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熱烈なファンの話③

 しかし、まさかここまでハマるとは思わなかった。

 着ないくせにユニフォームを購入したのを皮切りに、圭吾くんの写りのいい写真入りのグッズはもれなくという感じで手に入れてしまった。ポスターやカレンダーはともかく、下敷きまである。プロ野球選手の下敷きを買うって、昔クラスメイトに持っているコがいたが、小学生の男の子かよ。

 アイドルなどのそういうコレクターのことを、お金がもったいないと思っていたし、正直ちょっと馬鹿にしていたというのに……。しかも、家族には内緒だから、品物はすべて自分の収納家具に隠してある。エロ雑誌やエロDVDをバレまいと所持している、中高生の男子みてーだなー、おい。

 まあ、これも青春さ。健全、健全。若いうちの特権だし、楽しもっと。

 圭吾くーん♡。


 ベアーズとの優勝を決める試合の観戦で、私はロケッツのホームスタジアムにやってきた。

 もはや第二の自宅と言えるくらい訪れているこの球場は、ドームではないので、ちと雨による中止という事態になってしまわないかが心配だったけれど、本日の降水確率は〇パーセントで、目の前で必ず優勝チームがどこになるか決着するはずだ。よかった、よかった。

 私は独りで来たが、一緒に行ってくれる相手がいなかったのではなく、応援に集中したいから敢えてそうしたのだ。

 ずっと人気がなかったロケッツだけれども、快進撃によって、ファン、そして球場に足を運ぶ観客も、格段に増えた。加えて今日のこの一戦は、大阪などからやってきた人もいるに違いないベアーズ側の応援もすごい数で、超満員である。ベアーズのファンは熱狂的と言えるほどに熱いことでよく知られている。こちらもしっかり声援を送って、負けないようにしなくては。

 私の一番のお目当ての圭吾くんは、シーズンの後半に怒涛のごとく勝利を積み重ねたチームに乗せられた、いや、圭吾くんがチームを乗せたと表現したほうが的確だろう、ともかく、最近はヒットを打ちまくって、先日の試合では初めて打撃陣の主役格の打順である三番を任された。この調子でいけば来年には、わずか二年目、それも高校からの入団でありながら、主軸の三番と四番と五番打者のことを指す、クリーンアップの座を不動のものとし、日本ではチームナンバーワンのバッターが務める四番を担うまでになる可能性もある。

 しかし、この大事なゲーム、発表されていくスターティングメンバーで、彼が名前を呼ばれたのは七番目だった。要は、下位で、打つ期待が低いと見なされたのだと言える、七番打者だ。

 残念なのは間違いないが、監督は責められない。というのも、対戦相手のベアーズの先発ピッチャーはエースの六車で、これまで圭吾くんは、その六車からヒット一本どころかフォアボール一つさえ奪えていないのである。ゆえに、もしかしたらサードには別の人が入るんじゃないかという噂もあったのだ。スタメン落ちを免れたのだから、OKと考えよう。

 それに、七番とはいえ、負けが許されないこの試合で、しかもあの優秀な仁科監督が、起用する判断を下したのだから、打てる見込みはあるということのはず。希望を捨てずに応援するとしよう。


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