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三題噺もどき5

作者: 狐彪
掲載日:2026/05/21

三題噺もどき―はっぴゃくななじゅういち。

 



 外から何かの声が聞こえてきた。

 何だろうと見やると、小学生の学校の塀沿いを歩いていた。

 校外学習とかだろうかと思ったが、すでにランドセルを背負っているという事は下校の時間だったんだろう。

「……」

 それにしては早いなと思ったが……小学校の頃の記憶なんて薄れているから、そんなものなのかもしれない。低学年は早かったりするから。

 まぁ、見るからに低学年だけの人数ではないし、身長の高い子もいるから、一斉下校だったんだろう。

「……」

 なにか行事でもあったんだろうか。

 今の時期だと何があるんだろう……家庭訪問とか?あとは単にPTAとかだろうか。

 修学旅行の説明会とかなら、6年生だけだろうし……どうだったか。全員帰ったっけ?覚えていないな。ほんの数年前の事のはずなんだけど。

 ……まだ、夢みたいな夢を持てたころの話は、覚えていない。

「……」

 こちらはまだ昼休みだと言うのに。

 教室内は人が減り、廊下でぎゃあぎゃあと叫ぶような声が聞こえる。

 外を歩く小学生と大差ないと思ってしまったんだけど……それはそれでいいんだろうか。

 まぁ、昼休みだし怪我をしたり余計なことをしなければ、別に好きにしていいんだけど。

「……」

 隣では弁当を食べ終え、いつものメンバーで会話をしているあの子が座っている。

 机の上には丁寧に包まれた弁当箱が置かれている。

 猫の模様の入った可愛いやつ。もちろん、私のではなく、あの子の。

「……」

 楽しそうに会話をしながら、スマホをいじっている。

 なんだか、不思議なものだよな。

 毎日こうして話したりしているのに、毎日話が尽きることがないんだから。

 どれだけ一緒に居ても、どれだけ話しても物足りないと思うんだから。

「ね、――は何に出るの?」

「あー……クラス対抗だけだった気がする」

 くるりとこちらを振り返り、話の話題になっていたものを振ってきた。

 今日は今月末にある体育祭の話をしている。

 何が楽しくてしないといけないのかと不思議に思うが、体育祭というモノは年に一回必ずあるので。休みたいなその日。

「綱引きとかでないの」

「なんかどれかはあったけど……忘れた」

「なんでやねん」

 我が校では、クラス対抗ものは全員強制参加。

 あと一種目何かに出ないといけないのだが、果たしてそれが何だったか忘れてしまった。多分それこそ、綱引きだったような気もするが……。他にも大縄跳びと陸上競技……何メートル走が数種目ある。確か綱引きだった。

「……綱引きだった気がする」

「じゃ、一緒だ」

「え、綱引きにしたの」

「まぁ楽だしね」

「まぁ、ね」

 他の競技に比べれば全く楽だから、綱引きは割と人気だ。

 私のクラスはどうやら運動部……というか動きたい子がそれなりに居たので、綱引きになれたのだ。そうだそうだ。そうだった。

「じゃ、それ以外の項目は一緒に見る?」

「うん。そうしよ」

 私は写真部としての活動もなくはないのだが、今年は3年生と言う立場なので、その辺は1,2年生に任せることになっている。毎年そうしているから、去年はずっと走りっぱなしだった気がする。基本的に誰がどの競技を撮るかというのは決まっていたんだが、3年生が居ない分色々と大変だった。楽しかったは、楽しかったんだけど。

「……」

 まぁ、今年も普通にカメラは持ってくるんだけど。クラスの子をメインに撮ったりはしておいた方がいいだろう。最後の卒業式とかで飾る用。

 あとは、まぁ、色々。

「あれ、ねぇ」

「ん、なに」

 くん―と、突然目の前にあの子の顔が近づいてくる。

 ほんの少しだけ離れていただけなので、気のせい何だろうけど。

 大きな瞳が、私の顔のどこかを凝視している。

「……また、噛んだの?これ」

「……」

 そう言って白い指がさしたのは、私の唇だった。

 いつからなのか分からないのだけど。

 無意識に、犬歯で唇を噛むような癖が私にはついていた。

 いつなのかははっきりしなくて、まぁ、分かりやすく言えばストレスを感じている時なんだろうけど、あまりはっきりはしていない。

「……傷になるし乾燥するからやめなって」

「……そうだけど」

 無意識で行っている以上、止めようもないのだ。

 気付いた時には結構噛んでしまっている。

 酷い時は切れて軽く出血することもあるのだけど、そこまでにならないと気づかない。

「リップクリームは?」

「……ない」

 あのべたべたした感触が嫌いで、クリームは塗れない。

 あと匂いつきの物とか、色付きの物とか多くて使いたくない。

「……今度買ってきてあげようか?」

 にこりと、笑っていないような笑顔で笑いながら言う。

 こういうところ、この子は怖い。可愛いんだけど。

「いや、大丈夫。家にはある」

「……ほんと?」

「ほんと」

 じぃ、とみられると何もしていないのに、悪いことをした気分になる。

「……明日学校に持ってきてね」

「……はい」

 帰りに買って帰らないといけなくなった。











 お題:夢・噛む・猫

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