襲撃3
GC.118.11.20 14:48
アストラルは全速で逃走を開始した。艦内には一瞬、安堵の空気が流れる。
「振り切るぞ」タリアンの声に、わずかに力が戻ったような艦橋の空気。
「不明艦が速度を上げました。」
「不明艦?あれは海賊船だ。」
ユナの報告をタリアンが遮る。
「わ、わかりました。海賊船加速してきます。」
リサの自信通り、アストラルは海賊船をジリジリ引き離していく。
「海賊船の動力性能など、こんなもんだ。一気に引き離す。」
ブリッジクルーの顔に安堵の表情があらわれる。
そんな中イグナスは厳しい目つきでモニターを凝視していた。
ユナの声が鋭く響く。
「艦長、進路正面に小惑星帯です!」
モニターに映る灰色の影が、無数の小天体の集合であることを示していた。速度を上げられない状況で、この障害群に突入すれば、アストラルに甚大な損傷を与えかねない。
タリアンは眉を寄せ、顎に手を当てて思案する。
「なんとか……できないか?」
ユナの報告は変わらない。
「この速度が限界です」
全員の視線がモニターに集まる。灰色の小惑星帯が迫る中、背後の海賊船が確実に距離を詰めてきている。逃げ切れるはずの速度が、今や致命的に制限されている。
「奴ら、この小惑星帯に追い込むつもりで仕掛けきたな。奴らの常套手段って訳か」
タリアンが呟く。
艦橋に漂う空気は張り詰めていた。ユナの手は微かに震え、コンソールに触れる手が僅かに汗ばむのを感じた。
海賊船の黒い影は、じりじりと迫ってくる。アストラルの進路は遮る小惑星の群れによって制限され、速度の上昇は見込めない。タリアンは顎を引き、深呼吸して自分を落ち着ける。
「全員、念のため衝撃に備えておけ。急回避もあるかもしれん。」
艦橋のモニターに映る点と影。小惑星帯の不規則な動きが、逃走経路をさらに狭める。タリアンの目は、刻々と接近する海賊船に釘付けだ。




