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スーパースターな男  作者: 柿井優嬉


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所属チームの最年長選手の話③

「大丈夫です。俺たち、監督についていきます」

 声の主は佐々木だ。

「ええ」

 私も言った。

「その方針転換は歓迎する内容なのですから。他の方よりも、仁科さんに引き続き監督をやっていただけるほうが、優勝できる可能性は高いと思いますし、お金を払ってくださる観客に楽しいと思わせるプレーをするのは我々の務めであって、これまでのお考えも間違ってはいません。監督も遠慮することなく、この先も今まで同様、いえ、試合に勝てるようにもっと厳しくなさって構いませんので、ご指導のほどよろしくお願いいたします。なあ? みんな」

「はい!」

「監督、お願いします」

「何のわだかまりもありません」

「力を合わせて頑張りましょう。石黒さんがおっしゃった通り、まだ優勝だって十分可能なはずです。その大きな目標を幾度も成し遂げておられる、仁科さんの力が必要なんです!」

 みんな、そう続いてくれた。

 でき過ぎな展開と思うかもしれないが、遠島さんから状況報告を受け、彼女と佐々木と私で話し合い、今回の仁科さんの説明の前に選手一人ひとりと何度もやりとりをし、仁科さんの不器用さや監督という立場の尋常ではないプレッシャー、そして根は真面目な善い人であることを伝えるなどして、前向きな気持ちになるよう持っていっていたのだ。むろん全員が綺麗に納得はしなかったけれども、今後のことを考えたときにどうするのがベターなのかと対話を重ね、最初は良くないリアクションだった者たちも徐々に変化していったのだった。

 快く協力してくれた遠島さん、それに佐々木には、感謝しかない。

「ありがとう……」

 仁科さんは感極まった様子になった。こんな感情のところは、以前の監督時代から今回就任して現在に至るまでで、初めて見る。実に人間らしい、好感を持てる弱さだ。みんなもそう思っているだろう。

「必死に……いや、楽しみながらだな、きみたちがビールかけをできるように全力を尽くすよ」

 すると、少し気をしっかりさせた感じになって、続けた。

「それで、さっそく一つ、一番申し訳ない扱いをしたと言える、選手全員にいろいろなマイナスの気持ちやギクシャクも生んだであろう、杉森の今後の起用について言及しないわけにはいかないと思うので話をさせてもらうが、ここのところは結果が出るようになってきている、また、チームにずっと活力を与えている点からも、二軍に落とすという選択肢はない。しかし、勝利にこだわることを考慮すれば、レギュラーにはまだ少し力が足りないと私は判断している。なので次の試合からは、一軍の控えでいこうと思うのだけれども、みんな、そして杉森、それに対する意見などはあるかな?」

「私はありません」

 私が答えると、みんなもうなずいたりと同意する態度をとった。

 直後に、杉森が口を開いた。

「僕ももちろん異存はありません。もしこれまで通りのスタメンでいけと言われても、二軍に落とされるのであっても、監督の指示に従うまでです。優勝を目指して、監督、それに皆さん、頑張りましょう!」

 その気持ちのいい返事で、すっきり話を終えることができた。

 やはりこの杉森はちゃんと、というよりも、多大に、チームの勝利のためにやってくれる男だ。

 きっと、優勝するのに欠かせないピースとなるだろう。


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