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熱烈なファンの話②

 一歳違いとはいえ、今まで年下の男にときめいたことなどなかったのだが、まず容姿がモロではないけれどもタイプだったし、男性が好きそうなガッツあふれるプレースタイルでありながら、乙女心をくすぐるさわやかさも兼ね備えているのである。

 一軍デビューからしばらくは成績が良くなかったものの、ある試合で相手の先発ピッチャーにロケッツのバッターがみんな抑え込まれ、もう負け寸前の状態から、起死回生の同点ホームランをかっ飛ばして、チームに勝利をもたらしたとき、リアルタイムで観ていた私は、その雄姿に完全に虜になった。それは、芸能人に熱を上げたりしない私にとって、初の推しを手に入れた瞬間でもあった。

 私は現在大学生で、人間関係が密な高校までは卒業したのだし、もう野球に興味ないふりを装うのはやめることにした。ユニフォームを着たりだとか、一目瞭然な格好まではしないけれど、球場に足を運ぶようにもなった。

 ただ、圭吾くんが好きになったことを打ち明けたのは、本当に仲の良い友人だけで、家族にも教えていない。身内で、付き合っているわけではないのだから、おかしくはないのかもしれないが、うちの連中は私に気を遣ったりせず、三振やエラーをした場合などに、彼の悪口を平気で言うのが目に見えているし、そうでなくても単純に自分が恋している相手を、恥ずかしくて知られたくないのである。なので、家族とスタジアムに行くことはない。

 ある日、ホーム球場に試合を観にいき、開始前に軽いトレーニングをしている圭吾くんに、内野の応援席にいた私は、手が届きそうなほど近かったため、思わずブンブンとすごい勢いで手を振った。そしたらなんと、手を振り返してくれたのだ。うそ、マジで? キャー! となった。

 一度なぜかそんなに悪い状態じゃなかったのにスタメンから外れるようになってしまったが、代打で結果を残してまたレギュラーに復帰したし、チームも序盤は元気がなく、四位や五位あたりをフラフラする、低迷した時期があったけれども、ブランク明けからようやく勝負勘を取り戻したのか、全員でたったの二安打だった試合で勝ちをもぎ取るなど、「仁科マジック」と呼ばれるようになった監督の絶妙な選手起用や作戦等の采配に、圭吾くん以外のプレイヤーたちも活気のあるプレーが見られるようになり、成績もそれに伴い良くなっていったことで、レギュラーシーズンの後半戦は負けた日が数えるくらいになった。

 そしてロケッツの順位はグングン上がって二位までいき、遥か彼方だった首位の大阪ベアーズを射程に捉えて、〇・五のゲーム差でお互いの公式戦最後の試合が直接対決となったのだ。つまり、ロケッツから見て、負けか引き分けならベアーズ、勝てばロケッツが優勝である。

 そんなドラマチックな展開だけでもドキドキワクワク楽しみでいっぱいなのに、無理だろうと踏んでいたその試合のチケットを私はゲットすることができたのだ! やっほーい!


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