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女社長、転生したら貧乏令嬢!?貧乏領地を立て直します 〜現代知識で異世界経営戦略〜  作者: 冬馬


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12/18

最強の切り札

今日もカウンターの横に茹でたてを置いて、

『試食自由』とだけ貼った。


「なぁ嬢ちゃん、昨日言ってた切り札ってなんだ?」

「言ったら切り札にならないでしょ」


別に隠す理由はないが、最悪を考えて教えられなかった。


「メイドさんは知っているのか?」


アシュは黙って首を振る。


一応はプランBを考えてはいるが、出来れば使いたくない。

最悪なシナリオを辿り続けると、領地の信用問題にまで発展してしまう。


悩んでいてもしょうがない、先のことを考えよう。


「ねぇバンズさん、朝にパンを焼き終わったらパン釜は空いているってこと?」

「そうだな」


午前中の4時間しか稼働しないなんて、

なんて稼働率の低い設備なんだろう。


「じゃ、薪代さえ出せば午後は使っていいってことね」

「なにを考えている?」


ジャガイモの有効活用をずっと考えていた。


はじめは、フライドポテトが浮かんだけど、

油を大量に使うのは採算が取れない。


いももちも、でんぷんから片栗粉を作るのは難儀で却下。


だから、SNSで少し話題になっていたスマッシュドポテトが閃いた。


茹でて、潰して軽く油を掛けてパン釜で焼けばすぐに作れる。


「もっと美味しいジャガイモの料理食べたくない?」

「なんだって!?」


すぐに指示を出して調理に取り掛かった。



「あんな作り方でうまいのか?」

「バンズさんなら1週間は食べ続けるかもね」

「まじかよ⋯⋯ゴクリ」


焼き加減を確認しながら、出来上がりを待つ。


「やっと焼き上がったぜ」

「良さそうな焼き加減ね」


15分の砂時計が2回落ちきったタイミングと、メモに記入する。


「アチチチ、素手は無理だな」

「当然でしょ」


と、アシュと笑いながら少し冷めるのを待った。


「このくらいなら食べれるな」


バンズが行けると言ったわりには、熱さに苦戦しながらかぶりついた。


「やばぇぞこれ」

「食べたいけどまだ熱いわよ」

「焼いたおかげで、外はカリッカリッだけど、

中はホカホカっていう絶妙さだ」


それを聞いてもう我慢できなくなって、私も手に取った。


「熱いけど⋯⋯カリッカリッのふっくらね」

「油のおかげでしょうか、茹でたときより甘みを感じますね」


マヨネーズを付けたり、粉チーズをまぶして焼いたり、

アレンジすればもっと美味しくなる。


まぁ、それすらないんだけど。


「牛って高い――」


聞こうとしたとき、店舗のほうが騒がしいことに気付いた。


ジャガイモのせいで、揉めてるんじゃないかと不安になり急いで確認しに行った。


店舗を覗いた先、お父様とお母様が客に囲まれて居た。


「来てくれたんですね」

「あぁ、あの後色々考えた。母さんにも相談した」

「それで⋯⋯」


お父様は来てくれた、わざわざお母様を引き連れて。

でも、それが食べてくれると同義ではない可能性もある。


「これがジャガイモか」


カウンターにゆっくりと近づき、試食であるジャガイモを見つめる。


そっと手に取る。


「領主様、それには毒があります。食べるのはおやめになったほうが――」


そう言って、お父様を気遣った1人の客をお母様が制止した。


「これが、この領地を救う”食料”と言うのか」


そう言い終わると口に運んで食べた。


一口目を食べ終えるまで異常な沈黙に包まれる。


「うまい」


一言だけ呟くと、続けて食べすすめてあっという間に完食してしまった。


「じゃ、私もいただくわ」


続けてお母様も試食をする。


「ジャガイモってこんな味だったのね、なんて甘いのかしら」


2人が食べたのを見た客たちは無意識につばを飲み込んだ。

私やアシュ、バンズが食べていたときとは違う客たちの目。


「お父様、お母様ちょっと待っててください」


今が絶好のタイミングだと、急いで工房へ向かった。

さっき焼き上がったスマッシュドポテトを持って店舗に戻る。


「これ、ジャガイモで作った新商品です」

「あら、ちょっとぶきっちょな見た目ね」


見た目は確かに悪いけど、味には自信がある。


差し出されたスマッシュドポテトを手に取って、

2人は同時に口にした。


「これは焼いているな」

「はい、茹でた後に軽く油を振って焼きました」

「中と外の食感が違うのは絶妙ね」


これはおいしいと、お母様はお父様の方を見て微笑んでいた。


食事でお母様が美味しそうに食べているのをはじめて見た。

右手を小さく握ってやってよかったと思えた。


「パン釜は午前中しか使われていません、

なので午後はこれを作るために使いたいと思います」

「ふむ、いくらだ?」

「50イェンで十分採算が取れます」

「腹持ちもしそうだが、高いな」


確かに高い、パンは100イェンで3食を賄える。


「今の生産量だとです」

「どういうことだ?」

「今は年に2回しか作付けをしていません」

「そうだな」

「それを、1回増やせば計算上では30イェンまで下げれます」


私の計画はこれで終わりではない。


「これを他領で売り出します」

「!?」

「この領地は食料問題を抱えていましたが、それ以外に内需に依存し過ぎでもあります」

「お嬢様!」


外に居たセバスが遮ろうとしたのを、


「かまわない、リズ続けなさい」

「はい、我が領地は国に税を納めるだけの歯車でしかありません」


客の中には下を向き始めるものが出てきた。


「税のために麦を作り、あまった麦をパンにして暮らしてきた」

「それでも、前の領主よりはマシよ」


感情のまま口に出でたのに気づき、口に手をやる客。


「そうね、でも私はただの歯車で居たくありません」


これは本心だ。


「お父様がしてきたことを否定するつもりはありません。

でも、私はお父様もお母様もそして弟のシルク、アシュにセバス⋯⋯

そして、この領地に暮らすみんなを豊かにしたいのです」


私の決意に店舗内がざわめきだし、

領主が来ているということで店の外にも人が集まっていた。


「だからこのジャガイモは、外貨を得るためのはじめの一歩なんです」

「とはいっても、50イェンで売るもので得られる物はたかが知れているだろ」


お父様は意見してくれた。

これは、対等に接してくれている証拠だ。


「私は言いました!はじめの一歩だと」

「勝算はあるということだな?」

「えぇ、9割のあると思っています」

「そうか⋯⋯」


お父様は黙ってしまい、お母様がお父様の顔を覗く。


「私は⋯⋯兄の搾取によって苦しめてしまった領民に、

どうにか償いをしたいと思っていた」


突然のお父様の吐露。


「兄が貯めていた税を使ってここを作り、

できる限り税を取らないようにしてきたつもりだ」


お母様はお父様の手をそっと握りしめる。


「それでも私には、皆を豊かにする能力はなかった」

「そんなことはありません、今生きていられるのは領主様のおかげです」


同意のような声が多く聞こえる。


「リズ、助けてくれるかい?」


そっと私の肩に添えられたお父様の手。


無意識に奥歯を強く噛み締めて肩を震わした。


私は添えられた手に手を重ねて、


「任せてください!お父様たちも領民も豊かにしてみせます」


一斉に歓声が上がった。

レンガで出来たパン屋が大きく揺れる。


お母様が駆け寄って抱きしめてくれた。


「苦労かけてごめんね」


その言葉を聞いて、つぶった瞳から涙がこぼれた。



「リズ様、これ食べて良い?」


聞いてきたのは、初日に食べたいと言っていた子だった。

涙を指で拭って笑顔で答える。


「美味しいからいっぱい食べて」


子供の母親がハラハラしながら見守っている。

それでも、子供は躊躇うことなく食べる


「甘くて美味しいね」


それを皮切りに、たくさんの領民がジャガイモを食べたいと言い出した。


あまりの人数に、慌ててアシュとバンズが新しく茹始める。


食べた領民から、先日の謝罪や美味しいといった声が、

たくさん聞こえてきた。


今日は、毒芋で豚の餌だったジャガイモが、食糧に変わった大切な日だ。


読んでいただき、ありがとうございました!

感想一言でも大歓迎です。ブクマ・評価・応援待ってます!




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