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高校時代の友人の話②

「すみませんでした、先輩!」

 二年生の古賀は、負けた以上に圭吾への申し訳なさから号泣した。プロ入りもだけれど、大切な高校最後の夏の大会を棒に振らせることになったのだから、そりゃ責任は感じるよな。

 それに対して圭吾は、実にあっけらかんとこう述べた。

「古賀が罪悪感を抱く必要なんてない。だって捻挫だよ。その気になればプレーできたんだ。でも、俺は今後も野球を続けるつもりだし、プロだって諦めていない。そのためにクセにならないようにしっかり治療したかったからで、つまりチームよりも自分のことを優先したんだ。俺こそみんなに謝るところだよ。足は完全に治ったんだから、今回の件を引きずったりするなよ。わかった?」

「……はい」

 古賀がうなずくのをちゃんと確認してから、圭吾は続けて俺たち全員に向かってしゃべった。

「だから、みんな、欠場を選んでごめんな」

 ここであまり真摯に謝罪すると古賀をかばってる感が強くなるのをわかってだろう、そう言うと軽い調子で頭を下げた。

 俺たちの実力では甲子園はあり得ないし、代わりに三年生なので同じくラストの柳瀬という奴は試合に出られたりと、圭吾が欠場したことによるデメリットは単にチームが弱くなって試合に勝ちづらくなった程度のものでしかなかったといえる。もちろん一つでも多くトーナメントの上の段に進みたかったし、「ケガで出場できないあいつのぶんまで」という気持ちもあって、必死に頑張った。それでいて二回戦で敗退だったのだから、圭吾がいても優勝などはさすがに無理だったと改めて自覚したし、みんな後悔のような感情はないだろう。

 唯一くらいの問題が古賀の精神的なダメージで、無理して出ながら試合に負けるわ、後遺症も残るわ、という結果になるのが最も駄目だと判断して、足を治すことに専念する選択をしたに違いない。ケガを負ってネガティブな気持ちにならなかったはずはないだろうに後輩をきちんと思いやれて、やっぱりキャプテンだ何だという以前に、一人の人間としてよくできた奴だ。

 そして、圭吾の性格からして、古賀のために、今までは絶対にというほどではなかったプロ入りを目指す意志を固めたと思う。

 ただ、それは大学に進学して卒業後に叶えられるようにというプランなのか、社会人野球やクラブチーム、あるいは独立リーグでプレーするといった選択肢もあるけれど、何にしろ実現となるのは何年も先の話だと、誰もが——圭吾自身も——考えたはずだが、スターのあいつは「持ってる」ということだろうか、その道は向こうから近づいてきたのである。


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