利益の変化
2日連続の早起きは15歳の体には酷だったようで、
屋敷に帰るやいなやベッドに潜り込んで爆睡してしまった。
「お嬢様、朝ですよ」
3日ぶりの早くない朝を迎えた。
寝すぎたせいで身体が少し気だるいけど頭はスッキリしている。
「朝食の準備ができていますので、食堂へどうぞ」
アシュに促されて食堂へと向かった。
食卓には、これまで通りパンにスープとお肉が並べられていた。
(今日も2人はパンだけか⋯⋯)
いつものようにパンをスープにつけて口に運ぶ。
パンを噛んだ瞬間に異変に気付いた。
「⋯⋯柔らかい」
この世界に来てはじめて、パンの柔らかさを感じた。
「今日のパンはいつもよりも食べやすいわね」
お母様はパンを何度も触って柔らかさに驚いていた。
いつもとの違いを感じ取ったようだ。
「うむ、食べやすいな」
お父様が小さく呟いた。
「もうちょっと柔らかったら、スープなしでも食べれそうです」
いつもなら、スープにつけても悪戦苦闘していたシルクが、
すんなりと食べれている。
やっと領主邸にちゃんとしたパンが並んだ。
食事を終えた私はすぐにパン屋へと向かった。
「嬢ちゃんいらっしゃい」
パン屋へ入るとすぐにバンズさんが出迎えてくれた。
「いや―嬢ちゃんすごいぞ」
「なにがですか?」
「今日も失敗が0だった上によ⋯⋯」
カウンター前に居るお客さんに視線を向けたため、
私もつられて視線を向けた。
「リリィさん、昨日からパンの作り方変えました?」
「なにかおかしかったでしょうか」
困惑したリリィさんを横目に、
「昨日のパンね、食べやすかったわ」
「それなら、うちの職人とリズお嬢様が工夫したようです」
「本当!?うちの子もこれなら食べれるって言ってくれて助かるわ」
思いがけない結果が生まれていた。
「失敗をなくすってはずだったのによ、気がついたら出来栄えのバラつきも無くなったようだぜ」
「これが改善です!」
ハハハッと笑って私の頭をワシャワシャするバンズさん。
狙ったわけじゃないけど、嬉しかったようだ。
「とりあえず、3日は様子見るって話だけど、この感じだと問題なさそうだな」
「そうですね、そうすれば次のこともはじめられそうです」
「次?」
私も嬉しかったのかちょっと口走ってしまった。
「いえ、もう一つ別の結果が出たら言います」
「そうかい、時期が来たら教えてくれよ」
「はい」
「旦那様、失礼いたします」
「セバスか、入れ」
紙を持ったセバスが、お父様の机の前に立ち、
「こちらが先月の収支報告書になります」
「ありがとう」
渡された報告書を読み始める。
(先月もいつも通りか⋯⋯)
眉間を指でつかみ、変化の無さに近づく終わりを実感する。
ページをめくりパン屋の収支に目を通した。
(こっちもいつも通――!?)
明らかに異常なことが記されていた。
毎月900近くのロスが計上されていたのに、先月は100に減っていた。
1日毎の生産項目を丹念に読み進めた。
月初めの3日間は、これまで通りに30個近くのロスがあったのに、
4日目から0になっている。
それ以降は、落下などでロスは出ているがこれまでとは違う。
利益率の項目を探す。
「7%!?」
なぞった指が明らかに動揺していた。
10数年、3~4%を推移していた数字が、
たった1月で、利益が倍近くになっている。
「バンズが嘘の収支を書くなんてありえん」
どうやってロスをなくしたんだ。
報告書を机に放り投げ、深く息を吸いながら視線を宙に向けた。
「お父様、帳簿を見させてください」
1ヶ月前の記憶が不意に蘇る。
「リズか⋯⋯」
そういえば、帳簿を見た次の日から何やら領地によく出かけていたな。
それからすぐに、パンが食べやすくなった。
パイプを取り出し、ゆっくりと煙を吸い込む。
「今日の夕食は少し奮発してみるか」
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