私を拾った時、私はとても高価な服に包まれて一つの指輪と共に捨てられていたらしい。二人は話し合って、国には言わなかった。
何故なら、私は可能性としてだが、貴族の捨て子かもしれない為に、国に話せばそのまま消されてしまうかもしれなかったからだ。指輪にあった名前は、彫られている為に、私の名前だと判断したらしい。せめてもの情けで名付けられたのだろうって。
実はその服は、私のプレイヤーキャラクターの衣装であり。指輪は私の名前ではあるが、キャラクター名で。その指輪は統一の褒美の一つなのだが。
まず、私は先程飲み干した殺人兵器との戦いに精魂尽き果てた。