兎と虎
「ねぇ、暑いんだけど」
夏なのにべったり引っ付いて離れない虎。
「いーだろー、少しくらい」
「何がいいんだ、暑いって言ってるの」
引っぺがして、そっぽを向く。
「死んじゃうの?」
後ろから泣きそうな小さな声が聞こえて焦る。
「は?」
別に病気でもないし、自殺する予定もない…何処から出てきたんだ、その話。
「兎って寂しいと死んじゃうんだ」
「…」
どこかで聞いたことのある話。
『兎はさびしいと死ぬ』
実際それは都市伝説的なもので、根拠は無い。
あえて言うなら、兎はストレスに弱くて、環境の変化などで死んでしまう…っていうことらしい。
「だから、僕が兎の側にずーっといるの」
そんなこと、5歳の弟分に言う話ではないだろう。
自分の為にこんな一生懸命になる姿は正直可愛い。
「しょうがないなぁ…」
小さいから、ずっと何て事が言えるのだ。
姉たちやませた同級生たちを見ているとそう思った。
だけど、隣にいる虎は純粋で、一生懸命で、何も知らない。だから、可愛い。
ほんとはいけないんだけど。
冷房のスイッチをonにして、虎を抱きしめた。
「虎が側にいてくれるんでしょ?」
パチパチと目を瞬かせた様子からして、急なことで驚いてたらしい。
でも、すぐにキラキラした笑顔で、
「そうだよ、兎とずーっと一緒にいるんだ」
私に抱きついた。
きっと、虎が側にいる限りストレスで死ぬ時は来ないと思った。
基本短編投稿となると思います。
目指すは読んだ後にちょっとほっこりなる話です。
アドバイス、間違いがあれば教えていただけると助かります。




