表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
2/2

2 入学

那須駅に着くと、集合場所となっている西口階段下には、同年代のスーツケースを持った好青年達がちらほらと集まっていた。皆、お互いに話しかけるわけでもなく、用も無いのに携帯を取り出したりする微妙な雰囲気だった。


集合時間3分前になっても迎えのバスが来ず、「変だなぁ」という雰囲気が辺りに漂い始めたので、わたしも「この場所であってますよねぇ?」とか話しかけようかと思ったが、何か負けた気がするので止めた。


第一、それで野木温泉行きの観光客に話しかようものなら、立ち直れる気がしない。



集合時間1分前にバスが到着し、乗り込むが、思ったよりも連れ同士の入学者は少なかった。


教習所への道中、皆押し黙ってこれまた妙な雰囲気だったが、わたしは遠くの看板をしきりに見ていた。

うわの空だったのではなく、買ったばかりでメガネに慣れていなかった為、視力が心配だったからだ。

地獄行きのバスとはいえ、着いて早々

「視力が足りません。本当にありがとうございました。」

ではあまりにもお粗末だ。


そのうち、広い通りに出たが、事前に送られてきた資料にあった近辺地図に載っていた店をいくつか見つけた。


マクドナルド、セブンイレブン、ゲームセンター、カワチ、そしてモスバーガー。その隣に細い道。ウインカーが点灯する。曲がる。進入する。あ、やばい。着いた。


もう、気分はもっぱら「強制収容」だった。絶望感の塊になりかけたわたしだったが、ふと目を向けると、なんと敷地内にゲームセンターがあった。

しかも、「麻雀格闘倶楽部」「クイズマジックアカデミー」などと、妙に期待感を持たせるカラフルなポップが貼られている。

僅かだが、後のお楽しみが出来た。


バスを降りた入学生達は、二階の第二教室に通された。

長机には名札と書類が置かれている。記入する箇所、ハンコを押す箇所等の説明を受け、記入中に少人数ずつ部屋の後ろで視力検査を受ける。


わたしは机の下で母にメールを打ち、書類を記入した。住民票等をカバンから取り出していると、すぐに母から返事が来た。




「入れてない!」




案の定、ハンコ忘れやがった。


エンコ(拇印)で勘弁してもらえたが、どうでもよすぎて住民票その他をすべて母にまかせっきりで、確認もせずにここに来た自分を、激しく悔いた。


資料の必要物欄の横にわざわざ

  ________

☆¦住民票

 ¦――――

☆¦保険証

 ¦――――

 ¦免許証

 ¦――――

☆¦ハンコ

 ¦――――



と☆マークを書いた跡があっても、決して母を信用してはならないと、息子の自分が分かっていずに誰が分かり得るというのか。



書類を書いた後は、部屋の鍵を渡され荷物を置きに行った。


昼を挟んで入学式になるのだが、同じ部屋の二人は簡単に挨拶を交わした後すぐに食堂に行ってしまった。

毎食分の金額も合宿料金に含まれているので食べない理由は無いのだが、昼用のおにぎりが腐るので新しい自分の寝床でモソモソと食った。


入学式は簡単な偉い人の講話と、施設や日程の説明で終わった。

どうやら、説明を日本語に直すと、今日は午後からさっそく学科が2時限、技能が2時限あり、技能の最初1時限目は、模擬運転機械を使った模擬講習ということらしい。


ありがたい話だが、正直、模擬運転は3時限は欲しかった。

どうやら技能2時限目の指導員は、念仏でも唱えておいたほうがよさそうだ。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ