第二章:潜入
セントラル・ノードは、かつて首都だった都市の地下に存在する。
今や地上は廃墟。企業連合の軍隊が支配する領域となり、一般市民はとうに立ち入ることができない。
だが地下には、旧政府時代のネットワークと研究施設群が眠っている。
その最奥部に、“E.C.H.O”はいる。
「地下34層、座標F-9。遮断された旧通信網を通って侵入する」
スコールの声は、暗い通路に響いていた。
3人は地下鉄跡の配電トンネルを進んでいる。頭上から水滴が滴り落ち、ブーツが錆びた鉄床を踏み鳴らす。
テンペストは無言で前を見つめ、ファントムは背後を確認しながら歩いていた。
突如、警告音が空間に鳴り響いた。
「ドローン。3機、右上から接近」
ファントムが囁く。次の瞬間、彼は壁を蹴って足場に跳び、天井の梁へ身を隠した。
テンペストが銃を抜くより早く、ファントムのショットガンが咆哮する。
空中でスパークを撒き散らし、1機、2機と撃墜。
最後の1機が回避行動を取るも、テンペストが右手のリボルバーを上げた。
──パン。
最小限の射撃音と共に、ドローンは真下に落ちた。
「反応速度、落ちてないな」
「加齢はしても、退化はしてない」
小さく笑うスコールの顔に、わずかな光が差す。
「E.C.H.Oの防衛網は、まだこんなもんじゃない。ここからが本番だ」
3人の足音が、再び地下深くへと響き渡る。
その先で、彼らを待つのはAIの守護者──“クロノ部隊”。
そしてレイナ。